『日本列島回復論』の著者 井上岳一さんに聞く! どうやったら地域活動は続けられるの?

仲間ができることで意識が変わり、文化が生まれる

井上さんはいま、日本総研と武蔵野美術大学の協働により
「自律共生スタジオ」というプロジェクトを進めている。
拠点のひとつが、函館市から車で約1時間の場所にある森町。
これまで林業や水産業などそれぞれの業種が縦割りになっていたそうで、
それをつなぐ取り組みとして、毎月交流会を開いている。

この交流会は、森町の地名の「森」がアイヌ語の「オニウシ(樹木の多くある所の意)」
に由来していることから「オニウシ変態解放区」と呼ばれているそう。
お酒を飲み語り合うなかから、さまざまな出来事が生まれていくという。

オニウシ変態解放区のビジュアルイメージ。(Graphic : harumaki design)

オニウシ変態解放区のビジュアルイメージ。(Graphic : harumaki design)

「先が見えないからと農業を辞めようと思っていた農家の方が、
この交流会に参加したことがきっかけとなってカフェや直売所を立ち上げ、
収穫体験祭やフェスも企画するようになりました。
日増しに進化していくその理由を聞いたら『仲間ができたから』だそうです。
前向きな話ができて、さまざまな営業所の人が協力してくれて、
小さな成功体験が積み重なっていって、自己効力感が高まっていったのだと思います。
『変態』というのは、変わった人というだけでなく、トランスフォーマーという意味。
みんなでつながり合えば変革が起きて、力を発揮できるということなんです」

森町の黒澤農園は、わずか1年半の間にさまざまな企画を展開した。

森町の黒澤農園は、わずか1年半の間にさまざまな企画を展開した。

事例紹介とともに井上さんが強調したのは文化。
それは人をやる気にさせたり、創造性を発揮させたりする引き金になるものだという。

「磯田憲一さん(北海道文化財団理事長)が著書のなかで、文化芸術は
『人の持つ才能を発掘し開花させ、次なる意欲を高める力を持つ。
そして文化芸術を通じて対話が生まれ、創造力を刺激し、
“ひと・もの・こと”すべての魅力を深めていく。住む人の誇り、
訪れる人の共感を育む文化芸術の力は、新しい世紀における
地域発展の確かな推力になっていくといっても過言ではない』
(『遥かなる希望の島』より)と語っています。

この言葉に本当に共感します。森町のように仲間をつくっていくと、
ひとりひとりが自発的になり、文化が育ち始めていると感じます。
経済だけでは人は満足できません。文化的な魅力が高まれば人が集まってくる。
人が集まるようになれば、経済が生まれます」

writer profile

來嶋路子 Michiko Kurushima
くるしま・みちこ●東京都出身。1994年に美術出版社で働き始め、『みづゑ』編集長、『美術手帖』副編集長など歴任。2011年に東日本大震災をきっかけに暮らしの拠点を北海道へ移しリモートワークを行う。2015年に独立。〈森の出版社ミチクル〉を立ち上げローカルな本づくりを模索中。岩見沢市の美流渡とその周辺地区の地域活動〈みる・とーぶプロジェクト〉の代表も務める。
https://www.instagram.com/michikokurushima/

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