波佐見焼ってどんな器?
人気ブランドから立ち寄りスポットまで
「波佐見焼」をたっぷりご紹介!
「器にこだわる」というと、少し敷居が高く感じるかもしれませんが、
テイクアウトした料理を器に盛りつけ直すだけで
気分があがる、その気持ちには少なからず共感があるのではないでしょうか。
おうち時間の楽しみ方にも慣れた今、
日々の食卓を豊かに彩る器にも関心が高まっているようです。
そんななか、最近よく耳にするのが「波佐見(はさみ)焼」。
毎日のなにげない生活で、
気負わず気軽に使える器として注目を集めています。
波佐見焼とは、長崎県波佐見町近辺でつくられる焼きものの総称ですが、
実は波佐見焼と呼ばれるようになったのは、ごく最近のこと。
20年ほど前までは「有田焼」として流通されていた日用食器です。
料理映えしそう、手入れがしやすそうなど、
器を購入する基準はさまざまで、産地を知らなくても、
食事を楽しむのに支障はありません。
でも、もう少し踏み込んで知ることで、
毎日使う器選びはもっと楽しくなることでしょう。
今回は、江戸時代から庶民の器をつくり続ける焼きもの産地「波佐見」と、
波佐見焼にまつわるあれこれを紹介します。
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Index
2. 波佐見焼としての再出発
3. 時代のニーズを捉え、トレンドを取り入れた多様な波佐見焼
恐竜柄の染付や和紙染めが新鮮! 陶芸家ユニット〈studio wani〉
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日用食器の産地として400年の歴史をもつ波佐見焼
全国各地に多数の陶磁器産地がありますが、
日本初の磁器として知られ、
焼きものとしての知名度も高いのが有田焼です。
その産地である佐賀県有田町に隣接する長崎県波佐見町もまた、
有田と同様に400年の歴史をもつ窯業(ようぎょう)のまちとして栄えてきました。
江戸時代より鍋島藩の藩窯として、
献上品となる上質な磁器を制作していた有田に対し、
波佐見焼は大村藩の支援を受け庶民的な磁器を制作。
「くらわんか碗」の産地としても知られています。
「くらわんか碗」とは、江戸時代、大阪の淀川を往来する大型船の乗船客相手に、
船上で飯や酒を売る〈くらわんか舟〉で使用された
丈夫で安価な雑器のことで、普段使いの器として定着しました。

「くらわんか碗」。「くらわんか」の語源は、商売人の「くらわんか」(「食べないか」の方言)というかけ声だといわれている。

当時、長崎の出島から酒や醤油を詰めて輸出する「コンプラ瓶」をつくっていたのも波佐見。
波佐見焼としての再出発
そんな日用食器の生産を担ってきた「波佐見」の名は
表に出ることはなく、分業制という焼きもの産地の特性から、
生地屋や型屋を共有している背景もあり、
長い歴史のなかで有田焼として出荷されてきた波佐見の焼きもの。
それが、2000年頃に話題となった食品の産地偽装問題をきっかけに、
陶磁器にも正確な産地表示が求められるようになり、
波佐見町で生産した器は波佐見焼として出荷されるようになりました。
時代のニーズを捉え、トレンドを取り入れた多様な波佐見焼
最近人気の波佐見焼といえば、
カラフルでかわいい器のイメージがあるかもしれませんが、
モダンなものから伝統的な染付までバリエーションも豊富です。
時代のニーズを捉え、トレンドを取り入れながら、
手頃で良質な日用食器を提案しています。
決まった様式などはなく、
それぞれが得意な技法や個性を生かし、
さまざまなデザインを生み出して、
波佐見というやきもの産地を盛り上げているのです。
■波佐見焼を牽引する陶磁器メーカー〈マルヒロ〉

波佐見町にあるマルヒロストア。
〈波佐見焼〉という呼称を一躍有名にした立役者といえば、
波佐見焼の陶磁器メーカー〈マルヒロ〉。
中川政七商店がコンサルティングした初めてのクライアントであり、
倒産寸前だった会社をV字回復させたストーリーは、
テレビや雑誌でたびたび取り上げられています。
2010年に立ち上げたマルヒロの自社ブランド〈HASAMI〉の
デビュー作〈ブロックマグ〉がヒット商品となり、
波佐見の名が全国区へと押し上げられていきました。

マルヒロの自社ブランド〈HASAMI〉の代表作〈ブロックマグ〉(1760円)。アメリカンダイナーのカフェで使われていた大衆食器のように丈夫で実用的なデザイン。
生産工程ごとに会社が分かれる分業制で
つくられる波佐見焼産地において、
自社でデザインした商品を各工程の職人たちへ制作依頼する
「プロデューサー」兼、でき上がった商品を流通させる
「商社」の役割を担っている〈マルヒロ〉。
2021年には、波佐見焼を通してつながったアーティストとともに
私設公園〈HIROPPA〉をオープンし、
波佐見焼メーカーという枠にとどまらない成長と躍進を続けています。
information
Flagship Store
マルヒロストア
■ヒトとモノの架け橋としてまちづくりにも貢献する〈西海陶器〉
もともとは長崎県波佐見町の窯元で、
現在は肥前地区一帯の
焼きもの総合商社として活躍する〈西海(さいかい)陶器〉。
ヒトとモノの架け橋として、波佐見焼の伝統をつなぐ活動や
豊かなまちづくりにも貢献しています。
波佐見町に新たな価値を生み出した人気スポット〈西の原〉も、
西海陶器が仕掛けたプロジェクトのひとつです。
西海陶器の自社ブランド〈HASAMI PORCELAIN(ハサミポーセリン)〉は、
江戸時代から受け継がれた日用食器の伝統的な技法を
現代のコンセプトで革新するテーブルウェア。
日本のみならず、海外からの認知度も高く、
ざらりとした手触りと、装飾のないシンプルな形状、
統一化されたモジュールによる無駄のない機能性が魅力です。

海外からも人気の〈HASAMI PORCELAIN〉は、西海陶器の自社ブランド。web:HASAMI PORCELAIN
2016年には西海陶器の直営店として、
ギャラリー&ショップ〈Ô YANE〉をオープン。
陶磁器を焼く際に使う道具「さや」が積み上げられた店内は、
焼きもの産地ならではの雰囲気に包まれています。
入り口には店名の由来にもなっている「大屋根」があり、
さまざまなイベントが開催されます。
information
あの〈白山陶器〉も波佐見にある窯元のひとつ

2009年より生産を続ける〈BLOOM(ブルーム)〉は、〈白山陶器〉の定番シリーズ(〈ブルーム プレート(SS)〉1540円ほか)。
波佐見焼の名が知られるようになる前から、
磁器食器のメーカーとしてブランドを確立している〈白山陶器〉も、
波佐見町にある窯元のひとつです。
日本を代表するプロダクトデザイナー・森正洋さんが
数々のデザインを残したことでも知られ、
なかでも〈G型しょうゆさし〉は、
1958年から白山陶器の代表作として生産が続けられているロングライフデザイン。
時代に左右されることなく、
使っていて飽きのこないデザインを目指し、
「新しい定番」となりうる製品を提案し続けています。

森正洋デザインの〈G型しょうゆさし〉(〈G型しょうゆさし(小)白磁〉1650円、〈G型しょうゆさし(大)白磁〉1870円)。
information
白山陶器本社ショールーム
住所:長崎県東彼杵郡波佐見町湯無田郷1334
TEL:0956-85-3251
営業時間:10:00~17:00
定休日:木曜、第2日曜、GW、年末年始、夏季休業 ※臨時休業あり
web:白山陶器本社ショールーム
information
HAKUSAN SHOP 白山陶器東京ショールーム
住所:東京都港区南青山5-3-10フロムファーストGフロア
TEL:03-5774-8850
営業時間:11:00〜19:00
定休日:年末年始
■恐竜柄の染付や和紙染めが新鮮! 陶芸家ユニット〈studio wani〉

鉄粉の多い磁土に砂を混ぜ、わざと鉄粉が出るように仕上げた古伊万里風の染付に、恐竜柄を落とし込んだ遊び心のある〈染付 恐竜〉シリーズ(〈DINOSAUR くらわんか皿〉6600円ほか)。
〈studio wani(スタジオワニ)〉は、波佐見町で作陶する
綿島健一郎さんとミリアムさんによる陶芸家ユニット。
大量生産を得意とする波佐見焼のなかで、
機械を使わず自らろくろを引き、絵つけをし、
あえて手跡を残した作風が魅力です。
毎日の食卓がほんの少し楽しみになる、
普段使いだけど、ちょっとだけ特別な器づくりをモットーとしています。
波佐見町を舞台とした小玉ユキさんの連載漫画『青の花 器の森』(小学館)にも
取材協力するなど話題の窯元です。

和紙染めという伝統的な技法を用い、ティラノサウルスやトリケラトプスなどの恐竜がカラフルに絵付けされた子ども用食器のシリーズ。〈染付 恐竜〉とはまた異なる、独特の柔らかさ、温かみのある仕上がりに(〈こども用食器 ご飯茶碗 小〉3300円ほか)。

長崎県波佐見町にある〈studio wani(スタジオワニ)〉のギャラリー(見学は予約制)。
information
studio wani
波佐見町内一の品揃えを誇る〈くらわん館〉
同じ波佐見町でつくられている焼きものでも、
さまざまな作風があることを感じていただけたのではないでしょうか?
近年、波佐見町では「カジュアルリッチ」をコンセプトに掲げ、
波佐見焼の振興が推進されており、
波佐見町やきもの公園内にある〈くらわん館〉で、
さまざまな窯元や商社の商品を見ることができます。

波佐見町を訪れたら、まずは〈くらわん館〉で気になる窯元を見つけるのもおすすめ。
〈くらわん館〉で見つけた人気の波佐見焼
■Shabby chic style/和山窯

Shabby chic style/和山窯(〈和山 Shabby chic style ボウルS〉1100円ほか)。
毎日の食卓を楽しみ、食事がよりおいしくなるような
器づくりを目指す〈和山窯〉のシャビーシックスタイルシリーズ。
グレー系のくすみカラーが人気です。
information
■色染め流し/一真窯

色染め流し/一真窯(〈色染め流し 13.5cm スクエア皿〉1760円ほか)。
30種類以上の特殊な道具「カンナ」を使い分け、
さまざまな模様を生み出す手彫りを得意とする
〈一真窯〉の色染め流しシリーズ。
彫り模様が色釉の繊細なグラデーションを際立たせています。
information
■蒼鎬/利左エ門窯

蒼鎬/利左エ門窯(〈蒼鎬 フルーツ皿〉2420円ほか)
磁器が主流の波佐見焼のなかで、土の持つ味わいを大切に、
陶器でデザインを展開する〈利左エ門窯(りざえもん)〉の蒼鎬(あおしのぎ)シリーズ。
黒い生地に伝統的な「しのぎ」の技法で削りの装飾を施し
長崎の海をイメージした青い釉薬で仕上げています。
information
やきもの祭りで波佐見焼産地をめぐる
最近はネットショップを運営する窯元も増えましたが、
もっとディープに知るなら産地巡りがおすすめ。
波佐見町では年間を通して、陶器市など器に関するさまざまなイベントが開催されており、
掘り出し物を見つける楽しみはもちろん、
普段は見ることのできないものづくり現場など、
焼きもの産地ならではの空気感を味わうことができるでしょう。
■4月/〈中尾山 桜陶祭〉
陶郷中尾山で、毎年4月の第1土・日曜日に開催される〈桜陶祭(おうとうさい)〉。
中尾山一帯にある約20の窯元が一般公開されるので、
花見を楽しみながら工房を巡り、焼きものも購入できる春のイベントです。
information
中尾山 桜陶祭
■4〜5月/波佐見陶器まつり
波佐見町やきもの公園をメイン会場に、
約130の窯元や商社が出店する一大イベント。
毎年ゴールデンウィークに開催され、
観光客や波佐見焼ファン30万人が訪れ賑わいをみせます。
information
■10月/中尾山 秋陶めぐり
春の〈桜陶祭〉に続き、中尾山一帯で10月下旬に開催される〈秋陶めぐり〉。
初秋の中尾山を散策しながら
普段は開放されていない窯元見学や、
お菓子・軽食などのふるまいを楽しめます。
information
中尾山 秋陶めぐり
住所:長崎県東彼杵郡波佐見町中尾郷157(中尾山交流館)
TEL:0956-85-2273(中尾山交流館)
開催期間:毎年10月下旬
開催時間:9:00~17:00
■12月/波佐見皿山器替えまつり
波佐見町皿山郷一帯で12月初旬に開催される器替(きかえ)まつり。
自宅で使わなくなったり、欠けてしまった器を持っていくと、
参加店で好きな器を5割引きで購入可能。
持参した器はリサイクルされ、
さまざまな用途で新たに生まれ変わるエコなイベントです。
information
波佐見皿山器替えまつり
波佐見町に新たな価値を生み出した人気スポット〈西の原〉
江戸時代創業の窯元が2001年に廃業したのを機に、
2000坪もある広大な製陶所跡地をリノベーションした〈西の原〉は、
波佐見町屈指の人気スポットです。
移住者や地元の若者たちによって、
製陶所の面影を残しつつ生み出されたカフェやギャラリーは
次第に話題を集め、波佐見町が生まれ変わる先駆けとなりました。
今では多くの観光客で賑わいをみせる波佐見町の中心地となっています。
なかでも絵付け場だった〈HANAわくすい〉、
出荷場だった〈モンネ・ルギ・ムック〉、
ろくろ場だった〈モンネ・ポルト〉は、
国の有形文化財と長崎県のまちづくり景観資産にも登録されており、
古さと新しさが融合した趣のある空間で来訪者を魅了しています。
■HANAわくすい
製陶所の絵付け場跡を活かした衣食住に関する生活道具のお店。
「ずっとつかえるもの」をコンセプトに、
日々の生活に寄り添い、つくり手の顔が見え、
商品の背景にストーリーがあるものを取り扱っています。
information
■monné legui mooks(モンネ・ルギ・ムック)
かつて出荷場だった建物をリノベーションしたカフェレストラン。
素材にこだわり、ゼロから仕込んだ日替わりの料理と
デザートのもてなしは、西の原散策の途中に立ち寄りたい人気のスポットです。
information
monné legui mooks
モンネ・ルギ・ムック
■monné porte(モンネポルト)
ろくろ場として長年活躍してきた建物に少しだけ手を加え、
2006年にオープンしたオルタナティブ・スペース&ショップ。
画材・文具・雑貨の販売のほか、多目的なイベントが開催されています。
information
monné porte
モンネポルト
■南創庫
古い製陶工場の出荷事務所として使用されていた
〈南創庫〉を改装したショップには、
〈HASAMI PORCELAIN〉のほか西海陶器の商品が並びます。
ココでしか買えない!やきもの産地ならではのレアなお土産
■コンプラ瓶をモチーフにしたおみくじとお守り
波佐見焼でできたお守りを授与してもらえるのは、
波佐見町金屋郷の〈金屋神社〉。
波佐見の歴史を物語るコンプラ瓶をモチーフに、
波佐見町の地域おこし協力隊の発案で制作されました。
第1弾企画のお守りに続き、
第2弾ではミニチュアサイズのコンプラ瓶に入ったおみくじも登場。
波佐見町を訪れたら、知る人ぞ知る〈金屋神社〉まで足を伸ばしてみては?
information
金屋神社
住所:長崎県東彼杵郡波佐見町金屋郷2493
TEL:0956-85-6728
■地域内循環にこだわった〈波佐見陶箱クッキー〉

食べ終わったあとも小物入れとして使える陶箱入りのクッキー。陶箱の柄は販売時期によりバリエーションがあるので、集める楽しみも。
波佐見町観光協会が運営する〈波佐見陶箱クッキー〉(3520円)の販売も見逃せません。
波佐見焼をつくるときの石膏型をリサイクルし、
土壌改良剤として使用した田んぼで生産した米粉のクッキーを、
波佐見焼の陶箱に詰めて商品化しました。
地域内循環する素材へのこだわりがぎっしり詰まった7種のクッキーが、
季節ごとに変わるカラフルな波佐見焼の陶箱に入った〈波佐見陶箱クッキー〉は、
毎週土曜日午前9時より専用サイト「HASAMI COOKIES STORE」と
波佐見町観光協会窓口で販売されています。
information
HASAMI COOKIES STORE
波佐見陶箱クッキー
器との思いがけない出合いが待っている
日用食器の一大産地として、
全国的にも高いシェアを誇る波佐見の器。
手に取った器がどんなところで、どのようにつくられているのか。
そうした背景を知ることも器の楽しみ方のひとつです。
お気に入りの器の産地に目を向けてみたら、
思いがけないワクワクに出会えるかもしれません。

























