『伊豆下田100景』での撮影仕事は
名物お菓子屋さんめぐり。
2足のわらじをはく働き方は
少しずつ前進中

自転車で、地元お菓子屋さんの撮影へ!

移住先の伊豆下田で、本業のカメラマンに加え、
ときどきパン屋をやろうとしている津留崎徹花さんですが、
本業でもいい動きが。

地元で初めてまとまった撮影仕事の機会に恵まれたのです。
下田の情報サイトに掲載するため、お菓子屋さんの取材へ。
個性的ですてきなお店にたくさん出会えたようです。

ときどきパン屋、最初の一歩

週末、12月16、17日に、パンの販売とパンランチのイベント
「てつパン食堂」を開催しました。

大学を卒業してからいままでカメラマン一本で仕事をしてきましたが、
もうひとつ「パンを焼く」ということを生業にできないかと
試行錯誤しています。
今回は友人のお店で試しにパン屋をやってみようという、
2日間限りのイベントでした。

夫と娘が、試作した山盛りのパンを毎日試食してくれました。家族3人でだんだんとつくり上げる「てつパン」。

2日間ほぼ寝ずにパンを焼き続けながらお店に立つというのは、
想像以上にしんどいものでした。
けれど、それをはるかに上回るほど楽しくて刺激的だったのです。

そういえば、私は人にごはんをつくって、
おいしいと食べてもらうのがもともと好きでした。
20代のとき、我が家にはしょっちゅう人が集まり、
そのたびに夕飯をつくってふるまっていました。
それが、私にとって喜びだったのです。
2日間を経て、そんなこともふと思い出しました。

接客もバタバタしましたが、夫と娘とともに働く感じも、
とても心地よかったです。夫がチラシをつくったり、
じゃがいもハンコをつくって紙袋をアレンジしてくれたり、
私の知らない夫の得意なことも今回知りました。

今後ときどきパン屋をやっていくにはどんな方法がよいのか、
家族で相談しています。そんな話や、当日の様子についてはまた今度。

イベントのチラシを夫がつくってくれました。夫が文字を、娘が私の似顔絵を、娘の友だちがパンの絵を担当。いい記念になります。

[ff_assignvar name="nexttext" value="本業、カメラマンの仕事も"]
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初めての地元のお仕事にワクワク

そんなイベントも終わり、東京での撮影も一段落したのですが、
下田暮らしが少々バタバタしております。
というのは、ありがたいことに、初めて下田で
まとまったお仕事をいただいたのです。

東京の出版社の仕事で下田での撮影をしたことはあったのですが、
下田のクライアントさんから依頼を受けたのはこれが初めて。
いずれ下田でもカメラマンの仕事ができればと思っていました。
下田に住み始めておよそ9か月、その待ち望んでいた機会に恵まれたのです。

今回お仕事させていただいたのは『伊豆下田100景』という
下田の情報を発信しているWebサイトです。
メインの制作スタッフのほかに、
下田出身もしくは在住のライターやカメラマンなどなど、
いろんな人が関わりながらサイトがつくられています。

以前この連載でも紹介したことのある友人夫婦の
澤地寛之さん(ヒロさん)と亜希子さん(あっこちゃん)が、
この『伊豆下田100景』の立ち上げや企画運営デザインに関わっています。
そのつながりで、下田に移住してきた私に声をかけてくれたのです。

『伊豆下田100景』のデザインを担当している友人あっこちゃんとスタジオで商品撮影。

全店舗の商品を一堂に集めてメインカットの撮影。パンありケーキあり、目を奪われるような細かい細工の生菓子や飴あり。それぞれのお店がとても個性的です。

『伊豆下田100景』は年間のPV数百万以上という、
地方の情報を扱うサイトとしてはかなり人気のサイトです。
「9つの海」「食べる(グルメ)」「泊まる」「あそぶ」「下田みやげ」
というカテゴリーに分け、旅行者目線で必要な情報を配信しています。

サイトが見やすく情報を拾いやすいので、
我が家も移住先探しで下田を訪れたときによく覗いていました。
(いい意味で)少し風変わりな連載やエッジの効いた個性的なデザインが、
普通の観光案内とちょっと違って目を引きます。

もともと飲食店組合が開設していたサイトに
〈下田温泉旅館協同組合〉が加わり、そのふたつの組合が中心となって
『伊豆下田100景』はスタートしました。

今回そこへ新たに「お菓子組合」が加わることになり、
下田にあるお菓子屋さん9店舗の
お菓子とお店の撮影をさせてもらうことになりました。

私の本業はカメラマンですが、今回は取材と文章も担当しています。
「テツカさん、文章も書いてもらえますか?」と友人から依頼され、
とっさに「あ、はい」と答えたのですが、考えてみれば、
いままでお店の取材をしたことはありません。
「私にできるのか?」と一瞬ひるみましたが、

「テツカさんの文章好きだから」

と友人に言われちゃ飛び込むしかありません。

それに、40歳を過ぎて新しい経験をさせてもらえるなんて、
それだけでありがたいしワクワクします。
ということで人生初めての店取材、下田のまちへと繰り出しました。

100年以上の歴史あるお店、〈雑賀屋(さいかや)〉さん。昔から子どもたちが小銭を握りしめて集う駄菓子屋的存在だったのだそう。

お店で手づくりされている飴は、地元民に愛され続けている下田名物です。

[ff_assignvar name="nexttext" value="下田の名物お菓子屋さんへ"]
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老舗の和菓子屋さんからUターンの洋菓子屋さんまで

「まずは、一緒に挨拶まわりに行きましょうか」
と、友人のヒロさんが全店舗に私を連れて行ってくれました。
彼は下田生まれ下田育ち、生粋の下田っこ。
顔なじみの彼が今回の撮影に関わっているということで、
お店の方も安心している様子でした。

その日はご挨拶だけ済ませ、後日あらためて取材にうかがうことに。
「取材はテツカさんのやりやすいようにしてください」
とヒロさんが配慮してくれたので、
ひとりで取材に回りたいとお願いをしました。
少人数のほうが先方が気負わず、
ふとしたこぼれ話をうかがえるのではと思ったのです。

〈五十鈴製菓〉さんのお菓子をつくっているのは、ご主人と息子さんのおふたり。

ぽってりとやわらかいみたらし団子は80円というありがたい値段。シンプルで温かみのある五十鈴さんの和菓子を口にすると、どこかホッとします。

取材するお店はそれほど広範囲ではなかったので、
天気のいい日は自転車で出かけました。
自転車で撮影に行くというのもこれまた初めての経験。
機材をコンパクトにして気ままに行動するというのは、
なかなか心地のいいものです。

取材の途中、時間が空いたのでまちなかにある温泉銭湯でひとっ風呂。冷え込んできたこの季節、400円で気軽に温まれるこの〈昭和湯〉の存在がとてもありがたい。

何代も続く老舗の和菓子屋さんや、
下田にUターンしたご夫婦が始めた洋菓子屋さんなどなど。
いままでまったく知らなかった下田のお菓子屋さんを、
この機会にたくさん知ることができました。

創業して42年になる〈シャルマン伊豆〉。創業当時からつくり続けているというシュークリームやショートケーキは、下田人にとってふるさとの味です。「シャルマンのケーキを食べるとほっとする」という、お客さんの言葉がとてもうれしいと話すご主人。

[ff_assignvar name="nexttext" value="蒸したて熱々のお饅頭!"]
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通り過ぎていたお店の思いに触れる

取材したお店のなかに、〈金栄堂〉さんという和菓子屋さんがあります。
私たちが駅方面に行くときに通る道沿いにあり、
「こんなところに和菓子屋さんがあるんだね~」
と気になりながらも毎回通り過ぎていたお店。
取材を機にそのお店に一歩入ってみたら、
まったく知らない光景が広がっていました。

使い込まれた道具に囲まれ、黙々とあんこを包むおふたり。「ふたりで全部手づくりしてるからね、あんまりたくさんはできないんだよね」とご主人。

取材当日。

「どうぞこちらに」と奥様が案内してくれたのは、
店の裏手にある作業場でした。
「おはようございます、わざわざすみませんね~」
と、ご主人がにこやかに出迎えてくれました。

ふと横を見るとそこには大きい釜が鎮座していて、
蒸気がむんむんと上がっています。
「よし」というかけ声とともに、きれいに整列したお饅頭が蒸気の中へ。
「シュッシュッ」という音を聞きながら数分すると、
ふんわりツヤツヤとしたお饅頭がお目見えしました。

「これ、食べていいよ」とご主人が声をかけてくれたので、
お言葉に甘えてひとついただくことに。
できたて蒸したてのお饅頭を「あつっあつっ」とひと口かじると、
ふわ~っと甘い香りの漂う皮から、
とろーりと温かいあんこが流れ出してきます。
「これ、これ、すごい! こんなおいしいお饅頭食べたの初めてです!」
と興奮する私を見て、ご主人と奥様がうれしそうに笑ってくれました。

金栄堂さんが創業したのは大正7年、いまのご主人で3代目なのだそう。
あんこのつくり方やお菓子の型など、先代から受け継がれてきたものを
いまでも大切に守り続けています。
ご夫婦がお饅頭を丁寧に手づくりしていることや、大切にしている思い。
そうしたことをいままでまったく知らずに、
ただお店の前を通り過ぎていました。
今回の取材を機会に、知らなかった下田にまた触れることができたのです。

金栄堂さんが初代から大切に受け継いできた型や焼き印。使い込まれたその風情は下田の歴史を彷彿とさせます。

取材させていただいたどのお店にもつくり手の思いや歴史があり、
そうした方々と出会えたこの取材は、私にとって最高の経験となりました。

下田というまちには、何代にもわたり守り続けられてきた
老舗のお店がまだまだあります。
お菓子屋さんのほかにも、昔ながらの製法で天日に干している干物屋さんや、
いまでは珍しくなった麹屋さんも1軒だけあります。
下田には、そうした宝がまだ残っているのです。

『伊豆下田100景』の取材を通して、
下田というまちをもっと知りたくなりました。
掘れば掘るほど宝が見つかる下田に、どんどん惹かれています。

シャルマン伊豆のご主人と42年間連れ添ってきた大事なオーブン。ご主人のこの笑顔にまた会いたくなってしまう。下田でまたひとつ、好きなお店が増えました。取材した記事は『伊豆下田100景』に1月にアップされる予定です。

information

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雑賀屋

住所:静岡県下田市2-1-27

TEL:0558-22-0018

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五十鈴製菓

住所:静岡県下田市4-5-12

TEL:0558-22-1912

information

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シャルマン伊豆

住所:静岡県下田市6-8-22

TEL:0558-23-3481

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金栄堂

住所:静岡県下田市武ガ浜2-33

TEL:0558-22-0350

文 津留崎徹花

text & photograph

津留崎徹花 Tetsuka Tsurusaki
つるさき・てつか●フォトグラファー。東京生まれ。料理・人物写真を中心に活動。移住先を探した末、伊豆下田で家族3人で暮らし始める。自身のコロカルでの連載『美味しいアルバム』では執筆も担当。

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