キーワードは「火袋」と「通り土間」。 築120年の京町家の建築様式が よみがえる住宅リノベーション
突然のチェコ
さあ、方針も決まり本格的に設計を進めて行こう!
というところで、彼から連絡が入ります。
「仕事の関係で、2年ぐらいチェコに家族で移住することになった」
チェコ!?
突然の話に動揺しつつも、彼が望んで決めたことだったので、
成功と無事を祈り、送り出しました。
家のプロジェクトは凍結です。
結局、彼のチェコ移住は4年に及び、帰国したのは2018年。
その間に僕も彼らを訪ねてチェコに遊びに行きました。
チェコの首都は芸術の都プラハ。1992年まで共産国家だったため
資本主義による急激な開発を免れており、いまも中世のまち並みがしっかりと残っています。

2017年のクリスマス前のプラハの様子。

チェコといえば、アドルフ・ロースやミース・ファン・デル・ローエといった歴史的な巨匠建築家の作品がある国。こちらはミースの名作住宅「トゥーゲンハット邸」。
帰国して約1年後に彼は言います。
「あの家のリノベーション計画を再開したい」
長期間にわたって凍結していたプロジェクトが再始動することは稀なので、
再オファーはとてもうれしかったことを覚えています。
この4年間にいくつかの町家リノベーションを手がけたので、
経験値やノウハウもしっかりと蓄えました。こうして数年前の計画案を引っ張り出し、
もう一度新しく設計をやり直すことになりました。
京町家特有の「火袋」を復元する
今回の改修のキーワードとなったのが、「火袋」と「通り土間」。
度重なる改築で失われていた、火袋や通り土間といった京町家特有の構成を
復元することを意識しつつ、空間のなかにキッチンや子ども室、
書斎スペースなどの機能が点在するように設計していきました。
火袋とは、炊事などで発生する煙や湯気を高く広い空間に逃がすための空間で、
京町家特有の建築様式です。
既存のキッチンは1階にあり、その真上(2階)には床があり納戸となっていました。
ところが、インタビューでの話や町家の一般的な形式から推測すると、
かつてのキッチンには火袋があり、吹き抜けになっていたはず。
それをカタチや形式は違えど、復活させることにしました。
解体工事後に躯体の状態をみると、キッチンの上部は増床していたことが
あらためて確認できました。

既存図面。玄関から続く「通り土間」、その上の床を撤去して「火袋」として復活させる。

解体後の写真。床の一部を解体してかつての火袋が姿をあらわした。
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