連載
posted:2022.3.30 from:全国(北海道、岩手) genre:食・グルメ
〈 この連載・企画は… 〉
毎月コロカル編集部からテーマを出し、
日本各地で活動している地域おこし協力隊の方から集まった写真とメッセージを紹介していきます。
その土地ならではのものだったり、自分の暮らしと変わらないものだったり……。
どんな暮らしをしてどんな景色を見ているのか、ちょっと覗いてみませんか?
text & photo
Chigusa Ide, Chihiro Ogawa
井出千種/小川ちひろ
駅弁の歴史は古く、明治時代に遡ります。
発祥の地については諸説ありますが
そのひとつである宇都宮駅開業時に販売された駅弁は
ゴマ塩おにぎり2個を竹皮で包んだ手軽なものだったそうです。
現在では、地域の特産物を詰め込んだ
多種多様な駅弁が販売されています。
今回は全国にお住まいのみなさんに
まちで販売されている「駅弁」について聞いてみました。
移動中に食べるもよし、お土産として買うのもよし、
おいしい駅弁を目当てに次の旅先を決めるのもアリです。
北海道の東側を南北に走る、JR釧網本線。
釧路駅から網走駅まで所要時間は約3時間、25駅あります。
そのひとつが、霧で有名な摩周湖の最寄り駅であるJR摩周駅。
駅前では〈ぽっぽ亭〉の〈摩周の豚丼〉が販売されています。
昭和初期に開通した釧網本線。釧路湿原やオホーツク海沿岸などを走る、旅情あふれる単線のローカル列車。摩周駅は交換駅。
〈ぽっぽ亭〉が駅前食堂としてスタートしたのは、2003年のこと。
当時の店主・古瀬圭一郎さんは、
子どもの頃に父親と汽車に乗ったとき食べた駅弁の感動が忘れられず、
いつかは販売したいと夢見ていたそうです。
オープンから2年経った頃、
東京の百貨店から「駅弁甲子園」の参加を持ちかけられ、
食堂で提供していた豚丼をアレンジしたところ、
なんと全国第2位に!
以来、弟子屈町を代表するグルメになりました。
2018年には、〈食堂と喫茶 poppotei〉としてリニューアル。
現在は娘婿の菅原慎也さんが店長になり、
もちろん豚丼も、駅弁〈摩周の豚丼〉も相変わらず好評です。
「冷めてもおいしく食べられるように、ロース肉を使っています。
時間が経つことで、味がしみ込むだけでなく、
蓋をするので蒸されるのでしょうか、肉とたれとご飯の感じが絶妙なんです」
と、菅原さんは人気の秘密を教えてくれました。
事前に電話予約をしておけば、駅のホームまで届けてくれるサービスも。列車に乗ったまま〈摩周の豚丼〉が食べられる幸せ!
「駅弁を目当てに訪ねてくださる常連さんも多い。
列車も駅弁も、単なる移動手段や食事ではなく、
旅に深みを与えてくれるものなんですよね」
information
食堂と喫茶 poppotei
住所:北海道川上郡弟子屈町朝日1-7-18
TEL:015-482-2412
営業時間:10:00〜19:00
不定休
Web:食堂と喫茶 poppotei
※〈摩周の豚丼〉は店頭のほかに、摩周駅の売店、道の駅摩周温泉の3か所で販売。
photo & text
井出千種 いで・ちぐさ
横浜市出身。大雪山登山で雄大な自然に感動、北海道のファンになる。2018年、帯広市に移住。2021年5月、弟子屈町地域おこし協力隊着任。摩周湖観光協会に籍を置きながら、弟子屈町、道東、北海道の魅力を発信するべく努力中。
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岩手県奥州市の隣に位置する一関市のJR一ノ関駅弁〈鶏舞弁当〉。
販売する〈株式会社「斎」藤松月堂〉は
一ノ関駅とともに130年の歴史を歩んでいます。
レトロでカラフルなパッケージが目を惹く〈鶏舞弁当〉980円(税込)。
JR一ノ関駅前。
「鶏舞」とは、岩手県南部の奥州市あたりから
宮城県北部まで伝承されている南部神楽の演目のひとつ。
奥州市が舞台の映画『リトル・フォレスト』ラストのシーンで
主演の橋本愛さんも踊っていました。
天の岩戸が開く夜明けを待っていた鶏たちが喜び舞い踊る姿を表現していて、
お弁当の掛け紙には、その華やかな様子が描かれています。
蓋を開けてみると……。
ジャーン! なんと、中身もまるで鶏舞の衣装のようなカラフルさ! 開けた瞬間広がる香ばしくてあまじょっぱい香り。私のお腹の虫をもうならせます。
岩手県産の米で炊いた鶏めしの上には、
ふっくらな鶏の照り焼き、鮮やかな黄色の錦糸卵、
しいたけと筍の煮物、そしてしそ巻き。
ぷりぷりの鶏の照り焼き!
壁をまたいで左の部屋には大根の漬物、
笹かまぼこの下には山の幸である山菜も隠れていました。
「しそ巻き」と「笹かまぼこ」は宮城の名物ですが、
鶏舞が伊達藩にまで伝わる芸能文化でもあるため、
そんな歴史を紐解く意味合いも込められているのではないでしょうか?
「しそ巻き」はクルミやゴマ、唐辛子などを味噌に合わせて青しそで巻いて揚げた家庭料理。ごはんのお供はもちろんですが、お茶請けや、お酒のつまみとしても◎。
information
株式会社斎藤松月堂
photo & text
小川ちひろ おがわ・ちひろ
遊軍スタイルフリーコーディネーター。東京出身。オーストラリアや台湾での海外生活も経験する放浪人間。異なる文化や感覚を持つ「人」に興味を抱く。 転職を機に〈地域おこし協力隊〉の制度を活用して岩手へ移住。現在は遊軍スタイルのフリーコーディネーターとして、旅するように東北の暮らしを堪能中。フットワークの軽さとコミュニティの広さをいかして、人をつなげてケミカルな反応が起こる「場」や「間」を創り出すことを楽しんでいる。
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