colocal コロカル マガジンハウス Local Network Magazine

連載の一覧 記事の検索・都道府県ごとの一覧
記事のカテゴリー

news

〈空家スイーツ〉
空き家に実った果物から
レトロな“ニュータウン土産”が誕生

コロカルニュース

posted:2020.9.3   from:埼玉県  genre:食・グルメ

〈 コロカルニュース&この企画は… 〉  全国各地の時事ネタから面白情報まで。
コロカルならではの切り口でお届けする速報ニュースです。

writer profile

Yu Miyakoshi

宮越裕生

みやこし・ゆう●神奈川県出身。大学で絵を学んだ後、ギャラリーや事務の仕事をへて2011年よりライターに。アートや旅、食などについて書いています。音楽好きだけど音痴。リリカルに生きるべく精進するまいにちです。

credit

写真:林ユバ

かわいい・おいしい・地域の魅力を伝える“ニュータウン土産”

埼玉県比企郡鳩山町にある鳩山ニュータウンで
空き家の果物を使ったプロジェクトがスタートしました。
その名も〈空家スイーツ〉。
空き家で人知れず実っている果物を活用して、
“ニュータウン土産”になるお菓子をつくるというものです。

第一段はこちらの〈ロシアケーキ〉。

八朔、柚子、金柑のジャムを使用したロシアケーキ。ジャムは季節によって変わります。

八朔、柚子、金柑のジャムを使用したロシアケーキ。ジャムは季節によって変わります。

なんとも可愛らしいですね!
鳩山ニュータウンは高齢化率が埼玉県ナンバー1なのですが、
近年ではこのまちの魅力に惹かれて若い人たちが移住してきており、
新しい取り組みが始まっているようです。
コロカルでも今年の4月に建築家、藤村龍至さんが手がけた
シェアハウス〈はとやまハウス〉をご紹介しました。

空家スイーツを手がけた生活芸術家/アーティスト菅沼朋香さんと
焼き菓子作家の山本蓮理さんも、鳩山ニュータウンに惹かれた若手のひとり。

生活芸術家/アーティストの菅沼朋香さん

生活芸術家/アーティストの菅沼朋香さん

焼き菓子作家の山本蓮理さん

焼き菓子作家の山本蓮理さん

菅沼さんは2017年より移住。鳩山町の町おこし拠点である〈鳩山町コミュニティマルシェ〉に
コーディネーターとして携わりながら、アートプロジェクトであり
実際に飲食店として営業している〈ニュー喫茶幻〉を運営しています。

元空家の1室をセルフリノベーション(!)した〈ニュー喫茶幻〉。2019年2月にオープンし、地域の方の憩いの場に。500円でコーヒー、トースト、ゆで卵がつくモーニングセットなどが人気です。

元空家の1室をセルフリノベーション(!)した〈ニュー喫茶幻〉。2019年2月にオープンし、地域の方の憩いの場に。500円でコーヒー、トースト、ゆで卵がつくモーニングセットなどが人気です。

一方山本さんは2017年〜2019年まで鳩山町コミュニティマルシェを務めていました。
現在は焼き菓子作家として活動しています。

プロジェクトのきっかけは、菅沼さんが道端に空き家の柿が落ちているのを見つけたこと。
それから空家スイーツを構想し、山本さんに相談を持ちかけたところから
このプロジェクトがスタートしました。

2020年2月には、ニュー喫茶幻の常連さんが地域の方に呼びかけ、
庭に実っている柑橘類を使わせてもらえることに。
柚子や金柑、八朔を大量に収穫することができ、まずは柚子のクッキーを試作。
できあがったクッキーは、柚子の香りが高く、
菅沼さんもびっくりするほどのおいしさだったそうです。

それから山本さんは試作を重ね、菅沼さんはパッケージを制作。
資金はクラウドファウンディングで募り、
9月1日、いよいよ一般発売されました。
商品はオンラインショップと鳩山町コミュニティ・マルシェでのみ販売。
9月5日はマルシェにて発売記念イベントも予定されています。(オンライン配信も予定)

次のページ
“昔あった大切なこと”が地域のパワーに

Page 2

生活芸術家でアーティストの菅沼朋香さんと菅沼が運営する飲食店〈ニュー喫茶幻〉

菅沼さんが作品づくりを始めたきっかけは、就職して現代の社会に疲れ、
昭和の高度経済成長期への関心に目覚めたことだったのだそう。
以来「“今は忘れられてしまっているけど、昔あった大切なこと”を現代に取り入れて、
もっと豊かな世の中をつくりたい」という思いから、活動を続けています。

当時勤めていた会社を辞め、東京藝術大学大学院に進んだ菅沼さんに
鳩山ニュータウンのことを教えてくれたのは、藤村龍至さん。
同院の修了制作展で鳩山町への移住を薦められ、
高度経済成長期が生み出したニュータウンと向き合い、
作品化してみようと移住を決意したそうです。

ロシアケーキ

ニュー喫茶幻は、新型コロナウイルスの影響を受けて
3月から営業を見合わせていましたが、7月からようやく営業を再開。
毎週火曜日朝8時半〜11時のみ、モーニング営業を行っています。

以前と同じような働き方や大きなイベントは今もなお難しい状況ですが、
こんな時にこそ、新しくて楽しいものをつくるということが、
地域の人たちに元気をもたらしてくれるのかもしれません。

80年代のポップな雰囲気が漂うパッケージ。包装紙のイラストは、saito neondesignさんによるもの。

80年代のポップな雰囲気が漂うパッケージ。包装紙のイラストは、saito neondesignさんによるもの。

〈空家スイーツ〉の一般発売にあたり、
菅沼さんは次のようにコメントを寄せています。

「2年以上前に着想した空家スイーツが、いよいよ商品化します。
鳩山町コミュニティ・マルシェの創成期に
山本蓮理さんと一緒に関わらせていただいたあの頃から、
私たちを取り巻く環境は大きく変化しました。
鳩山町コミュニティ・マルシェやニュー喫茶幻で出会った方々のお力添えにより、
少しずつプロジェクトを進行させる道筋が見つかり、ついに形になろうとしています。
空家スイーツは、今日、本当のスタートラインに立ちました。
これからも“庭のある生活の豊かさ”を伝えるというコンセプトのもと、精進していきます。
世界初のニュータウン土産を、もっと広く愛される商品に!ご期待ください!!」

information

map

空家スイーツ

企画・パッケージ制作:菅沼朋香

菓子制作:山本蓮理

製造地:埼玉県比企郡鳩山町

Web:http://akiyasweets.com

ニュー喫茶 幻 Twitter:https://twitter.com/new_maboroshi

焼き菓子作家の山本蓮理さん Twitter:https://twitter.com/renlie

Feature  特集記事&おすすめ記事

Tags  この記事のタグ