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writer profile
Hazuki Nagamine
長嶺葉月
ながみね・はづき●東京都出身。ファッションやライフスタイルを切り口とした著名人へのインタビューで女性ファッション誌、WEBメディアなどを中心に活動中。
credit
撮影:小林真梨子
2020年春の羽田空港 蔦屋書店のオープンに合わせ、
空港という特別な場所のために生まれたアンソロジー『Perch』。
空港、そして旅をテーマに又吉直樹さんによって書き下ろされた、
短編、エッセイ、連作掌編、自由律俳句など
色とりどりの作品を全128ページにわたって収録している。
新型コロナウイルスの影響で発売の延期を余儀なくされたものの、
9月26日より「羽田空港 蔦屋書店」オンラインショップと
「TSUTAYA BOOKSTORE福岡空港」にて部数限定で販売中だ。
羽田空港 蔦屋書店の店頭には、『Perch』オリジナルスタンプを設置。
空港を訪れた日付を好きなページに押印できるサービスを展開する。
旅に特別な体験を添える――。そのアイデアは又吉さんの旅の思い出にも重なる。
「パリに行ったとき、〈シェイクスピア・アンド・カンパニー〉という本屋さんで、
めちゃくちゃカッコいい本と出合ったんですね。
ここで本を買うと、お店のスタンプを押してくれて、
それがいい記念になったんです。
『Perch』を通してあの体験を共有できたらいいなと思って」と又吉さん。
また表紙のカラーは5パターンあり、それぞれに特製しおりが付属。
実際に手に取ると、こだわりがつまった装丁に目を奪われるはず。
エンボス加工が施された表紙に指を滑らせてみたり、
ページをめくる度に紙の手触りを楽しむことも。
手のひらに落ち着くサイズ感も含めて、持っているだけで心が踊る。
どの色を選ぶのか? スタンプをどこに押すのか?
あえて押さないという選択肢も含めて、
手に取る喜びと楽しむ余白を残してくれている。
「手に取ってもらった時点で、ある意味完成なんだと思います。
内容がおもしろいとか、つまらないというより
ただ持っているだけでいい。そんなあり方が理想です」
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又吉さんが制作中にイメージしていたのは、ごく当たり前にある旅のシーンだったそう。
「ベッドサイドに置いてあったらいいなとか、
読んでないけどかばんに入ったまんまとか、
そんなときにしっくりくるものをイメージしてつくっていきました。
気がつけば、ごちゃまぜ感でいっぱいになってしまったけれど」としみじみ。
そのごちゃまぜ感こそが、旅に本は欠かせないという又吉さんの寄り添い方。
「ちょっとだけ読んで寝たい日もありますよね。
僕自身の経験なんですが、旅先に長編小説ばっかりを持っていってしまって、
『この状況で、なんでエッセイがないねん!』
『今、詩集があったなら……』と後悔したことがあるからこそ
さまざまな様式の作品を一冊の中に書き下ろしました」
聞いてみると、執筆期間は約1か月ほどだったそう。
次々と生み出された作品は、緻密に練られたものというよりは
思い立って一気に書き下ろしたものばかり。
「Parchは今まで出した小説とはまったく違う流れのもの。
自由さでいうとコントに近い感覚です。いい意味で適当といいますか」
面白そうだと思ったものを、とりあえずやってみる。
誰かの目線や言葉、売上といった数字にとらわれることなく、
『Perch』はとてもピュアに生み出された。
「僕としては、今後こういうものを書いていきたいという意思表示でもある。
新たな場所のひとつとして楽しんでもらいたいです」
information
『Perch』
発売日:2020年9月26日(日)
販売価格:1000円(税込)
発行:羽田空港 蔦屋書店
判型:四六判変形(110×160mm)
ページ数:128p
装幀:鶯(緑)、桃(ピンク)、白茶(ベージュ)、濃クリーム(黄)、空(ブルー)の5色展開
販売店舗:羽田空港 蔦屋書店オンラインショップ
※店舗は現在休業中。ECサイトのみ営業。
https://store.tsite.jp/haneda-airport/news/magazine/15872-1627410911.html
TSUTAYA BOOKSTORE福岡空港
住所:福岡県福岡市博多区下臼井767-1 福岡空港国内線ターミナルビル3F
TEL:092-627-1611
営業時間:朝6:30~21:30(当面の間朝7:00~20:00) 不定休
information
又吉直樹
またよし・なおき/1980年6月2日生まれ。大阪府出身。2003年にNSC同期の綾部祐二とお笑いコンビ「ピース」を結成。芸人活動と並行して文筆活動も行い、2015年に本格的な小説デビュー作『火花』で第153回芥川賞を受賞。2017年に2作目となる『劇場』、2019年に3作目『人間』を発表した。
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