減築して中庭をつくる。 京都特有の暮らしの風景をつなぐ、 長屋のリノベーション

減築して三角形の中庭を差し込む

さて、この長屋の2区画分を合わせて住宅へと改修します。
路地奥の長屋なので、以下の課題を解決する必要があります。

・周りが立て込んでいてプライバシーの確保が難しい。

・同じ理由で採光がとりにくい。

ここにお住まいになるのは、セミリタイアされた年配のご夫婦です。
おふたりから普段の住まい方などをお聞きすると、
「リビングにはあまりいない」「食卓にてふたりで語らうことがほとんど」とのこと。
また「仕事は続けているので、独立した書斎がほしい」といった要望がありました。

住まい手の要望や物件の課題を突き合わせて考えた結果、
「減築して、長屋を二分する三角形の庭を差し込む」というアイデアが生まれました。
図にするとこんな感じです。

減築して三角形の中庭を差し込む。

減築して三角形の中庭を差し込む。

改修後の1階平面図。かつての納戸はワークルーム(書斎)に変更。

改修後の1階平面図。かつての納戸はワークルーム(書斎)に変更。

中央部分(ピンクの点線部分)を一部減築して、中庭とブリッジを設置。2階にはベッドルームがある。

中央部分(ピンクの点線部分)を一部減築して、中庭とブリッジを設置。2階にはベッドルームがある。

かつての納戸は独立したワークルームに変更し、中庭を挟んでダイニングを設置。
それらふたつの空間は中庭に対して開口部をとることができるので、
周囲の路地に対する外側はしっかりと閉じることができます。

ふたつの空間は、中庭を渡るブリッジでつながります。
ブリッジは3~4歩程度という短い距離ですが、
「ブリッジを渡る」「中庭を越える」という体験は、意識を切り替え、
なおかつワークルームの独立性を高めます。

先に完成した写真をお見せしてしまいますが、こんな仕上がりです。

ブリッジ内観。

ブリッジ内観。奥に見えるのがワークスペース。左右に坪庭が見える。

ブリッジ外観。手前は坪庭。ブリッジの下は地面が続いていて、上は空へとつながっている。

ブリッジ外観。手前は坪庭。ブリッジの下は地面が続いていて、上は空へとつながっている。

メインの考え方が決まり、なんとか設計を終えることができました。
いよいよ工事に取りかかります。

狭い路地の先にある工事現場

狭い路地のため、工事用の重機はもちろん、軽トラなども進入することができません。
解体で出た廃材を搬出するのも、施工のための資材を搬入するのも、すべて人力。
手運びです。小さな住宅ですが、どうしてもコストが余分にかかってしまいます。

そんなとき「その解体工事、私たちが引き受けます!」と声をあげてくれたのは、
建築主の娘さん夫婦でした。DIYが得意なご夫婦だったこと、
設計や施工の最終調整に手間取り、本格着工までたっぷり時間があったこと。
そして世界はコロナ禍真っ只中で、サービス業に従事する娘さん夫婦は
休業を余儀なくされていたこと。そんな事情が重なって、
解体工事の大半をやってもらうことになりました。

こうして解体工事が終わったあとは、既存の軸組とぼくたちの設計の相違点の調整、
寸法のチェックなどを行いました。

すっかりガランドウに。大工さんに仮の補強を入れてもらっています。

すっかりガランドウに。大工さんに仮の補強を入れてもらっています。

ここから出た廃材は、手作業で路地の外まで運びました。

ここから出た廃材は、手作業で路地の外まで運びました。

writer profile

多田正治 Masaharu Tada
ただ・まさはる●1976年京都生まれ。建築家。〈多田正治アトリエ〉主宰。大阪大学大学院修了後、〈坂本昭・設計工房CASA〉を経て、多田正治アトリエ設立。デザイン事務所〈ENDO SHOJIRO DESIGN〉とシェアするアトリエを京都に構えている。建築、展覧会、家具、書籍、グラフィックなど幅広く手がけ、ENDO SHOJIRO DESIGNと共同でのプロジェクトも行う。2014年から熊野に通い、活動のフィールドを広げ、分野、エリア、共同者を問わず横断的に活動を行っている。2024年より武庫川女子大学生活環境学科准教授。主な受賞歴に京都建築賞奨励賞(2017)など。

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