自社の森の木材でリノベーションする
盛岡の〈三田農林〉と、
築115年の古民家を住み継ぐ〈リタ〉
温めることが人生を変えてくれた
天然素材の洋服のセレクトショップとして2010年にオープンした〈kasi-friendly〉。
古着の輸入販売店で働いていた経験から当初は洋服のみを販売していたが、
「お洋服だけを伝えるということに何かモヤモヤしていた」という久美さん。
『冷えとりガールのスタイルブック』(服部みれい著、主婦と生活社)と出合い、
身に着ける素材を選ぶことや、服の着方を変えることが、健康・養生につながると知る。

「洋服を通じて伝えたいことはこれだったんだ!」とぶれない軸ができ、
2014年には人生を変えてくれた「温める」を意味する「カレント」を屋号に法人化。
冷えとりにつながる食品の販売や、頭寒足熱に適した洋服の受注会なども開催し、
10年という歳月をかけて盛岡で愛される店に育って来た。

「温める」と意識をするだけで、体調も良くなり、メンタルも前向きになったと話す久美さん。周りの環境も豊かになっていったという。
〈リタ〉も、「温める」という軸は変わらないが、
より「食とからだ」に焦点を当てたものを紹介し、
「五感を育てる」ことも養生につながると、香りやアートに関わる企画展も行う。
そのどれもが、これまでに出合った信頼できるつくり手のものであり、
「利他」を意識したものだ。
店名の〈リタ〉は「利他」に由来し、
仏教用語で「他にこころを向けていくこと」を意味する。
コロナ禍でも注目されるようになった言葉だが、
久美さんは仏教を学んでいた母に幼い頃からその教えを受けて来た。

店頭では白砂糖を使っていないものや発酵食、服部みれいさんが運営する『マーマーな農家』で紹介する自然農法でつくられた商品などを紹介している。写真中央と右は秋田県で活動する〈種と実〉の「鉄火味噌」と「粒マスタード」。
「自分たちの利だけを求めるのではありません。作家さんにも、集ってくれるお客様にも、
利益の利だけではなくて、ご縁も含めた利があるようにと思っています。
そのときに大切なのは、ほかの人のことだけではなくて、
やはり軸は自分自身にあるということ。自分たちの生活を楽しむことが大前提です」
暮らしから溢れ出るものを大切にするふたり。
イベントなども行う日本間の引き戸を開けば住居があり、
暮らしと商いがつながっていることの大切さを体現している。

大介さんと久美さんが以前から使っていたという家具や道具もすんなりと空間に馴染んでいる。
「昔の商店とまちの距離感はそうでしたよね。
自分たちがこの場所で毎日気持ちよく過ごして、
溢れ出るものをみなさんにお裾分けできたらと思っています」と大介さん。
「関係人口も増やしたい」と、
敷地外の掃除などを通じて、地域の方との交流を深めている。
「掃除をしていると、おじいちゃんやおばあちゃんが、
ありがとうね、と声をかけてくれます。
そういう会話が生まれると、安心すると思うんですよね。
何かあったときに大丈夫ですかと声をかけることもできる。
当たり前にあった昔の原風景に戻していきたいと思っているんです」

「庭のハーブや畑の野菜をお裾分けするような交流も増やしていきたい」と話す久美さんと大介さん。