colocal コロカル マガジンハウス Local Network Magazine

連載の一覧 記事の検索・都道府県ごとの一覧
記事のカテゴリー

連載

港区芝 Part1
一生懸命になりすぎない、場づくりの方法。

山崎亮 ローカルデザイン・スタディ
vol.048

posted:2013.1.11  from:東京都港区芝  genre:活性化と創生

〈 この連載・企画は… 〉  コミュニティデザイナー・山崎亮が地方の暮らしを豊かにする「場」と「ひと」を訪ね、
ローカルデザインのリアルを考えます。

writer's profile

Maki Takahashi
高橋マキ

たかはし・まき●京都在住。書店に並ぶあらゆる雑誌で京都特集記事の執筆、時にコーディネイトやスタイリングを担当。古い町家でむかしながらの日本および京都の暮らしを実践しつつ、「まちを編集する」という観点から、まちとひとをゆるやかに安心につなぐことをライフワークにしている。NPO法人京都カラスマ大学学長。著書に『ミソジの京都』『読んで歩く「とっておき」京都』。
http://makitakahashi.seesaa.net/

credit

撮影:川瀬一絵(ゆかい)

東京都港区芝。東京タワーのすぐそば、大都市の真ん中に、地域コミュニティの拠点
「芝の家」はあります。山崎さんが訪れたのは、大学の講師でありながら、
このプロジェクトのコーディネイターを務める坂倉杏介さん。
今回は、都市ならではのコミュニティ形成の方法、そして東京というローカルに注目します。

だれがなにをしてもいい、のびやかな場「芝の家」

山崎

こんにちは! 以前はじめてうかがったときと、
ずいぶん雰囲気が変わった気がしますね。

坂倉

あれは始まってすぐでしたからね。
おそらく約2年の間に場がなじんできたのと、近所の方が棚とかキーボードとか、
自分の作品とかをいろいろと持ってきてくださるので
やっぱりモノが増えてますね(笑)。

山崎

昼間はだいたいこんなふうに賑やかなんですか?

坂倉

はい、だいたいいつもの光景という感じです。
いまはたまたま居合わせたひとがお昼を一緒に食べていますね。
顔ぶれは、ご近所の方とスタッフが半々ぐらい。
今日は火曜なので本来は割とおとながゆっくり話せる日なんですが、
学校が冬休みに入っているのでこどもたちもやってきています。

山崎

お、なるほど。
月・火・木曜が「コミュニティ喫茶」、水・金・土曜が「駄菓子と昔あそび」と
表の看板に書いてあるのは、おとながゆっくり話せる日と、
こどもが存分に遊べる日を「なんとなく」位置づけるためですね。

坂倉

そうですね、なんとなく(笑)。
来ているひとは、年齢も0歳から90歳までと幅広く、
割合は多くないですが大学生も。
試験前逃亡しにやって来る中校生たちも、たまにいます(笑)。

山崎

いいですね。基本的には「だれがなにをしてもいい」、しかも無料。
そんな場所ってほかにないですもんね。
スタッフサイドには、どんな方がいらっしゃるんですか?

坂倉

大学生もいますが、こちらも20代から70代までと多様で、
ご近所の方が多いですが、遠方からわざわざ通ってくださる方もいます。
1日3人の当番制で運営しています。

山崎

大学生は、坂倉さんのゼミ生とか?

坂倉

いや、ぼくはゼミをもっているわけじゃないので、
校内にポスターを貼るような地道な募集で集めています。
いろいろやってみたのですが、ゼミやサークル単位より、
個人でやってくる子のほうが「そのひとらしさ」が出ていいかなあと。

山崎

そうですね。「想いがちゃんとある」というのは大切かもしれない。

芝の家は月・火・木が「コミュニティ喫茶」、水・金・土は「駄菓子と昔あそび」と、なんとなく分かれているが、誰でも気軽に立ち寄ることができる。

この日も赤ちゃんからお年寄りまで、さまざまな人が。

ただ、見守るだけという関わり方について。

山崎

坂倉さんは、大学の講師をやりながら、
事業としてこの「芝の家」運営されているわけですよね。

坂倉

そうなります。港区から大学への委託研究として2008年にスタートしていますが、
細かくいうと、研究自体は2011年度で終わっていますので、
いまの「芝の家」は、大学を通さず、LLP(*1)で委託事業として受けています。
なので、今年度から運営は実質的に現場のスタッフに任せています。

山崎

どういう事業なんですか? 居場所づくり?

坂倉

港区の場合、少し特殊だと思うんですけれど、区内5つの地域ごとに、
それぞれの特性にあわせた地域事業をやるということになっています。
従来の、単なる高齢者の居場所づくり支援だけじゃない、
ゆるやかさがありますね。

山崎

それを受託するのにLLPが生まれたと?

坂倉

いえ、LLPは、その直前にたまたま立ち上げていたものです。
話がさかのぼりますが、当時は「三田の家」(*2)
というプロジェクトをやっていて、これはひとり1万円のメンバーシップを募って
個人の財布で運営していたんですが、年間200万円程度といえども、
個人の財布で管理するのはなかなか大変だということで、
いちばん簡単な組織を作ろうと。

山崎

プロジェクト特化型ですね。

坂倉

それが先にあったので、「芝の家」もLLPで請け負うというカタチになりました。
賃貸費、常勤の専従スタッフの給料を含めて、年間950万円で受託しています。

山崎

なるほど。

坂倉

先日、講演会でお会いしたときに、山崎さんから
「ただ見てるだけのしごとっていいですね」って言われちゃいましたけども(笑)。

山崎

言った、言った(笑)。いやぁ、ぼくらががんばりすぎてたなあ、って。
ぼくらはふだん、コミュニティをつくるために一生懸命やって、
それを見て一生懸命やってみようというひとたちと「なにかを始める」。
だから、先にぽっかりとこういう「場」があって、
それぞれにいろんな想いでこの場所に集うひとたちから
自然発生的に「なにかが始まる」、
坂倉さんたちは、役割としてただそれを見守っているだけ、
というあり方は、ほんとうに目から鱗なんですよね。

坂倉

なるほど。

山崎

すごいなあって思う一方で、なんといってもこれは行政の事業ですから、
区議会に企画を通すのがまずはなかなか大変だろうなあと、
そんなことまで考えてしまいました(笑)。

坂倉

その通りですね。わかりやすさを求められますから、
そのために、来場者数などを細かく数字化して出していく努力はしました。
ただ、実際に現場を訪れると、ひと目で見てわかる賑わいの実態がありますから、
それを行政の担当者と共有することが信頼につながっていった、
という感じだったように思います。

(……to be continued!)

*1 LLP:Limited Liability Partnershipの略。事業組織の形態のひとつで、個人または法人が共同で出資し、事業を営むために設立する。出資者は出資額の範囲までしか責任を負わず、自ら経営を行うことができる。

*2 三田の家:民家を改装した大学のかたわらにある自主運営の<教室>。教員と学生有志によって、2006年から運営している。http://mita.inter-c.org/

小さなお子さん連れのお母さんも。地域のこどもたちが一緒に遊ぶのを、地域のおとなたちが見守る。

みんなで芝公園で遊ぼうという「しばこうえんあそび隊!」の張り紙。こどもからおとなまで誰でも参加できる。

information

map

芝の家

住所  東京都港区芝3-26-10    TEL  03-3453-0474
コミュニティ喫茶「月火木」 月・火・木曜 11:00 ~ 16:00
駄菓子と昔あそびのオープンスペース 水・金・土曜 13:00 〜 18:00
日・祝定休    http://www.shibanoie.net/about/

profile

KYOSUKE SAKAKURA
坂倉杏介

慶應義塾大学グローバルセキュリティ研究所特任講師、三田の家LLP代表、NPO法人エイブル・アート・ジャパン理事。2003年、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程修了。地域コミュニティの形成過程やワークショップの体験デザインを、個人とコミュニティの成長における「場」の働きに注目して研究。キャンパス外の新たな学び場「三田の家」、地域コミュニティの拠点「芝の家」の運営を軸に、「横浜トリエンナーレ2005」、「Ars Electronica 2011」など美術展への参加、大学内外での教育活動を通じて、自己や他者への感受性・関係性をひらく場づくりを実践中。
共著に『黒板とワイン―もう一つの学び場「三田の家」』、『メディア・リテラシー入門―視覚表現のためのレッスン』(慶應義塾大学出版会)、『いきるためのメディア―知覚・環境・社会の改編に向けて』(春秋社)など。http://kyosuke.inter-c.org/

profile

RYO YAMAZAKI
山崎 亮

1973年愛知県生まれ。大阪府立大学大学院地域生態工学専攻修了後、SEN環境計画室勤務を経て2005年〈studio-L〉設立。地域の課題を地域の住民が解決するためのコミュニティデザインに携わる。まちづくりワークショップ、住民参加型の総合計画づくり、建築やランドスケープのデザイン、パークマネジメントなど。〈ホヅプロ工房〉でSDレビュー、〈マルヤガーデンズ〉でグッドデザイン賞受賞。著書に『コミュニティデザイン』(学芸出版社)、共著に『まちの幸福論』(NHK出版)、『コミュニティデザインの仕事』(株式会社ブックエンド)、『幸せに向かうデザイン』(日経BP社)、編著に『つくること、つくらないこと』(学芸出版社)などがある。

Feature  注目情報&特集記事「日本のクリエイティブ」

Tags  この記事のタグ

Recommend