連載
posted:2015.11.19 from:鳥取県八頭郡智頭町 genre:暮らしと移住
〈 この連載・企画は… 〉
鳥取県南東部に位置する八頭郡智頭町。
森林に囲まれたこの小さなまちに、家族4人で移り住んだ一家がいます。
このまちで、どんな風に子どもたちが育っていくのか。普通の母親の目線から、その日常を綴ります。
writer profile
Aya Tanaka
田中亜矢
たなか・あや●横浜市生まれ。2013年東京から広島・尾道へ、2015年鳥取・智頭町へ家族で移住。ふたりの子ども(3歳違いの姉弟)を育てながら、マイペースに音楽活動も続けている。シンガーソングライターとしてこれまで2枚のソロアルバムをリリース、またバンド〈図書館〉でも、2015年7月に2枚目のアルバムをリリース。
http://ayatanaka.exblog.jp/
冬の足音が少しずつ聞こえ始めた。
朝晩はずいぶん冷え込むようになり、明け方目が覚めて窓の外を見ると、
山は深い霧に包まれていることが多い。
少しずつ夜が明けて霧が晴れてくると、美しい朝の空を見ることができるのだった。
いま住んでいる“移住おためし住宅”には薪ストーブがあり、
先日ついに初点火することになった。
といっても夫もわたしも薪ストーブは初めてで、友人のSさんファミリーが
薪を持って遊びに来てくれ、点火しつついろんなことを教えてくれた。
薪ストーブの威力はすごくて、2階建ての吹き抜けの家全体が、
あっというまに暖まった。雪降る真冬の日も、ポカポカだそうである。
子どもたちは、薪が燃えてゆくのを楽しそうに眺めていた。
そんな風にして秋が深まっていくなか、イベント三昧の日々はまだまだ続く。
11月の最初の週末には、森のようちえんの保護者による
〈ちづの森の感謝祭〉が、智頭小学校のグラウンドで開かれた。
この感謝祭は、お世話になっている地元の方々に感謝の気持ちをこめて、
毎年、智頭町内のいろんな場所を利用して行われているお祭りだ。
何か月も前から準備を重ねてつくり上げていく大規模なもの。
今年は、保護者による恒例の特製お味噌汁ふるまいや、
カフェ、フリーマーケット、あそびコーナー、ステージでの出し物のほか、
附属学校〈新田サドベリースクール〉の子どもたちによる出店、
ゲストの飲食店・雑貨店の出店など、盛りだくさん。
わたしは、お味噌汁ふるまい班に参加した。
森のようちえんでは、週1日“クッキング”の日があり、
子どもたちが野菜を持ち寄って切り、火をおこし、
自分たちでお味噌汁を作って食べている。
そのお味噌汁を、感謝祭で保護者たちが作り(野菜は子どもたちと一緒に切る)
無料でふるまって食べていただくのだ。
この日は板井原集落のおいしい水を汲んできて使い、
智頭杉の割り箸を添えてふるまった。
わたしは仕事でなかなか事前準備に参加できず、
ほかのメンバーに頼りっぱなしになってしまったのだけど、
「できる人ができることをやればいいんだよ」
とニコニコ、確実に準備を進めてくれるほかのお母さんたちは、
本当に頼もしく、格好よかったのであった。
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ステージも盛り上がっていて、お母さんたちによるミュージックシアターは、
才能あふれるコメディエンヌぶりが大ウケだったし、
お父さんたちによるヒーローショー(笑)は、
智頭の地区紹介とお父さんの自己紹介を盛り込んだ台本がよくできていて、
みんなとても楽しそうに見ていた。
ゲスト出店も、レベルが高くすてきなお店ばかりだった。
飲食店は、地元の食材をメインに使った、
おいしくて体にやさしいお料理やお菓子ばかり。
どれも食べてみたくて目移りしてしまったけれど、
まずは〈野原のCAFEぽすと〉さんのランチプレート。
ぽすとのなおみさんは、週に1回、
森のようちえんの給食を作って森まで届けてくださっている。
愛情こめて育てられたお米や野菜を使った料理は
体にすーっと沁み込むおいしさで、大満足の味。
最近、智頭に移住されたという〈ラガー食堂〉さんの野菜カレー、
〈Sammy’s Kitchen〉さんの無花果のチーズケーキも、本当においしくて感動。
お祭りの締めには、恒例の誰でも参加できる相撲大会があり、
大人の部も子どもの部も大盛り上がりで幕を閉じた。
これだけ大規模なお祭りをつくり上げるのはかなりの労力を必要とすることで、
それでも保護者の皆さんが忙しい合間をぬって
真剣に、楽しみながら準備を進めてきたのは
地域への大きな感謝の気持ちがあってこそだと思う。
まるたんぼうの生みの親である西村早栄子さんも、園児の家族も、
その多くが移住者で、地域の理解なくして活動は成り立たない。
智頭町にとってはまったく新しい試みが、
いまのようにあたたかく受け入れていただけているのも、
感謝祭をはじめとして、これまでスタッフや保護者の皆さんが
コツコツと地域の方々との交流を積み重ねてきたからなのだなぁ、
ということを実感した、1年目の感謝祭だった。
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