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posted:2024.3.26 from:福岡県福岡市 genre:活性化と創生
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Aya Kinoshita
木下 綾
きのした・あや●福岡生まれ・福岡在住。フリーライター/ウェブデザイナー。2015年より大牟田市動物園を勝手に応援するフリーペーパー「KEMONOTE(ケモノート)」を制作。趣味はアウトドア、日記。カレーとコーヒーが好き。
たくさんの車が行き交う高宮通り沿い。
平尾1丁目の交差点近くに静かに佇むビルの2階にあるのは、
昨年6月にオープンした書店〈本灯社〉。
明るく陽がさす空間に、個性ゆたかな本たちが、にぎにぎしく並んでいます。
2022年、福岡で人気の生活雑貨店
〈ごはんとおやつ、雑貨の店 くらすこと〉の雑貨販売スペースが
フロアを移転することになり、空いた場所をいかに活用するか、
というタイミングで浮上したのが「書店をつくる」構想でした。
〈くらすこと〉はもともと、「わたし自身のものさしをみつける」をテーマに、
思いを共有する場所として生まれました。
本屋を開くことも、その活動のひとつとしてごく自然な流れだったと、
〈本灯社〉立ち上げから関わるスタッフの山川さんはいいます。
〈本灯社〉の書棚は、「誰かの書斎」をイメージしてつくられているとのこと。
それゆえに、ここでは本の顔や背を眺めているだけで、ワクワクしてしまうのかもしれません。
店内の本たちは、「こころ・からだ」「自然・目に見えない世界」
「生き方・考え方」「子ども・家族」「暮らし」「文学」「絵本」という、
〈本灯社〉独自のテーマに添って、並べられています。
「各テーマ何冊ずつ、などはあまり考えずに、私たちスタッフが本当に
いいなと思ったものを選んでいるので、選書に偏りがあるんです。
でも『誰かの書斎』だから、それでいいのかなって」。
と笑うのは、山川さんとともに〈本灯社〉を支えるスタッフの見月さん。
また、山川さんは選書について、このように話を続けます。
「喜びも悩みも、自分たちにとって切実なものは、他の人たちにとっても
そうなんじゃないかと思っていて。だから、自分たちの等身大で、
いち生活者としての悩みや関心ごとに添ったものを選ぶようにしています」
見月さんは、朝のお掃除のときに「起きてー。みんな、がんばってー」と
本たちに声をかけているのだと教えてくれました。
本が1冊売れるたびに、心の中で大喜びしている、というお話も、
スタッフがそれぞれの本に「届けたい」という思いをこめているからこそ。
とはいえ、この〈本灯社〉は、本を売るためだけに存在している場所ではないと、山川さんと見月さんはいうのです。
書店がオープンしてから、ご夫婦や男性ひとりで来店される方が増え、
より幅広い年齢層のお客さんに来てもらえるようになったことは、うれしい変化でした。
年配の方から、お孫さんに絵本をプレゼントしたい、と相談を受けたり、
カフェでお茶をしたあと、本棚を眺めている方を見かけたりすることも、
書店を営むなかでの大きな喜びなのだそう。
「ここに来たら、誰もがいろんなしがらみを一旦おろして、自分自身と対話できる、そんな場所になれたらいいなって。お仕事が終わって、お子さんを迎えに行くまでの30分だけ、ちょっと見に来てくださるとかでもいい。
気になる本を見つけてもらえたら、それが1番ですけど、見つからなくても
ふらっと立ち寄ってみる、みたいな。そんな本屋の使い方をしてもらえたらうれしいです」
そういう山川さんと、見月さんが、たがいに顔を見合わせ
「来てくれたお客さんたち、みんなに元気になってほしいよね」
と話していたのが印象的でした。
「1冊の本が宿す灯りを、読者の手元まで絶やさずに届けたい。
ひとつひとつ色もかたちも異なる本の灯りがひしめくような
本屋でありたい」
そう、〈本灯社〉という名前の由来にあるように。
さまざまな思いを抱えて、「いま」を生きる人たちの足もとを、本の灯りでやさしく照らす。
ここを訪れる人にとって、〈本灯社〉はきっとそんな場所になっているにちがいありません。
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