連載
〈 この連載・企画は… 〉
全国にはどれぐらいの商店街があるのだろう? シャッター通りとか地域の課題もあるけれど、
知恵と元気とみんなの協同で生き生きしている、ステキな商店街を全国行脚します。
writer profile
Maruko Kozakai
小堺丸子
こざかい・まるこ●東京都出身。読みものサイト「デイリーポータルZ」ライター。江戸っ子ぽいとよく言われますが新潟と茨城のハーフです。好きなものは犬と酸っぱいもの全般。それと、地元の人に頼って穴場を聞きながら周る旅が好きで上記サイトでレポートしたりしています。
credit
撮影:水野昭子
ひとつの商店街(地域)で売られているパンと具材を使い、
その土地でしか食べられないサンドイッチをつくってみる企画。
必ずといっていいほどおいしいものができ、
ついでにまちの様子や地域の食を知ることができる、一石二鳥の企画なのだ。
今回やってきたのは神奈川県の鵠沼海岸(くげぬまかいがん)。
一大観光地である江ノ島のお隣にある。
私は年に数回、鎌倉とセットで江ノ島に遊びに行くのだけれど、鵠沼海岸は初めてだ。
鵠沼海岸は、サーフィンやビーチバレーの発祥の地として知られ、
多くのビーチスポーツがとても盛んな地域だそうだ。
また、芥川龍之介など日本を代表する多くの文人たちにも愛された場所らしい。
今回の案内人は、「手書き地図推進委員会」を運営する川村行治さん。
手書き地図推進委員会とは、いろんなまちを地元の人たちと歩き、
あらためて再発見したものを一緒に手書きで地図におこすという活動だ。
そして、そんな川村さんのお友だちの牧村正治(マッキー)さんも来てくれた。
実は私は手書き地図推進委員会のメンバー。
そこで、以前このあたりに会社があった川村さんに声をかけたのだが、
前日くらいに「自信がない」と言い出して、超地元のマッキーさんを呼んでくれたのだ。
さて、さっそくマッキーさんが地元の人ならではの情報を教えてくれた。
鵠沼の「鵠」の漢字の左側の「告」っぽいところの表記がいろいろあるというのだ。
この統一されていない感、すでにまちの大らかさを感じてたのしいぞ。
さてさて、そんなおふたりについていって、食材探しをスタート!
駅前から早くも湘南っぽさを感じるお店が並んでいる。
雑貨屋さんやカフェなど、つい入りたくなるようなお店だ。
マッキーさんは店員さんたちと顔見知りで、さわやかに挨拶していた。
そう、さわやかだ!
そんなこと感じる駅前ってあまりない気がするぞ。
さっそく、サザエさんに出てきそうな、昭和を感じさせるいいお店をみつけた。
昔は奥で魚も売っていたそうだ。
なにかサンドイッチに入れられそうなものはないか物色する。
すると、ひときわキラキラと輝く子を発掘!
湘南ゴールドは、お酒になっていたり、
最近ではコンビニでグミになっているのも見かけるほど有名ブランドみたいだ。
でも実際に見るのは初めて。
サンドにする、と店主さんに話すと
「湘南ゴールドを(食材に)かけるだけに使うのはすごく贅沢!」と笑っていた。
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実はここだけは前もって存在を知っていた。
企画上、パン屋があるまちにしてほしいと
編集部からお達しがあったので調べていたら見つけたのだ。
調べたときシネコヤさんは改装中だったので、その再開をひそかに待ちのぞんでいた。
怖いおじいさんが出てきたらどうしよう……とドキドキしたが、
やさし気な女性が案内してくれた。
2階にある映画館は上映中だったので撮影できなかったものの、
1階はどうぞ、と見せていただけた。
シネコヤさんに入っただけで、その雰囲気のよさにワクワクするのだけれど、
本のラインナップがとてもいい。
本が大好きな川村さんは特に目がキラキラしていた。
そしてかつて高校生のときに学校をさぼって見に行ったという、
思い出の映画のパンフレットを見つけさらに興奮していた。
私も子どものときに大好きだった
『長くつ下のピッピ』の本を見つけてやはり興奮した。
また、こちらで上映される映画はなかなかほかで見られないものがあるらしい。
特に『人生フルーツ』という映画は配信がないため要望が多く、
何度か上映していると言っていた。気になるなあ!
しっとりと静かに、映画や本、昔を懐かしみたい人にはおススメの場所です。
並んでいるパンは〈自家製天然酵母パン デスチャー〉さんという、
同じ神奈川でも山のほうの、山北町というところに工場があるパンだそうだ。
パンは特に水が大事らしく、山のおいしい水を求めて、人里離れた場所へ。
工場がある谷峨駅は無人駅だそう。
きっと自然豊かなところでできたパンたちなのだ。
サンドに最重要のパンを無事手に入れた。
あとはブラブラしながら具材探しだ。
サザエさん的昭和の風情をバリバリ残しつつ、
ところどころセンスの良いお店がある商店街だ。
スーパーも、マッキーさんが子どもの頃からある地元っぽいスーパーだ。
マッキーさんによると、この辺りは高齢者層(マダム系)とファミリー層の
二極化しているそうだ。
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こちらのフライデーさんでは、注文してから揚げるという。
サーファーがここで揚げ物を買って、食べながら海に行くのだそうだ。
最高だな!
スーパーで慣れてしまっているのか、
こうやって揚げる前の状態で並んでいるのがとても珍しく感じる。
そう伝えると、お母さんが「手間がかかるからこんなこと普通はしないのよ」と言っていた。
「食品は生きているから」できるだけおいしい状態で提供したいとも。
いいなあ、近所に欲しいお店!
いますぐ食べたいところだが、この企画の特性上、
すべて食材を揃えてからサンドにする必要がある。ほかも急いで調達しよう!
いま歩いている商店街のメイン通りは、だいたい直線600メートルほど。
道幅は広くなく、ちょうど両側のお店がのぞける感じで買い物しやすい。
でも車がまあまあ通る。
あ、車きたよ、と声をかけあいながらブラブラした。
こちらのクゲヌマトリコさんは、おいしい野菜にこだわったカレーやお弁当、
スープやサンドイッチを販売している。
ヘルシーだけどボリュームがあるのがウリのお店だ。
フライドポテトをサンドイッチに入れたいというと、食べやすいようにカットしてくれた。
そして近くのお店で「おもしろいタレを出してるところがある」と教えてくれた。
行ってみよう!
こちらの〈鵠沼ぎょうざ〉さんでは、生、冷凍、焼きの餃子と、
中華麺を販売しているお店だった。
外観や餃子のイメージから、定食屋さんかと思いきや、
中に入るとまるでカフェのカウンターのよう。
神奈川県の逗子のあたりに住んでいる、
荒井さんという女性がつくっているというラー油。
餃子にちょうど合うそうで、大好評だという。
湘南地方らしく、しらすもあってうれしい!
ちなみに、ほぼここだけでしか手に入らないらしい。
これは買うっきゃないでしょう。
最初のほうに出てきたシネコヤさんのお話や、
この辺は実はパン屋の激戦区だという話も聞くことができた。
手書きで地図をつくっちゃうくらいだ、いろいろと詳しいのだろう。
もしこちらのお店に行くことあれば、餃子やラー油を買うついでに、
商店街のお話を聞いてみてもいいかもしれない。
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さてようやく食材がそろった。
海辺近くにあった公園で広げて、各々サンドイッチに完成させよう。
見てわかる通り、湘南ゴールドの黄色が明るく元気で見栄えがとてもいい。
キャベツの千切りのやさしい緑もいいクッションになり、
揚げ物たちが喜んでいるようだった。
それはそれはおいしかった。
揚げ物にこんなにラー油って合うのか。
湘南ゴールドはこんなに爽やかなのか。
ニンニクも柑橘も、それぞれ私たちを元気にしてくれた。
食材が最高なのはもちろんだけど、2時間ほど歩き回り、
まちの様子や人の話を聞いたうえでの、ここでしか食べられない極上サンドなのだ。
舌だけでなく、体も心もおいしいと言っていた。
川村さんの感想
「まず、サンドを口に近づけると湘南の太陽を集約してできた、
湘南ゴールドの甘〜く爽やかな柑橘系の香りが誘います。
パンはやけにやわらかく、すぐにフライデーの揚げたてのスコッチチーズフライへ
歯がさっくりとあたります。
中のチーズはどっしり濃厚! 一旦モグモグすると、
ガーリックが効いた辛いパンチのあるソースに今度は突き放されます。
がこれは癖になるヤツ。
どっさり下に敷いたキャベツとほのかな甘さのメープルシロップ味のお芋が
やさしく事態を中和させてくれるー。何という小悪魔なサンド! でしたー♪」
マッキーさんの感想
「地元の食材でサンドイッチをつくって食べることは今までしたことがなかったので、
とても新鮮で楽しかったです。
冷めてしまった揚げ物なのに、サクサクした食感がおいしかった。
パンは、外側はパンで中はおにぎりのようにモチモチとした食感。
サクサクしたキスフライとの組み合わせが絶妙でした。
揚げ物とラー油の組み合わせは自宅でも試してみたい!」
というわけで今回も大成功!
次はどのまちにサンドしにいこうか。
・湘南ゴールド (たしか7個くらい) 680円
・シネコヤのパン(玄米ごはんパン3個、バンズ1個) 380円
・フライデーの揚げ物(牡蠣、スコッチチーズ、アジフライ、キスフライ、ソース) 836円
・クゲヌマトリコのポテトフライ(プレーンとメイプルバター) 700円
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合計(4人前) 2596円
information
鵠沼海岸商店街
アクセス:小田急江ノ島線 鵠沼海岸駅
Web:鵠沼海岸商店街振興組合
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