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writer profile
Riho Nakamori
中森りほ
なかもり・りほ●東京生まれ東京在住のフリーライター/編集者。仕事やプライベートで月に1回以上、地方や海外へ。各地のおいしい食べ物やお酒、素敵なホテルや旅館を発掘するのが趣味。好きな番組は『ブラタモリ』『六角精児の呑み鉄本線・日本旅』。
千葉県木更津市、約9万坪(30ha)の広大な敷地で「農」「食」
そして「自然」の循環を体験できるサステナブルファーム&パークの
〈KURKKU FIELDS(クルックフィールズ)〉。
「育てる・作る・食べる・循環する」といった“人が本質的に生きる心地よさと喜び”を
感じる場所を目指し、広大な土地を10年前からゆっくりとすこしずつ育てています。
2022年秋には宿泊施設“創る暮らしを体感するvilla”〈cocoon(コクーン)〉がオープン。
そして2023年2月16日(木)、〈KURKKU FIELDS〉に、
〈NAP建築設計事務所〉の中村拓志氏の設計による
新たな施設〈地中図書館〉がオープンしました。
地中図書館はその名のとおり土の下に、ひっそりと隠されたように存在します。
晴れた日には畑を耕し、雨の日には読書をする。
地中図書館はそんな人のために構想されています。
すり鉢状の特徴的な形をした土地の中腹にあって、大地にそびえ立つのではなく、
洞窟のように地中に横たわる空間です。
訪れた人はKURKKU FIELDSをさまようなかで、突如入り口を見つけて
大地の中へと潜り込み、思いがけない空間と本に出合うことになります。
オープン時は約3000冊を収容し、自然や農的な暮らしに関するものを中心に詩、
哲学、歴史、宗教、科学や経済にも独自の広がりやつながりが感じられる選書です。
本棚の間を抜けると天井から自然の光が差し込むホールが現れます。
〈cocoon〉、〈TINY HOUSE VILLAGE〉の宿泊者は閉館後の17時以降も、
優しい明かりがこぼれる幻想的な〈地中図書館〉で夜の特別な時間を過ごせます。
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平坦で乾いた敷地は、建設残土で埋め立てられた谷の上にありました。
中村氏はここを緑豊かな谷地に戻すこと、そして建築は作土層を占有するのではなく
植物と土中微生物達の繁栄のもとに慎ましく存在すべきだと考えました。
谷筋の小さな割け目の奥にヴォイド(意識的につくられた構造物がない空間)を
設けることで、耕す人の休息にふさわしい、
やすらかな居場所をつくることを目指したといいます。
大地の下は洞窟のような空間で、本棚が取り囲んでいます。
梁や柱といった建築的要素を排し、外周部の土留め壁と袖壁から
RCボイドスラブを片持ちで跳ねだしています。
内部の天井高は大地の傾斜に応じて決まるため、子どもの背の高さに合った
天井の低い場所や、袖壁の間に小さな隠れ部屋が生まれました。
床と壁、天井は土仕上げでなめらかにつながり、スラブ小口の鉛直面まで植え込まれた
芝がモサモサと下垂し、空間に湿り気を与えています。
これは灌水と保水のバランスを、季節によって調整できる機能性も兼ね備えたもの。
最深部には、読み聞かせのためのホールがあり、
ここは、未来のために育む場をイメージしたそう。
中村氏いわく、「芝の大地を大きく孕ませた子宮的空間」には、
階段状の席を本棚の襞が取り囲み、
農園で働く人たちの蔵書や子どものための本が並びます。
本棚の40ミリメートルの縦桟は、そのまま頭上に伸びて空間を支えています。
KURKKU FIELDSの農村的共同体を象徴する架構中央のトップライトには、
青い空と雲に包まれた地球のような像が光を放っています。
まさに大地と人間の叡智に包まれながら、地球を想う図書館です。
土の中の微生物を栄養にして植物や野菜が成長をするように、人々が地中に潜り込んで
本を読み、知を蓄え、想像する力を養い、
再び大地を踏み締め未来へと進む地中図書館での体験。
自然の叡智を学びながら想像力豊かに未来へと歩みを進める
人々の支えになるような場所へとすくすくと育っていきそうです。
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地中図書館
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