連載
posted:2012.4.13 from:滋賀県長浜市 genre:食・グルメ
〈 この連載・企画は… 〉
みんなどんな朝ごはんを食べているのか? 暮らしの大切な一場面だから、
おいしい朝のメニューを全国さまざまな場所で集めてみます。その土地ならではもあれば、新しいスタイルも!?
editor's profile
Tomohiro Okusa
大草朋宏
おおくさ・ともひろ●エディター/ライター。東京生まれ、千葉育ち。自転車ですぐ東京都内に入れる立地に育ったため、青春時代の千葉で培われたものといえば、落花生への愛情でもなく、パワーライスクルーからの影響でもなく、都内への強く激しいコンプレックスのみ。いまだにそれがすべての原動力。
credit
撮影:MOTOKO
朝ごはんのみならず、日本の食の原点ともいえるのが米。
そこで米農家の朝ごはんを覗きにきた。
滋賀県長浜市、琵琶湖のほとりで米農家を営んでいる
「お米の家倉(やぐら)」の家倉民子さん。
現在は息子さんが専業農家として米づくりに励んでいる。
もっと農家らしい豪快な朝ごはんを思い描いていると、
想像以上に、健康を考えるヘルシー志向だった。
「黄色とか赤とか黒とか白とか、なるべくいろいろなものを食べたいんです。
味付けもしょっぱくならないように、特に塩分には気を使っています。
塩は1日6gが理想」
目分量でもおいしい“おっかさんの料理”のようでいて、きっちり計算されている。
いただいてみると、どれも薄味だが、しっかりと素材の風味が生かされている。
ほとんどが自宅でとれたものや自家製なのだ。
「白菜と人参はうちで採れたもの。野菜は自分たちが食べる分だけ育てています。
この季節になるとなくなってしまうのよ。
黒豆も黒砂糖を使って作ったし、らっきょうも自家製です。
たくわんは主人が漬けたもので、ちょっとしょっぱいわね。
ユズジャムは初めて作ったんだけど、作り過ぎちゃって、3kgも!(笑)」
あっけらかんと笑う姿にホッとする。いいかあちゃんだ。
さて、米のプロということで、
“おいしいお米の炊き方を教えてください”と尋ねると
「こっちが教えてほしいわ(笑)」とまたまたにこやかに返す。
ここは息子の家倉敬和さんがフォローしてくれた。
「今日のご飯は無農薬のこしひかりです。
昨日の夜から水に浸けておきましたが、ベストは1時間半くらいです。
でも、そのために朝早く起きるのも大変なので、
前夜から漬けておいても割とおいしく食べられる『こしひかり』にしました。
だから、ごはんを朝炊く派、夜炊く派、
それぞれの生活リズムに合わせた浸水時間のお米を選ぶといいですよ」
なるほど、ライフスタイルに合わせた浸水時間というのは考えたことがなかった。
民子さんに話を聞いていると、
「新聞に載っていた、テレビで見た」という料理法やテクニックを話す。
一度試してみて良ければ実際に取り入れてみるという。
実に研究熱心だが、それもそのはず、滋賀県健康促進連絡協議会で活動しており、
また地元長浜の料理研究家である肥田文子さんの活動をお手伝いしているからだ。
肥田文子さんは湖北町食事文化研究会の代表で、
著作『忘れぬうちに伝えたい湖北街の伝統食・地産食』で
農山漁村女性・生活活動支援協会の
「平成21年度 農山漁村いきいきシニア活動 優良賞」を受賞。
さらに、農林水産省が選ぶ「平成23年度 地産地消の仕事人」に選ばれている。
「健康促進協議会は、厚生省から補助金をもらっているんですけど、
一度、事業仕分けで、廃止になりかけたの(笑)。
もっと若い人に郷土料理を伝えたいんだけど、料理教室をやっても、
平日はみなさん勤めてるし、日曜日も子どものコトとかで、
なかなか人が集まらないんです。年配が対象になってしまってねぇ」
こう見えて(!?)、トラクターもコンバインも田植え機も乗りこなす、
スーパーお母さん。いつまでも明るく笑う笑顔で、
健康的な郷土食を次代に伝えていってほしい。
ごちそうさまでした。
profile
TAMIKO YAGURA
家倉民子
地域での健康促進や郷土料理の伝達にも活動するお米農家のおかあさん。
「お米の家倉」
http://yagu.jp/
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