移住した伊豆・下田で
新生活スタート!
この2か月で感じた、
不安なこと、うれしいこと
移住後の不安とは?
長い旅を経て、無事、伊豆・下田に移住し
ついに新しい暮らしをスタートさせた津留崎家。
少しずつ落ち着いてきたときに見えてきた、新生活の不安や問題点、
そして逆にうれしいこと、楽しいこと。
移住後2か月のリアルを、
妻のフォトグラファー徹花さんが綴ります。
下田での新生活スタートから早2か月
小さい頃から毎年、夏休みになると海水浴に訪れていた下田。
そのまちに私たち家族は移住しました。夏にだけ眺めていた海沿いの坂道を通るたびに、不思議な気持ちに包まれます。
下田に住むことになるなんて、あの頃は思いもしなかったと。

子どものころ、兄や姉と「探検隊ごっこ」をして戯れていた海水浴場、九十浜(くじゅっぱま)。下田は私にとって、幼少期のあたたかい思い出がたくさん詰まっている場所です。
家族3人、下田で新たな生活をスタートして2か月が経ちます。
引っ越した当初はとにかく家の片づけに必死で、
雑巾がけをしていたらあっという間に1日が終わる、という日々でした。
それが少しずつ落ち着いてきて、目の前のことから視界が広がり、
ようやく生活が始まっていきました。
こちらに来てから、たくさんの方々とのよい縁をいただいています。
私たちが下田に住むことを知った友人が、いろんな方を紹介してくれたり。
娘の保育園のお友だち家族やご近所さん、不動産屋さんのご家族など、
皆さん気にかけてくださいます。
こうして地元の方とおつき合いさせていただくことは、何よりも心強い。
わからないことだらけで不安なとき、
「いざとなったらあの人がいる!」と思えるだけで安心できます。
そういう感覚は、実家のある東京でずっと暮らしていた自分にとって、
初めての経験でした。
皆さんの存在を、まるでお守りのように感じています。

友人宅(娘の保育園のお友だち家族)に招いていただき、黒船祭(下田で年に一度、5月に開催されるお祭り)の花火を鑑賞。おいしいお料理とお酒をいただきながら、下田湾に浮かぶダイナミックな花火をみんなで楽しむ。温かい時間でした。
先日、東京の友人に会ったときに言われたこと。
「いいことばっかりインスタに上げてるけど、それだけじゃないんでしょ?」
そりゃそうなんですよ、新たな土地で暮らし始めて、もう不安いっぱいです。
激しく夫婦喧嘩することだってあるし、
寝つきが悪い夜だってあります(眠れないことはないんですが)。
SNSではあげられないような後ろ向きなこと、不安なことも、
この連載では率直に書かせていただきたい。
ということで、この2か月で不安に感じたことを整理してみました。
1 クモとかムカデが家中に多発
2 「旦那さんのお仕事は?」と聞かれると困る
3 収入が減ることは覚悟していたものの、実際そうなってみると焦る
ほかにも、漠然とした不安はありますが、
直近で起きていることは上記の3つです。
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1 クモとかムカデが家中に多発
自然豊かな土地では当たり前なのでしょうが、
都会育ちの私にとっては未知との遭遇。たった2か月の間に、
4匹のムカデと、数えきれないほどのクモと出会いました。
クモは噛まないし刺さないし(たぶん)、
最初は驚いたけれどすぐに慣れました。
問題はムカデです。
これは噛まれたら大変、ひどく腫れ上がり、痛みを伴うらしいのです。
それが、この短期間で私の髪の毛の中に2度も潜り込んでいました。
私は過去に3度ほどムカデに体を這われたことがあり、
その感覚を体が覚えています。
その日も、あ、奴がきた……、と、
なるべく体を揺らさないようにして夫のところへ行き、
「ね、いる? いる?」
夫「!!!」
そうして2回とも払ってもらい、ことなきを得たのですが、
これがもし娘だったらと思うといてもたってもいられず、
緊急で対策を考えました。
夫は家の周りを探索してムカデの巣窟を発見、そして入念に退治。
私は以前聞いたことのある「ムカデ油」を入手すべく、
物件を紹介していただいて以来お世話になっている
不動産屋の社長に連絡してみると、
50年ものを持っているとのことで、分けていただきました。
ムカデ油というのは、生きたムカデを油に浸けておいたもので、
刺されたときにそれを塗るとあっという間に腫れと痛みがひくのだそう。
ムカデは攻撃しなければ噛まないのだそうで、
社長はいままでに一度も刺されたことがないと聞いて少し安心しました。
そして娘にはムカデレクチャー。
「ムカデを見つけたときは、あわてない、叩かない、
すぐに人に知らせましょう!」
寝るときには寝具をチェック、長靴を履くときにも
中にいないか確認するという動作にも少しずつ慣れてきました。

50年もののむかで油。ムカデの原型は跡形もなく、すべて溶けています。
2 「旦那さんのお仕事は?」
と聞かれると困る
夫は、移住した先で自分が必要とされる仕事があるはずだと、
仕事を決めずに移住に踏み切りました。
けれど、こちらに来て初対面の方にご挨拶すると、
名前の次に聞かれるのが夫の職業。
「旦那さんは何してるの?」
「いまは何もしていないんです、無職です」
「……。下田は仕事ないよ~、大丈夫?」
と怪訝な顔をされることもあります。
相手のその表情を見るたびに、私は気まずい思いをしていました。
本当は、肝っ玉母ちゃんのようにどんと構えていればよいのでしょうが、
私は子どもの頃から人の表情を深読みするようなタイプで、
いまだにそれが抜けていません。
「あのさ、コロカルで連載もしてることだし、
文筆業とか名乗ったらどうかな?」夫にそう伝えました。
その後、「無職」という言葉を避けて、なんとなく濁すようになった夫。
いま思えば、夫のその率直さを支えてあげたらよかったのに、
と気弱な自分を反省しております。
そして2か月経ったいま、夫が想像していたように、
いろんなことが動き出しました。
それについては次回以降、夫が書かせていただきます。

下田が人で賑わう黒船祭の間、友人を通じて知り合った方のお店を手伝うことに。飲食店を経営してたことのある夫、その経験が生かされています。〈TableTOMATO〉にて。
3 収入が減ることは覚悟していたものの、
実際そうなってみると焦る
移住先を探していたこともあってなかなか予定が読めず、
仕事の依頼を断らざるを得ない状況が昨年から続いていました。
下田での生活が落ち着いてきてからは、仕事も受けられようになりました。
今後は下田や伊豆での仕事もできたらと思いますが、
いまのところは東京の仕事がメインです。
下田と東京の移動は3時間、
やはり東京に住んでいたときほど稼働することはできません。
いまのところ月に2、3回通いながら仕事をしていますが、
収入は以前よりも減っています。
夫の収入もなくなったのですからダブル収入減。
そうなることは覚悟しているつもりでしたが、
実際身に起きてみるとやはり不安になるのが生身の人間てもの。
布団に入ってもなかなか寝つけない夜だってあります。
けれど、下田で暮らし始めてから支出が確実に減りました。
東京に比べて家賃は安く、直売所を利用すれば
新鮮な食材が安く手に入ります。
さらに、庭に生えているよもぎや明日葉を天ぷらにすれば、
お金はほぼかかかりません。

「よもぎの葉っぱがどれか、わかるようになったよ!」と、うれしそう。大人も子どもも、知らないことを知るのは、わくわくするのです。


いただきものの新玉ねぎと摘んだよもぎを天ぷらに。春の香りをめいっぱい楽しみました。
もちろんお金を使わずに生活できるわけではないので、現金収入は必要です。
けれど、子どもと一緒に草摘みをしたり、
おやつをつくったりする時間は以前よりも増えました。下田に来て2か月、
まだまだお金と時間のよいバランスを模索しているところです。

ついでによもぎ団子もつくりました。濃い緑色はよもぎの自然な色、美しい。

庭に生えていた蕗を夫と娘が採ってきてくれたので、煮びたしにしました。芽吹きの春、庭は食材の宝庫となります。
[ff_assignvar name="nexttext" value="でも、いいこともたくさん!"]
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楽しいこと、新たな発見もたくさん!
不安なことをつらつらと書き綴りましたが、
もちろん楽しいことや新たな発見もたくさんあります。
下田に住み始めて大きく変わったのが、
先ほども書きましたが、食回りのことです。
下田や隣の南伊豆町は、直売所がとても充実しています。
自宅から自転車で行ける範囲だけでも2か所の直売所があり、
朝採れの新鮮な野菜や果物がとても安く手に入ります。
自家菜園も少しずつ始めてはいますが、
家族の食卓を彩るにはまだ時間がかかりそう。
いまはもっぱら地元農家さんのお野菜に頼っています。
そして、移住者の方がよく口にする
「ご近所さんにお野菜とかよくもらうよ」というフレーズ。
そうしたことが自分たちの暮らしにも起きています。
通りすがりに玉ねぎや甘夏をいただいたり、
「枇杷がなってるから採りにおいでー」と呼んでいただいたり。

物件を紹介していただいた不動産屋さんとは、徒歩圏内のご近所さん。ご自宅には枇杷や梅の木があり、一緒に収穫させていただきました(ついでにズッキーニやレタスも)。家中に甘い梅の香りが漂っています。
先日は、近所の釣り船屋さんのご主人が魚を抱えて突如現れ、
庭先でチャキチャキとさばいてくれるなんてこともありました。
そうした日々のできごとが新鮮で、
本当にうれしくて楽しくて仕方ないのです。


釣り船宿〈兵助屋〉のご主人鈴木俊和さんが、朝釣ったばかりのいさきを持って来てくれました。娘にとって馴染みのない光景。素早くさばかれていく魚たちを、真剣に見守ります。

いさき3尾を、お刺身と塩焼きでいただきました。塩焼きはほくっほくで、下田産のレモンを少し絞るともう絶品でした!
そしてもうひとつ食回りで大きく変わったことは、
つくり手さんとの距離が近くなったこと。
下田で暮らしていると、近所でひじきを干している光景に出くわしたり、
塩をつくっている方とたまたたま知り合えたりします。
私はもともとつくり手の方に興味があり、
そうした現場を撮影しているときにすごく幸せを感じます。
いままで知らなかった作業工程を見せてもらったり、
つくり手の方が苦労している姿を間近で見れることは、
食べものの原点に触れるような喜びがあります。
下田に住むようになってから、
日常でシャッターを切る回数が格段に増えました。
東京にいるときは近所に出かけるのに一眼レフを
持ち歩いていませんでしたが、いまは必ず携帯しています。
いつどこで心躍る場面に遭遇するかわからないのです。
小さい頃、夏になると海水浴に訪れていた下田。
そのまちで暮らしてみたら、昔とは違う景色が見え始めてきました。
この先、またどんな旅が始まるのかわからないけれど、
流れに身をまかせてみよう。

天気のよい朝に下田漁港へ出かけてみると、ちょうど金目鯛が水揚げされているところでした。下田は金目鯛の水揚げ高全国1位。ずらりと並ぶ金目鯛、てきぱきと作業をする男達、張りつめた空気に圧倒されました。

家から徒歩圏内の海水浴場へ散歩に出かけると、民宿の玄関先でひじきを干していました。5月の初旬、こんな光景があちらこちらで見られます。

外浦海岸の海水で塩をつくっている村山英夫さん。近所の直売所でたまたま村山さんと出会い、夫と娘と一緒に作業場を見せていただきました。

村山さんの塩造りはすべて手作業。海水を4、5日かけて薪で炊き上げ、天日干ししながら丁寧にごみを取り除いていきます。

娘に、お塩つくってるの見てどうだった? と聞くと、「暑かった。けど、おじさんかっこよかった!」とのこと。村山さんに伝えると、ほんわりと笑ってくれました。

炊きたてのご飯に塩をひと振り、それが娘のお気に入りの食べ方です。村山さんの作るお塩は、〈直農産物直売所旬の里〉などで購入可能です。