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posted:2025.2.25 from:青森県八戸市 genre:食・グルメ
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writer profile
Chihiro Kurimoto
栗本千尋
くりもと・ちひろ●青森県八戸市出身。旅行会社勤務→編集プロダクション→映像会社のOLを経て2011年よりフリーライターに。主な執筆媒体はマガジンハウス『BRUTUS』『CasaBRUTUS』『Hanako』など。2020年にUターンしました。Twitter
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撮影:蜂屋雄士 取材協力:一般財団法人 VISITはちのへ
青森県南東部に位置し、太平洋に面する八戸市は、海産物の宝庫。
ここ八戸で毎年2〜3月の恒例になっているのが、
魚介類をスープで味わう「八戸ブイヤベースフェスタ」です。
写真提供:八戸ハマリレーションプロジェクト
ブイヤベースとは、南フランス発祥の郷土料理。
地元産の魚貝類を、トマトやハーブとともに煮込んでつくります。
今年の「八戸ブイヤベースフェスタ」には過去最多タイの16店舗が参加し、
それぞれがこだわりのブイヤベースを提供しています。
八戸ブイヤベースフェスタにはルールが設けられており、以下の2点。
参加店の〈フレンチ食堂 Saison(セゾン)〉のブイヤベース。(写真提供:八戸ハマリレーションプロジェクト)
(1)八戸産の魚介類をふんだんに使うこと。
ブイヤベースには、地元八戸港に水揚げされる魚介類を4種類以上使うのが条件。
また、一緒に煮込む野菜やハーブなどもできるだけ地元産を使います。
(2)「2度おいしい」こと。
まずはスープ料理として具材をそのまま味わうひと皿を。
その後、スープを生かしたオリジナルの“〆のひと皿”を味わいます。
各店ごとに異なる、「ひと皿で2度おいしい」が提供されます。
地元のファンの間では、期間中にいくつかの店舗を巡るのも恒例になっている
『八戸ブイヤベースフェスタ』ですが、コロカルでは、
それとはまた別の角度からさらに楽しむためのコツを提案したいと思います。
それは、ずばり! 早起きして魚市場を見学することです。
八戸市の魚市場は、鮫地区にある「第一魚市場」、
江陽地区にある「第二魚市場」、白銀地区にある「第三魚市場」の3つがあり、
それぞれ漁業の種類や取り扱いの魚種、販売方法などが異なります。
「第一魚市場」で扱うのは、まき網漁業による
生鮮のサバやスルメイカ、イナダ、イワシなど。
「第二魚市場」は底引き網や定置網、沿岸小型漁業、陸送による生の魚で、
タラやカレイ、ヒラメ、マグロ、ウニ、ホヤ、貝類など。
「第三魚市場」は冷凍イカをメインに扱っています。
各魚市場は漁業関連の業者しか入れないと思われがちですが、
実は一般の人でも見学することができるんです。
市のホームページにある「休開場カレンダー」で日程を確認し、
見学申込書をダウンロード、記入したら、
見学希望日の7日前までにFAXかメールで申し込めばOK。
事前にガイドをお願いしておけば、説明を聞きながら見学することもできますよ。
また、見学者も長靴と帽子の着用が義務づけられているのですが、
申請の際に希望しておけば、長靴を当日借りることもできます。
3つある魚市場のなかでもおすすめなのは、
多様な魚種が集まる「第二魚市場」。
以前は屋根と柱だけの開放型の魚市場でしたが、
2021年に改築され、屋根と壁に囲まれた閉鎖型の魚市場になったため、屋内でセリが行われ、
雨風(雪)をしのぐことができるのもポイントです。
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ということで、朝7時(一部は6時30分)から開始するセリを見学するため、
早起きして八戸市第二魚市場へやってきました!
閉鎖型の屋内市場ではあるものの、冬場なのでピリつく寒さに包まれています。
ひと通りの説明を受けたあと、手を洗って長靴の靴底をキレイに除菌したら、いざ場内へ!
取材当日は水揚げが少ないということでしたが、
最盛期はセリ場の奥までずらーっと魚が並ぶんだとか。
すでに仲買業者の方たちは集まってきて魚を見定めているようでした。
目利きをしてどれを競り落とすのか、目星をつけてからセリに参加するのだそうです。
この日は水揚げされたばかりのマダラ、タコ、アンコウ、カレイなどの鮮魚が並んだほか、
ほかの港から陸送されてきた、マグロやナマコ、牡蠣などもありました。
そうこうしているうちに、カランカランと鈴の音が鳴り、セリがスタート!
リズムよくかけ合う声が、場内に鳴り響きます。
最初はなんと言っているのかよくわからなかったのですが、
「せら」というワードが飛び交っています。
昔からの言い方だという「せら」は「千両」のことで、
「1000円」を表しているのだそう。
競り落とすためには、ほかの人から声が出なくなるまで値を上げ続ける必要があります。
もうひとつ注目したいのが、みなさんがかぶっている帽子の色。
実は、それぞれ役割に応じた色の帽子をかぶっているのです。
青色の帽子に黄色い札がついているのが仲買業者で、白い札は仲買業者の代表者(社長など)。
黄色い帽子は、漁師さんから魚を預かりセリを行う卸売業者。
よく見ていると、最初の値づけの声を発しているのは
黄色い帽子をかぶっている人だとわかります。
活気のある魚市場を見学して、新鮮な海産物を目にすると、
「こういう食材を使ってブイヤベースがつくられるんだな」とイメージしやすくなり、
ブイヤベースを食べるのがますます楽しみになるはずです。
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それでは八戸ブイヤベースを実際に食べられるお店へ。
参加店のひとつである〈cuisine française Yui
(キュイジーヌ フランセーズ ユイ)〉は、
地産地消のフレンチコースを提供する、完全予約制の一軒家レストラン。
2011年に中心街の番町で開業しましたが、2020年に現在の田向へ移転しました。
店名の「Yui」は、農業での助け合いを表す“結の思想”に由来しています。
こちらでは、ランチとディナーどちらでもブイヤベースを楽しめますが、
今回はランチでお邪魔しました。
まずは、8品ほどの前菜盛り合わせが登場。
定番はパテ ド カンパーニュや、キッシュ、ムースなど。
他は旬の食材を使っているため、日によって替わるそう。
どれもふた口くらいで食べられるサイズなのですが、
調理方法や食感の違う料理を、ひと口食べてまた戻って……を楽しめます。
色とりどりの目にもおいしい前菜を食べてすでに大満足なのですが、
続いてブイヤベースが登場します。
琥珀色の澄んだスープに、この日はタラやソイ、ホッキ貝、
ジャガイモなどの具材が入っていました。
添えられているのは、ニンニクを3回茹でこぼしてペーストにし、
卵黄とパプリカパウダーを合わせたソース。
途中でこのソースを入れると味の変化を楽しめます。
オーナーシェフの根市拓実さんは、ブイヤベースへのこだわりについて、こう話します。
「ブイヤベースの語源は、『火をつける』『消す』という
動詞をつなげたものなので、今回は食材を『焼く』工程は入れていません。
シンプルなスープほどごまかしがきかないので、とても手をかけています。
すべての具材を一緒に煮込むのではなく、ブイヤベースのブイヨンと一緒に真空調理して
味をしみさせるなど、それぞれの具材を最適に調理したうえで、最後に合わせています。
今日のスープは、バキバキに立つほど新鮮な朝獲れのニシンが手に入ったので、
ニシンをベースにコクを出し、タラやソイ、ホッキ貝などを合わせてダシをとりました」
ひと皿目が食べ終わり、うまみの余韻を感じていると、続いてふた皿目が。
そう、「ひと皿で2度おいしい」が八戸ブイヤベースのテーマなのです。
ベースのスープは一緒ですが、そこにトマトを足すことで濃厚な印象に。
クスクスを混ぜ合わせながらいただきます。
「魚は生で食べてもおいしいのですが、
火を入れてより味わい深くなるのは、豊富な魚介あってこそ。
八戸のタラやニシンはとてもおいしいので、もっと知ってもらいたい」
と、根市さんは話します。
ランチでは、前菜盛り合わせとブイヤベースで3500円、デザートつきで4000円。
ディナーコースは、アミューズと前菜2皿、ブイヤベース、デザートで5500円です。
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八戸ブイヤベースフェスタに参加しているお店は、全16店舗。
注目のお店をいくつかご紹介します。
まずは、今年初参加の〈ビストロ エトッフ〉。
3800円(前菜・ブイヤベース・パン・コーヒー)。(以下すべて、写真提供:八戸ハマリレーションプロジェクト)
白身魚のダシをベースに、香味野菜やハーブを合わせ、
仕上げにリキュールをきかせたスープは、クリアで上品。
ふた皿目は「南郷産そば粉のガレット サラダ仕立て」。
なんと、ブイヤベース風味のガレットです。
オーナーシェフ・井上健吾さんの父が育てたという
新鮮な葉野菜と、特製ドレッシングでさっぱりと味わえます。
八戸ブイヤベースの提供は土曜日のランチのみで、要予約です。
information
ビストロ エトッフ
住所:青森県八戸市鷹匠小路1
TEL:0178-38-8922
営業時間:11:30〜13:15L.O.、18:00〜21:15L.O. ※八戸ブイヤベースランチは12:30L.O.
定休日:月曜、ほか不定休あり
Web:Instagram(@bistro_etoffe)
八戸ブイヤベースフェスタ常連のポルトガル料理専門店
〈RESTAURANTE & BAR SAÚDE(レスタウランテ&バール サウーヂ)〉は、
ポルトガル鍋を使い、名物料理カタプラーナを提供。
ディナー6600円(前菜・ブイヤベース・デザート・食後のドリンク)。
〆には、鍋に残った魚介の旨みたっぷりのスープに
ご飯を入れて魚介のおじやを提供します。
こちらも要予約。
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2024年1月に移転した〈SAWAUCHI〉では、
青森県産のトゲクリガニと魚のアラを焼いてつくる濃厚なスープに、
陸奥湊の朝市から仕入れた新鮮な魚介を合わせて煮込んだブイヤベースを提供。
ランチ4000円(前菜・サラダ・ブイヤベース・コーヒー)、単品3800円。ディナーは完全予約制で、8800円と11000円の2コースあり。
ブイヤベースと同時に提供されるのは「スパイシーラスク」。
途中でスープに投入すれば、スパイシーに変化します。
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2023年から参加している〈スペインバル リベル〉は、
カウンターのみの立ち飲みスペインバル。
こちらでは予約なしでもブイヤベースを提供します。
単品1400円。
スープ料理としてではなく、ピンチョススタイルで再構築した
自由な発想のブイヤベースです。
八戸産の4種の魚介をすり身にし、串焼きにしました。
2品目はなんと「たこ焼き」。
魚介や肉のダシを使った、スペイン・カナリア諸島の
粉物料理「ゴフィオ」から着想を得たといいます。
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スペインバル リベル
住所:青森県八戸市六日町37 オラクルセンター1F
TEL:0178-79-6891
営業時間:17:00〜24:00、日曜15:00〜24:00
定休日:月・火曜
Web:Instagram(@spanishbarliber)
各店舗では、ブイヤベースと合うワインなどのドリンクとの
ペアリングも提案しています。
ぜひ合わせて注文を。
八戸ブイヤベースフェスタは、3月31日まで。
早起きして魚市場を見学し、それぞれ個性的なブイヤベースを楽しんでください!
information
八戸ブイヤベースフェスタ
会期:〜3月31日
Web:公式ページ
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