温泉の滝に、地獄の景色まで!
地熱のまち湯沢の小安峡温泉と
川原毛地獄・川原毛大湯滝

秋田県の最南に位置する湯沢市。
山形県と宮城県に接し、その県境は国内でも有数の地熱地帯です。
湯沢市の大地をつくりあげたマグマは、いまも「見えない火山」として活動を続け、
観光や産業に生かされています。

湯沢市には、「地熱」という自然エネルギーの恩恵を受けながら、
アツく、力強く、たくましく生きる「自熱」を持った地元の人々がいる——。
新しいことがモクモク起きているこのまちの、新しいワクワクを紹介していきます。

温泉郷に恵まれた「いで湯の里」

「いで湯の里」と呼ばれる湯沢市は、その名のとおり小安峡温泉、
秋の宮温泉郷、泥湯温泉など、県内でも有数の温泉に恵まれた土地。
一帯に湯を湧き上がらせる地熱の力は、地層から水蒸気や湯が吹き出す
全国でも珍しい「大噴湯(だいふんとう)」や、
日本三大霊地と呼ばれる「川原毛地獄(かわらげじごく)」などで体感することができ、
「日本ジオパーク」としても認定されています。

ジオパークを軸に、観光客に大地の魅力を伝えるだけでなく、
地域の子どもたちへの教育にも熱心な湯沢市。
その見どころを、〈ゆざわジオパークガイドの会〉のジオガイド
渡部彰夫さんと菅英夫さんに案内していただきました。

2013年に湯沢市の第1期ジオガイドとして認定されて以来、案内を続ける渡部彰夫さん(右)と菅英夫さん(左)。

2013年に湯沢市の第1期ジオガイドとして認定されて以来、案内を続ける渡部彰夫さん(右)と菅英夫さん(左)。

地熱と豪雪がもたらす全国でも珍しい景観

湯沢駅から車で約40分、小安峡温泉エリアにある「小安峡」は、
深さ60メートルの渓谷です。断層を皆瀬川が削りとり、
岩の割れ目から約98度の温泉と水蒸気が吹き出しています。

「湯沢では見えない火山がまだ活動しているんです。
1分間にドラム缶1本くらいの温泉がどっこんどっこんと湧いているんですよ」
と渡部さん。

約60メートル上の河原湯橋からも肉眼で見えるほど力強く蒸気や温泉が噴き出ています。

約60メートル上の河原湯橋からも肉眼で見えるほど力強く蒸気や温泉が噴き出ています。

この湯が吹き出しているところは「大噴湯」と呼ばれ、約300〜400段の階段を下ると、
遊歩道を散策しながら蒸気のトンネルをくぐることができます。

近づいて見ると、岩の割れ目から湯が吹き出しているのがわかります。すごい迫力!

近づいて見ると、岩の割れ目から湯が吹き出しているのがわかります。すごい迫力!

高温の蒸気や熱水が溜まる「地熱貯留層」の亀裂が露出しているのは全国でも珍しく、
有害なガスも含まれていないため、
大地のエネルギーを間近に感じることができるのも特徴です。

川を流れているのは温泉。小安峡温泉エリアは、一帯に「マグマ溜まり」があるため、どこを掘っても温泉が湧いてくるんだそう。

川を流れているのは温泉。小安峡温泉エリアは、一帯に「マグマ溜まり」があるため、どこを掘っても温泉が湧いてくるんだそう。

こうした景色が見られるのは、地層に加えて、
湯沢が豪雪地帯であり(2021年1月4日現在、積雪は150センチ超え!)、
雪解け水に恵まれていることにも起因しています。
冬、日本海を流れる対馬海流の影響を受けて流れ込んでくる水蒸気を含んだ空気が、
岩手県境の奥羽山脈にぶつかることで、湯沢には大量の雪が降るのです。

「滝、温泉、酒、米、稲庭うどん……湯沢を代表する産業には
全部おいしい水が必要です。いろんな業種が雪の恩恵を受けている、
湯沢は豪雪のおかげで成り立っているとも言えます」と渡部さん。

熱心に解説してくれる渡部さんは湯沢市出身。営業職を経てジオガイドに。「父が石屋だった。自分の地域のことは当たり前で興味もなく過ごしてきたんだけども、ガイドをするようになって、湯沢ならではの仕事だと気づかされました」

熱心に解説してくれる渡部さんは湯沢市出身。営業職を経てジオガイドに。「父が石屋だった。自分の地域のことは当たり前で興味もなく過ごしてきたんだけども、ガイドをするようになって、湯沢ならではの仕事だと気づかされました」

紅葉に加えて、新緑も雪景色も美しい小安峡には、日帰り入浴を楽しめる宿や、
四季折々の景色を楽しめる露天風呂を備えた宿もあり、滞在におすすめです。

小安峡は紅葉の名所。訪れた11月中旬は雪との共演も見ることができました。

小安峡は紅葉の名所。訪れた11月中旬は雪との共演も見ることができました。

三途川を通って地獄へ!?

小安峡とは打って変わり、いまだ有毒なガスを吹き出し、
草木の生えない地獄のような景色を見せてくれるのは、
湯沢駅より車で約45分のところにある「川原毛地獄」。
虎毛山の噴火の際に堆積した火山灰や土石流が、
噴出する硫化ガスなどの作用によって漂白され、白い山をつくりあげています。

川原毛地獄の入り口にある深さ40メートルの「三途川渓谷」。泥湯沢・桑の沢・湯尻沢の3本の川が合流するため「三津川」と呼ばれていましたが、この先に“地獄”があることから「三途川」と呼ばれるように。小安峡と同様、水に侵食されやすい砂岩や泥岩でできたやわらかい地層により生まれた景色です。

川原毛地獄の入り口にある深さ40メートルの「三途川渓谷」。泥湯沢・桑の沢・湯尻沢の3本の川が合流するため「三津川」と呼ばれていましたが、この先に“地獄”があることから「三途川」と呼ばれるように。小安峡と同様、水に侵食されやすい砂岩や泥岩でできたやわらかい地層により生まれた景色です。

川原毛地獄は全国屈指の硫黄鉱山で、江戸初期の1623年から1966年に閉山となるまで、約340年間硫黄が採掘されていました。かつてはマッチや農業用の肥料に使われるなど需要があり、湯沢の一大産業だったそう。

川原毛地獄は全国屈指の硫黄鉱山で、江戸初期の1623年から1966年に閉山となるまで、約340年間硫黄が採掘されていました。かつてはマッチや農業用の肥料に使われるなど需要があり、湯沢の一大産業だったそう。

有毒ガスが噴き出ている様子。気温が低くない日はガスの色も硫黄の色と同じ黄色味を帯びるそう。

有毒ガスが噴き出ている様子。気温が低くない日はガスの色も硫黄の色と同じ黄色味を帯びるそう。

「この足元の下にマグマがあって、かつては有毒ガスや土砂崩れの事故も起きたけど、
硫黄で地域は潤っていた。いまも、マグマがあるから温泉が湧き出るし、
地熱発電もできる。マグマというものはとってもありがたいんです」と菅さん。

川原毛地獄の駐車場から徒歩で約15分下ったところには、
地熱と豪雪の恵みにより生まれた「川原毛大湯滝」があります。
滝壺そのものが温泉になっている、珍しい天然温泉です。

滝の落差は20メートル。7月上旬から9月中旬が入浴できるシーズンで、100度近い温泉が沢水と一緒になり、滝壺が約40度のちょうどいい湯加減に。この日は、ゆざわジオパークのキャッチフレーズである「いにしえの火山のめぐみ あつき雪 いかして築く 歴史と暮らし」にマッチした、初雪と大湯滝の珍しい光景が撮影できました(冬季は閉鎖されています)。

滝の落差は20メートル。7月上旬から9月中旬が入浴できるシーズンで、100度近い温泉が沢水と一緒になり、滝壺が約40度のちょうどいい湯加減に。この日は、ゆざわジオパークのキャッチフレーズである「いにしえの火山のめぐみ あつき雪 いかして築く 歴史と暮らし」にマッチした、初雪と大湯滝の珍しい光景が撮影できました(冬季は閉鎖されています)。

川原毛大滝湯の湯はどこにも引かれていないので、体感できるのはこの滝壺だけ。
たどり着くまでの道のりはちょっとしたトレッキングのようですが、
ぜひ体感してみてほしい地熱スポットです。

地域で伝える地元の魅力

こうした迫力ある景色も、地元の人たちは当たり前のように感じてしまうそう。
湯沢市ではジオパークを軸にした子どもたちへの教育に力を入れ、
渡部さんや菅さんはじめ、市から認定されたジオガイドが、
市内の小・中学生を小安峡へ案内したり、
学校へ湯沢の地質や歴史を解説する授業に赴いたりもしています。
川原毛地獄に生息する植物を調べて研究発表する機会もあるのだとか。

「自分が住んでいる場所のことは知らないより知ったほうがいいですよね。
いいもんだ、いい場所だとわかれば、周りに話していこうと思うし、
私自身ジオガイドになってからは、湯沢も悪くないなと思うようになりました。
それに、小・中学生のガイドは楽しいですね。
いろんなことに興味をもって質問してくるし、
ジオパークの授業をとおして自分たちの住む湯沢を見直したと、
子どもながらにそういう感想を言ってくれる子がけっこう多いんです」と渡部さん。

ガイドを務めてみて、湯沢について再発見したことや好きになったことを尋ねると、
菅さんからは「全部だ、全部!」と力強い答えが返ってきました。

「地元のことは、知る機会がなかったからな。
この間も学校で、いわゆる座学をやったの、パワーポイント使って。
(湯沢が生誕の地とされている)小野小町の一生っていう授業をやったんだけども、
そのときうらやましいって言ったんだ、生徒さんに。
私らが小さいときはふるさとのこと学ぶ機会なんてなかったもの。

だからいまのみなさんは幸せだって。私みたいに大人になってから、
こういうジオガイドみたいな仕事があるってことで勉強して、
地元を知るためにガイドになる人もけっこういるんだよ」

菅さんが地域のガイドを始めたのは、ジオガイドが誕生するよりもずっと前の2003年。本業は農家で、「地元を知りたい」という思いから、米、アスパラ、イチゴなどを育てながら携わり始めたそう。

菅さんが地域のガイドを始めたのは、ジオガイドが誕生するよりもずっと前の2003年。本業は農家で、「地元を知りたい」という思いから、米、アスパラ、イチゴなどを育てながら携わり始めたそう。

2020年11月現在、51名がジオガイドとして活躍しています。
2019年度には、湯沢市内の小学6年生がジオガイドとして認定される快挙も。
子どもの頃から地域の魅力に気づき、発信できる人材が育まれている
湯沢のこれからが楽しみです。

湯沢駅の観光案内所へ問い合わせると、湯沢愛熱いジオガイドさんが
365日案内してくれます(要予約)。再生可能エネルギーとして注目される
地熱の知識を深めることができる貴重な機会、ぜひ訪ねてみてください。

次回は、湯沢の地熱の恵みを活用した発電所や、温泉水を活用した産業をご紹介します!

information

map

湯沢駅観光案内所

住所:秋田県湯沢市表町2-2-10

TEL::0183-56-6226(9:00〜16:00)

*ゆざわジオパークガイドの会の予約は1週間前まで

小安峡温泉

Web:https://oyasukyo.jp

川原毛地獄・川原毛大滝湯

Web:http://www.city-yuzawa.jp/midokoro02/711.html

三途川渓谷

Web:http://www.city-yuzawa.jp/midokoro02/713

writer profile

佐藤春菜 Haruna Sato
さとう・はるな●北海道出身。国内外の旅行ガイドブックを編集する都内出版社での勤務を経て、2017年より夫の仕事で拠点を東北に移し、フリーランスに。編集・執筆・アテンドなどを行う。暮らしを豊かにしてくれる、旅やものづくりについて勉強の日々です。

photographer profile

志鎌康平 Kohei Shikama
しかま・こうへい●1982年山形市生まれ。写真家小林紀晴氏のアシスタントを経て山形へ帰郷。2016年志鎌康平写真事務所〈六〉設立。人物、食、土地、芸能まで、日本中、世界中を駆け回りながら撮影を行う。最近は中国やラオス、ベトナムなどの少数民族を訪ね写真を撮り歩く。過去3回の山形ビエンナーレでは公式フォトグラファーを務める。移動写真館「カメラ小屋」も日本全国開催予定。 東北芸術工科大学非常勤講師。
http://www.shikamakohei.com/

Recommend 注目のコンテンツ

Special 関連サイト

What's New 最新記事