大崎上島 Part1 東京に暮らしている理由がなくなった。
山崎亮 ローカルデザインスタディ
大崎上島編・目次
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山崎さんがワークショップのために何度か足を運んでいる瀬戸内海の大崎上島。
人口約8,300人のこの島に、築80年の古民家を購入してIターン移住した女性がいます。
カフェ&ショップを営みながら、自分らしく生活をアレンジして
島の暮らしをたのしむ森ルイさんに、そのいきさつや今の暮らしぶりをうかがいます。
32歳。人生の転機が一度に同時にやってきた。
山崎
お待たせしてすみません!
森
いえ、とんでもない。
山崎さんが講師をされている「カッコいい過ごし方」図鑑のプロジェクト、
順調そうですね。
山崎
島の外の人が憧れるような大崎上島の「カッコいい過ごし方」を
カタログ的な図鑑にまとめています。
3月に発表の予定だから、これからが正念場ですね。
講演会で初めて島に訪れたときに立ち寄ったのがこのカフェだから、
なんだか感慨深いです。
森
あれはオープン直後だから、1年半前になりますね。
山崎
そもそも、森さんとこの島とはどういうご縁があったんですか。
森
東京から瀬戸内ってずいぶん遠いし、まったく未知のエリアだったのですが、
たまたま友人のパン職人が6年前ぐらいにこちらに移住していて、
年1回ペースで遊びに来ていたんです。
ストレスの多いしごとだったので、疲れを癒しに(笑)。
山崎
当時はどういうしごとを?
森
警視庁勤務で、白バイに乗ってました。
山崎
おお!(笑)
森
短大卒のハタチから働いて、29歳で結婚するのですが、
そのときに結婚式をセルフプランニングしたのがおもしろくて、
ブライダルコーディネイターのしごとに興味をもちはじめていたんです。
こういうしごとも向いてるかもしれないなあ、なんて。ところがですよ……。
山崎
……ところが?
森
いよいよこの年度末で退職、ということが決まった矢先に、
離婚することになりまして。
山崎
ええっ!
森
退職して離婚したら、東京にいる理由がなくなっちゃって。
山崎
そうかぁ。
森
都心で新しいしごともまだ見つかってないのに
高い家賃を払い続けるのも考えものだし、
かといって、実家に出戻りみたいなのも面倒でしょう(笑)。
ちょうどいい機会だから、生き方を変えてみようかなって。
山崎
語学が堪能だったら、海外という選択肢もあった?
森
そうですね。でも、そのとき32歳になってしまっていたから、
ワーキングホリデー制度も使えなくて。
留学しても、結局は戻って来なければいけないし、
やっぱり日本に拠点は必要だなと決断したんです。

山崎さんが現在この島を訪れているのは、「探られる島」の大崎上島版ともいえる、大崎上島の「カッコイイ過ごし方」図鑑制作のため。ワークショップを行ったstudio-Lのメンバーと、参加者たちがワイワイたのしげに打ち上げる中での対談となった。

森さんが暮らす大崎上島の古い家の屋根瓦。随所にこだわりが見られるこの家を建てた方は、どうやら地元の船長さんだったとか。

自宅を「ルイの家」と名付け、WWOOF(ウーフ)ジャパンホストとして世界中の人々と島暮らしをシェアしている。これも彼女らしいオリジナルな生活スタイル。
きっかけは、たまたま見つけた一軒家。
山崎
そのとき、貯金がいくらぐらいあったのか、教えてもらえますか?
森
社会人になってからわりと計画性をもって貯めていた貯金が少しと、
退職金が300万。プラスαで財形貯蓄とか
そういうので100万ちょっと、ぐらいでしょうか。
山崎
32歳でそれだけあったというのは、エライですね。
森
短大を卒業してから、将来に向けてある程度貯蓄を心がけていましたから、
スグに飢え死にはしない程度には考えてありました。
山崎
でも、無職なうえにそれが毎月家賃で消えていくと想定したら、
やっぱり心もとない金額なのか。
森
ええ。都心だと家賃だけで7〜8万はかかるでしょう。
1年で100万。300万だと、賃貸マンション3年分。
でも、もしかして大崎上島だと300万円あれば一軒家が買えるんじゃないの?
って思いついたんです。
山崎
なるほど!
森
それでさっそくネット検索してみたら、
理想的な一軒家がひょっこりと出てきたんですよ。
山崎
この小さな島の物件情報がWebサイトにあがってたんですか?
森
そうなんですよ。住所は広島県なので、県の空き家バンクに登録されていたんです。
1軒しか出てこなかったんですけどね(笑)。
1枚だけ載ってた玄関の写真だけを見て、「ここだ!」って。
山崎
それはすごい出会いのような気がします。
森
すぐに友人に内覧してもらって、
大きな改修をしなくてもそのまま住める状態だとわかりました。
しかも価格が350万円。ほぼ即決でしたね。
山崎
ちょうど退職金分にして、東京の家賃約3年分。
そう考えると、かなりかしこい買い物になるわけですね。
(……to be continued!)

島というより、まるでこの家に導かれるようにして人生の舵を大きく切ることになった森さん。

Webに掲載されていたたった一枚の写真でこの家に惹かれた理由のひとつは、サッシでなく、趣のある木製の建具もそのまま残されていたから。この窓はなんと回転式。訪れる建築系の知人たちにとっても、とても興味深いものらしい。

「ルイの家」2階。窓から燦々と陽がさしこむ、とても気持ちのよい空間。内装や庭の手入れなどこまごまと必要なことは、ウーファー(宿泊者)の中で得意なひとが得意な分野を少しずつ手伝ってくれる。
information
antenna
住所:広島県豊田郡大崎上島町中野1841-12
TEL:090-2906-0930
営業時間:13:00~19:00
営業日:木曜~日曜と祝日のみ営業
profile

LOUIS MORI
森 ルイ
1978年東京生まれ。警視庁警察官として女性白バイ隊員やロシア語通訳などの勤務を経た後、2010年ブライダルコーディネーターへの転職を目指し退職。その後の離婚を機に瀬戸内海の大崎上島に築80年の古民家を購入してIターン移住。カフェ&ショップ『antenna』オーナー、クラシックバレエ教室主宰。WWOOF(ウーフ)ジャパンホストとして世界中の人々と島暮らしをシェア。自称・大崎上島観光親善大使。
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RYO YAMAZAKI
山崎 亮
1973年愛知県生まれ。大阪府立大学大学院地域生態工学専攻修了後、SEN環境計画室勤務を経て2005年〈studio-L〉設立。地域の課題を地域の住民が解決するためのコミュニティデザインに携わる。まちづくりワークショップ、住民参加型の総合計画づくり、建築やランドスケープのデザイン、パークマネジメントなど。〈ホヅプロ工房〉でSDレビュー、〈マルヤガーデンズ〉でグッドデザイン賞受賞。著書に『コミュニティデザイン』。
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http://makitakahashi.seesaa.net/
