石巻2.0
ここ、石巻で継続的な活動をするということ。
2012年7月21日〜8月1日、石巻の中央地区において、
イベント「STAND UP WEEK」(以下SUW)が開催された。
SUWは石巻のまちづくりプロジェクトチーム「石巻2.0」が、
伝統的なお祭りである川開きまでの10日間の期間に企画したイベントで、
今回は昨年に引き続き2回目の開催となる。
野外映画上映会、まちづくりシンポジウムに加え、
まちコンやITビジネスコンテストなどが催された。
私が石巻を訪ねるのは、ちょうど1年ぶり。
ガレキも整理され、落ち着きを取り戻しつつあるまち並みと同様に、
彼らの活動にも少し落ち着きが見えたように思えた。
それは、石巻2.0の活動が継続的なものになりつつある証拠でもある。
インフォメーションセンター「IRORI」、宿泊施設「復興民泊」など、
1年前には存在しなかった施設をみるだけでも、
この1年の活動の充実度をうかがい知ることができる。
そんな、石巻2.0の活動の中でも目立つのが、
震災をきっかけに石巻を訪れることになったメンバーたちの活躍だ。
いわば「よそ者組」とも言える彼らが、どうしてこの地にたどり着き、
継続的な活動を続けているのだろうか。

東京工業大学・真野研究室の渡邊享子さんは、そんな「よそ者組」のひとりだ。
「ここに来たのは大学の研究室の一員としての活動がきっかけで、
それまで石巻とは全く縁がありませんでした。
昨年は修士論文を書きながらの参加だったので、行ったり来たりだったんですけど、
今は博士課程なので時間には余裕があります。
会いたい人に会う感覚で毎週通っているうちに、
今では月のほとんどを石巻で過ごすようになりました」
今年のSUWでは渡邊さん自らが企画した「ゆかたdeまちコン」も開催され、
この1年でプレイヤーとして成長できた自覚がある、と渡邊さんは語る。
「ここにはさまざまな才能を持った人が集まるので、いい刺激にもなっているし、はやく彼らと同じくらい貢献できるようになりたいと思っています」

渡邊さんら学生たち数人をを率いて石巻を訪れ、今回のSUWではまちづくりシンポジウムに登壇した東京工業大学の真野洋介准教授は言う。
「被災地での活動は、阪神淡路大震災の時にも経験があったから、
僕らにとっては当然のことで、特別なことをやっている感覚はなかったです。
ただ、もしこの活動が自分たちの中だけで完結していたら、
こんなに強烈な色を持った活動には発展しなかったと思います。
自らの活動に本気で向き合っている者同士が出会うことで、
予想を超える力を持った活動ができているのだと思います。
逆に言えば、自分の仕事に向き合えなければ、被災地に行っただけ、
見ただけで終わってしまうということでもあるんですが」

石巻2.0発行のフリーペーパー「VOICE」の編集長である飯田昭雄さんも、
震災をきっかけに石巻を訪れた。
「震災直後から、支援物資を持って行くような活動をしているうちに
石巻の人々の熱い想いに触れる機会があり、そこで感電状態になってしまったんです。
東京に住む八戸出身の東北人として、なにか力になりたいと思いました。
この冊子ができたのもさまざまな人との出会いが重なった結果だし、
とにかく奇跡のようなタイミングで新たな出会いが続いて、流れが止まらない。
僕たちはこれを石巻ミラクルと呼んでいます(笑)」
彼らからは、被災地のために身を削って力を貸すというような、
ボランティア精神は感じられない。
むしろ、自らの能力を存分に生かすことができる環境に身を置くことを
楽しんでいるように見える。
渡邊さんは言う。
「私は石巻に住んでいたわけでも、震災で傷負ったわけでもないから、結局はよそ者です。
石巻のために頑張ると言うのはおこがましいと感じるし、
むしろ自分はこの環境に助けてもらった側だと思います。
東京では、早く就職を決めなきゃ、
安定した人と結婚しなきゃというようなことを気にしながらモヤモヤしていたけど、
ここでは自分のやりたいことが必要とされていて、それを躊躇する必要もない。
自分の場合は、そういう環境をたまたま石巻で見つけたというだけで、
被災地に限らず、人それぞれにそういう土地がどこかにあるんだと感じています」

石巻2.0の本拠地「IRORI」は、無線LAN・電源が使い放題。

渡辺さんが取り仕切ったまちコンも人気。

野外上映会には多くの親子がつめかけた。