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posted:2020.4.28 from:埼玉県比企郡鳩山町 genre:暮らしと移住
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writer profile
Yu Miyakoshi
宮越裕生
みやこし・ゆう●神奈川県出身。大学で絵を学んだ後、ギャラリーや事務の仕事をへて2011年よりライターに。アートや旅、食などについて書いています。音楽好きだけど音痴。リリカルに生きるべく精進するまいにちです。
かつて、若い家族で賑わったニュータウン。
いま、全国のニュータウンで少子高齢化、空き家の増加が問題になっています。
埼玉県比企郡鳩山町にある鳩山ニュータウンも、
そうした問題を抱えるまちのひとつ。
高齢化率は50%以上にのぼるといいます。
今このまちで、空き家を新しい価値を持つ場所へ
改修する新しいプロジェクトが始まっています。
プロジェクトの核となるのは、学生向けのシェアハウス〈はとやまハウス。〉
現在こちらでは入居者を募っているのですが、その賃料が何ともユニーク。
今ならまちの公共施設〈鳩山町コミュニティマルシェ〉で
月32時間働けば、賃料が無料になるというのです。
こうしたシステムは若い人を呼び込み、
まちの問題に主体的に関わってもらうことにもつながります。
設計を手がけたのは、建築家の藤村龍至さんが主宰する建築設計事務所〈RFA〉。
同町から空き家活用の委託事業を請け負い、
設計後も管理者として近隣大学の学生や
地域住民の協力を得ながら運営に携わっています。
現在住んでいるのは、近隣の大学に通う留学生や、
建築を学ぶ学生さん、全部で3名。
うちひとりは、新型コロナウイルスの感染拡大にともない、
あえなく留学を中断し、鳩山への“郊外留学”を決意したのだそう。
3人はこちらに住み始めてから、鳩山町コミュニティ・マルシェの
仕事を通じてまちづくりに携わるほか、
交流会や農作業の手伝いなど、地域の方とさまざまな形で交流しています。
鳩山町には、彼らのほかにもニュータウンでの暮らしに
価値を見いだし、移り住んできた人たちがいます。
空き家を活用し〈ニュー喫茶 幻〉という店を営んでいるのは、
アーティストの菅沼朋香さん。
現在、コミュニティ・マルシェのスタッフとしても活動しています。
こちらはモーニング営業中の様子ですが、地元の人で大賑わい。
はとやまハウスのメンバーもしばしば訪れ、
常連さんと話に花を咲かせているようです。
※〈ニュー喫茶 幻〉の写真は、2020年2月〜3月初旬にかけて撮影されたものです。現在は臨時休業中。オンライン配信等を行なっています。詳しくはこちらから。
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はとやまハウスの設計についても、ご紹介しましょう。
設計チームは構造家・木下洋介さんのアドバイスをもとに
一部の構造を補強した上で内部の壁、階段、キッチンなどを移設。
また、階段は1階のダイニングとリビングを仕切る位置に設けられ、
2階からの光を導くように。明るく風通しのいい空間が誕生しました。
プランニングのポイントは、公私が連続する共有部を設けたこと。
1階の共用部には大きなダイニングテーブルやカウンターなどといった、
個々の活動にも共同作業にも利用できる場所をつくり、
自由に過ごせるようになっています。
滞在した方によると、共有部の居心地がよく、自然と集ってしまうのだとか。
こちらは、施工前のキッチン。
そしてこちらが、施工後。
何ともシンプルで素敵に生まれ変わりましたね!
左側のキッチンからリビングをつなぐ壁には、
カウンターが取り付けられています。
人数分のコンセントと椅子がついており、
勉強机としてはもちろん、ダイニングで料理や語学教室を
行う際は食材やモニターを置くこともできます。
もうひとつのポイントは「地域に開きながら閉じる」建物であること。
周辺の住民への透明性を保ちながら、
日常生活を守る工夫が随所に施されています。
階段はキッチンダイニングとリビングの間を柔らかく遮るとともに、
中央に移されたことで、どの個室からも
共有部へのアクセスが容易になりました。
また、外部から視線が通る部分と閉じる部分を整理し、
地域の人へ閉じない場づくりを行っています。
はとやまハウスは、ニュータウンの新しい未来を見せてくれると評価され、
2019年度のグッドデザイン賞ベスト100を受賞しました。
現在募集している入居者は、1名。
ニュータウンへの移住やまちづくりに興味がある方は、
検討してみてはいかがでしょうか?
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