〈 この連載・企画は… 〉
日本一周の旅の途中だった「うんまほふうふ」が、今度は海外のガストロノミーを巡る世界一周の旅へ。
その土地ならではの食文化を体感しながら、その背景にあるストーリーを、日本の食文化と比べながら、
うんまほふうふの視点でご紹介していきます。
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unmahofufu
うんまほふうふ
1993年生まれの“うんちゃん”と“まほ”。2023年9月から夫婦でDIYした軽バンにて日本一周をスタート。日本各地で体験した文化やさまざまな人との交流から、日本食による地域の魅力化の可能性にあらためて気づかされる。1年間の日本周遊を経て、もっと食文化について学びたいと考え、世界各国の食文化を体験する旅に出ることを決意。9か月33か国の世界一周旅を通して、海外の食文化やガストロノミー事例を学び、発信していく。
Instagram:@unmahofufu
YouTube:うんまほふうふ Travel
公式サイト:うんまほふうふブログ
こんにちは、世界一周旅中のうんまほふうふです。
東南アジアを立ち、次に向かったのはインド!
インドからその周辺国、さらには世界中に広まった食も多く、
独自で多様な食文化が発展していったおもしろい国のひとつです。
タイのバンコクからインドに飛行機で移動し、
第3の都市・コルカタ市街地に到着したのは、現地時間の朝8時頃。
バスを降りて、すごい人集りを見つけたと思ったら
そこは「チャイスタンド」でした。
次から次へと人がやってきては、
チャイを飲みながら店の前で談笑する。
噂には聞いていたけど、
「ほんとうにインドではチャイをよく飲むのだ」
と感じた瞬間でした。
私たちも、さっそくチャイを試してみることに。
初めての感想は、想像以上においしい!
甘いけどスパイスがしっかり効いている。
これは、ハマってしまいそうな予感……。
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まち歩きをしていると、行く先々どこでも
チャイスタンドを見かけました。
一般的なインドのチャイといえば「マサラ・チャイ」。
スパイスを煮出したミルクティーとして親しまれています。
ひと口にマサラ・チャイといっても、
それぞれのお店が独自でスパイスを調合しているほか、
カプチーノ風、バター入りなどもあり、
お店によってさまざまなマサラ・チャイがあるのがとてもおもしろいです。
そして、チャイを甘いお菓子と食すのがインド流。
実際に食べてみると、過言ではないくらいに甘くて。
こんなに甘いお菓子を、
これまた甘いチャイと一緒に楽しむ人が多いことにびっくり!
インドでは牛乳の生産量が世界第1位、
砂糖の生産量も世界第2位というから、
チャイやお菓子が甘い理由にも納得です。
チャイスタンドでもよく見かけたのは
「ジャレビ」という小麦粉を水で溶いたゆるめの生地を
油で揚げたお菓子。
ドーナツよりももっと軽い、サクッとした生地感で
口の中にジュワッと広がる甘いシロップが特徴です。
チャイとジャレビの甘いもの同士の組み合わせは思いのほか
クセになる中毒性がありました。
マサラ・チャイのスパイスがほどよく
両者のバランスをとってくれる感じがしました。
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今でこそインドの国民的な飲み物であるチャイ。
実は、自生する茶葉の木は昔からあったものの、
国内で紅茶はあまり飲まれていませんでした。
チャイが全土に広まった背景には、イギリスの影響があります。
今は昔、インドはイギリスの統治下にありました。
イギリス向けに紅茶葉を栽培するようになり、
それを機にお茶が広まったといわれています。
特にコルカタでは、
イギリス領時代の面影が残る多様な建物が印象的で
チャイスタンドもほかに訪れた地域より多く見かけました。
インドの紅茶の名産地、
ダージリンやアッサムが近いという物理的な側面もあれば、
古くは植民地時代の首都だった
という影響も大きいのかもしれません。
コルカタのチャイスタンドでは
チャイと一緒にトーストが売られていることが多く、
包み紙も英字新聞でした!
これは、紛れもなくイギリスによる影響の名残だと感じました。
イギリス領時代は、インド産の紅茶葉のほとんどが
イギリス本国に持ち帰られました。
インドに残るものといえば、
茶葉を焙煎したときに残るダストと呼ばれるもの。
これは、苦味が非常に強いことから
到底おいしいといえるものではありませんでした。
そこでインド人は、
名産物であるスパイス、牛乳、砂糖を使って
おいしい「マサラ・チャイ」を生み出したのです。
今では、これが習慣化され
1日がチャイで始まりチャイで終わる、といっても過言ではないほど、
チャイ文化が広まり、定着していきました。
チャイスタンドでは、その場で飲むのはもちろん、
ポットや袋に入れて持ち帰る人なども多く、
さまざまなかたちでチャイは家庭に浸透しています。
そんなチャイを片手に人気を博す、
甘くないグルメとの組みあわせにも出合いました。
カレー味の玉ねぎやじゃがいもを
コロッケのようにして揚げてパンに挟んだスパイシーな「カチョリ」。
そしてバターをこれでもかというくらい挟み込んだ「ブンムスカ」。
スパイシーで刺激的なカチョリも
くどいくらいにこってり濃厚なブンムスカも
口当たりの良いまろやかなチャイが程良く包み込んでくれました。
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紅茶は世界各国で栽培されていますが、
インドの紅茶生産量はなんと、世界一!
世界全体の生産量の半数を超える規模なのです。
ただ、輸出量は世界一ではありません。
それほど、国内での紅茶の消費量が多いことがわかります。
また、地域によって栽培されている品種がさまざま。
生産地はインド北東部と南部に大きく分かれ、
北東部の高地でつくられている「ダージリン」と
同じく北東部の低地でつくられている「アッサム」が有名です。
アッサムは生産地の名前でもあり、世界最大の紅茶産出量を誇る産地。
高温多湿で、茶葉の栽培に適した雨量が十分にあります。
アッサムは、香り豊かでコクのある味わいが特徴で
ミルクに負けない力強さがあります。
これがチャイに適しているそうで、
地域を問わずチャイに広く使われています。
アッサム茶葉を煮出してつくるインドのチャイは茶葉の味も強めで、
小さなカップでも非常に満足感がありました!
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甘くない日本茶はインドでは飲めたもんじゃない?
そう感じてしまうほどに、インドを旅していると
砂糖がたっぷりの甘〜いお茶しか見かけません。
そして、インドのチャイ文化は日々の暮らしに根づいていました。
家族と過ごす時間にも、仕事や作業の合間にも
欠かせないのがチャイブレイクです。
チャイを通じたコミュニケーションが
大切な時間とされているように感じました。
日本では同じように休憩を兼ねたお茶時間もあれば、
おもてなしとしてお茶を出すという習慣もありますよね。
私たちが日本一周中に
高知県で農家さんのお手伝いをした際には
休憩にと、ハーブを混ぜたお茶をご馳走になりました。
畑仕事のあとにお茶の時間を挟んだことで、
心を整える余裕が生まれました。
集中力からの解放といった感じに近いです。
そのほかにも、
日本で旅をしていると料理やお菓子とともに
お茶をサービスしてもらえることもありました。
このような「心のおもてなし」を
無意識のうちに与えてもらっていたんだなと思いました。
インドや日本での体験から
お茶を通じた食文化のスタイルは
さまざまでおもしろいと実感しました。
そしてそれらに共通するものとして、
お茶を嗜む時間が生み出すのは
何らかのポジティブな空間であることも。
お茶文化こそ、昨今の忙しい日々の生活に必要で、
それを上手に活用して
心の癒しを生み出せるようになりたいと思いました。
今後のガストロノミーを巡る旅においても
各地のお茶文化や考え方については
意識的に感じていきたいです!
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