久留米絣を世界へ! 〈藍染絣工房〉と〈IKI LUCA〉が 切り開く、絣の新しい可能性

つくり手が楽しんでいる姿を見せていきたい

一方、研介さんは、日々ものづくりに集中しているからこそ、
つくり手以外の視点からは気づきが多い、と話します。

「コロナ以降、工房を訪れる海外のお客さんがかなり増えています。
日本を何度も旅行していて、よりローカルなものに触れたくて
九州を回っている方が多いんです。
うちの工房は広告を出しているわけではないし、
SNSで発信しているわけでもないけれど、自分たちで調べて直接やって来るんですよね。

そういった人たちは久留米絣に対する先入観もないし、フラットに見てくれるから、
『手触りがいいから◯◯に使えそう』などと、いろいろなアイデアが出てくる。
発想自体がおもしろいし、その先にいろいろな可能性を感じます」(研介さん)

「現代アートの市場は、いまや価格が高騰して手が出ないけれども、
伝統工芸は価格のわりにすばらしい技術が凝縮されている。
海外の方は日本の工芸に注目しているという話を聞きます」(糸川さん)

これに対して、MUFGの矢原さんから質問がありました。

「海外の方は、完成した商品にだけ関心があるのでなく、
制作工程にも興味があるから、工房まで足を運ぶのでしょうか?」

「制作工程を見て買いたい、というのもあるのでしょうけど、
実際に商品を扱っているところが限られているんです。
特にヨーロッパは、こういった工房がほぼなくなってしまったらしく、
『先進国で、こんな手仕事がまだ残っているなんて!』と、みなさん驚かれます。
最近は海外のメゾンも、わざわざここを訪ねてきます。
国内だと、建築や内装関係など異業種からの問い合わせも多く、
建具に藍染めの木を使用したいなどというオーダーもあります」(研介さん)

つくり手もさまざまな可能性を探っているといいます。
たとえば藍染絣工房が久留米大学と進めているのが、
久留米絣の安眠効果に関する実証実験。
藍染めには防虫や抗菌などの効能があり、タンスに端切れを入れる習慣があるそう。
「久留米絣の寝具を使うとよく眠れる」というのもこうした言い伝えのひとつで、
科学的な裏づけができれば医療分野などでの活用も期待できます。

「ほかにも僕個人の取り組みとして、和歌山のニット業者と協力して、
藍染めの糸を織り機ではなく編み機で加工する試作も行っています。
着物ベースで考えず、Tシャツやスウェット生地などに展開できれば、
若い世代も取り入れやすくなると思います」(研介さん)

着物自体を着る機会が減り、一般の人には実用性が低く、
遠い存在になってしまっているのは大きな課題といえます。

そんななか、久留米絣への興味の入り口として機能しているのが、
隣町の八女市に残る町家を活用した〈Craft Inn 手 [té]〉。
手仕事をテーマに、地域の伝統工芸を設えに取り入れた宿で、
3室ある部屋のひとつ「藍の部屋」では、久留米絣のタペストリーや座布団、
さらには藍染めした木のテーブルなど、藍染絣工房の手仕事の数々を体感できます。

「久留米絣をインテリアなど着物以外で活用する際、
何かとネックになるのが反物の幅(約36センチ)。
着物の生地ならではの規格に戸惑う海外の人も多いので、
より幅広の生地をつくって使い道を広げるようなことも、
ゆくゆくはやっていきたいと考えています。

いまはこんなふうに、いろいろな方向で試行錯誤している段階ですが、
産地を持続可能にしていくためには、
若い世代が入ってきやすいような環境をつくらなければいけません。
そのためにはまず僕たちが仕事を楽しんで、
その姿を見せていかなければいけないと思っています」(研介さん)

見学を終えて、MUFGのみなさんはさまざまな感想を抱いたようです。

「小倉さんが、最初は地元の外に目が向いていたけれど、比較するものが増えたことで
地元の良さがわかったとおっしゃっていたのが印象的でした。
私は熊本出身ですが、同じ九州の久留米絣のことを知りませんでしたし、
いまも外の世界にばかり関心が向いていたなと思いました。
地元を振り返る機会を持つことで、仕事に生かせることがあるのかもしれない、
と気づけたのは大きいです」(矢原さん)

「サステナビリティは近年主流になっている考え方ですが、
循環させるという発想は新しいものだと思っていました。
けれども藍染めは、もともと近くにある材料ですべて賄い、
使い終わった液は畑の肥料にするという話を聞いて、
循環は本来の姿だったことを知り驚きました。

私は東京出身で、夏休みなどに帰る地元がないことを寂しく感じていたのですが、
いま初任地の福岡で暮らしていて、
自分にとっての第二の故郷のような感覚が芽生えています。
普段接するお客様からも地元愛を感じますし、
この地域ならではの工房で、みなさんの地元に対する思いを感じられて、
私自身もより一層愛着が湧きました」(田中さん)

〈IKI LUCA〉の「旅する羽織り」を試着! 左から、糸川佳孝さん、田中鈴音さん、矢原寛人さん。

〈IKI LUCA〉の「旅する羽織り」を試着! 左から、糸川佳孝さん、田中鈴音さん、矢原寛人さん。

「やはり、つなぐことの大切さを実感しました。
工芸の作家さん、職人さんが蓄積されてきた技術がすばらしい半面、
それを広めることを苦手とする方が多くいらっしゃると以前から感じていました。
そこを小倉さんや我々のような企業がつないでいくことで、
工芸界にも新たな動きが生まれるのではないかとあらためて思いました。

MUFG工芸プロジェクトを通してそういった支援を引き続きやっていきたいですし、
一方で伝統を守りながら、時代に合わせてさまざまな努力や工夫をされている姿も
ぜひ発信していきたいですね」(糸川さん)

地域で磨かれてきた伝統工芸を、外の世界へつなぎ、広げていくことの大切さ。
久留米絣にさまざまなかたちで関わる人が増えていけば、
明るい未来が待っているはずです。

information

map

藍染絣工房

住所:福岡県八女郡広川町大字長延241

web:藍染絣工房 JAPAN BLUE 100

information

IKI LUCA 

web:IKI LUCA

Recommend 注目のコンテンツ

Special 関連サイト

What's New 最新記事