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posted:2024.10.11 from:岐阜県関市 genre:ものづくり
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writer profile
Naomi Kuroda
黒田 直美
くろだ・なおみ●愛知県生まれ。東京で長年、編集ライターの仕事をしていたが、親の介護を機に愛知県へUターン。現在は東海圏を中心とした伝統工芸や食文化など、地方ならではの取り組みを取材している。食べること、つくることが好きで、現在は陶芸にもはまっている。
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写真提供:関市観光協会/関市役所
岐阜県関市では、毎年10月第2週の土日に〈関市刃物まつり〉が開催されます。
市内の刃物メーカーや卸売業者が出店し、包丁やハサミ、爪切り、ナイフなど、
関市が誇る高品質な刃物製品をリーズナブルに購入できるとあって、
毎年国内外問わず、多くの人が来訪する関市の一大イベントとなっています。
また、“刃物のまち”ならではのイベントも盛りだくさん。
なかでも必見なのは、刀匠による「古式日本刀鍛錬実演」や、
「居合切り」といった伝統と歴史に裏づけされた関市ならではの行事です。
700年以上の日本刀の歴史を持つ関市。
この地域を流れる長良川と津保川の良質な水と土、
炉に使う松炭が豊富だったことから、
古くは、鎌倉時代に刀鍛冶の「元重」と「金重」が
移り住んだことにより始まります。
このふたりは、“関鍛冶の刀祖”と呼ばれ、関の刀は
「折れず、曲がらず、よく切れる」と有名になりました。
その後、理想的な日本刀をつくれる材料があるという噂が広まり、
各地から刀鍛冶が集まるようになり、室町時代にはその数が
300人を越えるまでになったのだとか。
現代でも包丁として有名な「関の孫六」は、まさにこの時代に誕生したもので、
独特な鍛刀法でつくられた頑丈な刀には、〈三本杉〉の刀文が施されています。
この技術と精神が受け継がれた関市は「世界三大刃物産地」となり、
その名は海外にも知られるまでになりました。
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アウトドア人気もあり、今や海外コレクターも注目する「アウトドアズナイフ」。
多様な用途に加え、おしゃれなデザインなどが受け、
ポケットナイフ市場は成長し続けています。
このポケットナイフ、大正時代にはすでに関でつくっており、
それを海外に輸出するなど、品質の良さが人気を呼びました。
日本人の細やかで繊細なものづくりは、刃物の技術にも生かされているのです。
現在は、アラン・デュカスなど、ミシュランを取る有名シェフたちも
愛用しているほどの人気ブランドとなっています。
関の刃物は、高品質で切れ味にもすぐれ、デザイン性のある美しい包丁として、
海外での認知度も高まっています。
〈関市刃物まつり〉では、包丁をはじめ、爪切りやハサミなどのユニークなデザインや
カラフルでおしゃれなもの、アイデアあふれる新商品まで楽しめます。
また、プロの職人が研ぎ直しをしてくれる「包丁研ぎコーナー」は
大人気となっているのだとか。さらに、自慢の刀剣を研ぎ直したい方や、
刀剣を購入したいというかたは、「刀剣なんでも相談コーナー」も。
近隣にある関の刀鍛冶の歴史を伝える関鍛冶伝承館では、
〈現代新作刀剣展〉を開催し、時代を越えて魅力を放つ刀剣の美しさも堪能できます。
この〈関市刃物まつり〉では、全国のナイフメーカーが展示・販売する
〈関アウトドアズナイフショー〉も同時に開催されます。
国外のメーカーが出展し、ここでしか買えない
限定ナイフや特別価格のナイフも販売されます。
関市は、人口約9万人の小さな地方都市ですが、
世界の人々を魅了する刀剣や刃物が今も息づくまち。
2021年には、関市の新たな観光スポットとして
刃物の販売のほか、クラフト体験やなどもできる
複合施設〈せきてらす〉をオープン。
文化産業である「刃物」と「ヒト」との出会いを楽しむ場所を
目指しているのだとか。
関市の長い伝統に裏打ちされた〈関市刃物まつり〉と合わせて、
ぜひ一度行ってみてはいかがでしょうか。
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