colocal コロカル マガジンハウス Local Network Magazine

連載の一覧 記事の検索・都道府県ごとの一覧

連載

勝山 Part1
このまちと家と、
染織作家・加納容子さんのこと

山崎亮 ローカルデザイン・スタディ
vol.006

posted:2012.3.7  from:岡山県真庭市勝山  genre:活性化と創生

〈 この連載・企画は… 〉  コミュニティデザイナー・山崎亮が地方の暮らしを豊かにする「場」と「ひと」を訪ね、
ローカルデザインのリアルを考えます。

writer's profile

Maki Takahashi
高橋マキ

たかはし・まき●京都在住。書店に並ぶあらゆる雑誌で京都特集記事の執筆、時にコーディネイトやスタイリングを担当。古い町家でむかしながらの日本および京都の暮らしを実践しつつ、「まちを編集する」という観点から、まちとひとをゆるやかに安心につなぐことをライフワークにしている。NPO法人京都カラスマ大学学長。著書に『ミソジの京都』『読んで歩く「とっておき」京都』。
http://makitakahashi.seesaa.net/

credit

撮影:内藤貞保

ここから4回にわたり、旧城下町・勝山に暮らす
染織作家の加納容子さんと山崎さんとの対談をお届けします。

「築250年の生家がわたしを待っていた」

山崎

こんにちは!
ここのところ雪が多くて、今日もお天気心配していたんですけど、
見事に晴れましたね。

加納

ええ。山間地だからよく心配されるんですけれど、
このあたりはとても気候がいいんですよ。

山崎

つい、散歩したくなりますね。

加納

そうでしょう。あとで、一緒に歩いてみましょう。

山崎

そもそもこの勝山にはどんな歴史があるんですか?

加納

かつては、日本海と瀬戸内を結ぶ旧出雲街道の要となるまちで、
家並みに沿って流れる旭川では、高瀬舟による交易も盛んだったそうです。
祖父の代には、ロシアから手風琴、ドイツからネジ回し、中国から金継ぎと、
いろいろな行商がやってきたと聞いています。

山崎

それに、勝山城の城下町という一面も持っていますよね。
お城は、もうないんでしたっけ?

加納

はい。お城そのものはもう残っていませんね。

山崎

で、加納さんは、こちらのご出身?

加納

この古い家で生まれ育ちました。

山崎

ここが生家なんですか? うわぁ、素敵だなあ。

加納

明和元(1764)年の建物なので……つまり、築248年になります。
ね、古いでしょう(笑)?

山崎

本物ですね。もとは造り酒屋、ですか?

加納

そうです。わたしが生まれたころには、もうお酒の小売りに変わっていましたが、
裏手にはまだ杉樽がたくさん残っていました。
そして、その家業を継ぐために、わたしは29歳でこのまちに帰ってきたんです。

かつては出雲街道の要衝として繁栄を遂げたまち、勝山。

1997年に、生家にて「ひのき草木染織工房」を立ち上げる。

「わたしの楽しみが、いつしかまちを楽しくしていった」

山崎

それが何年前のことになりますか?

加納

35年前ですね。

山崎

染織にはどのタイミングで出会われたんですか?

加納

地元の高校を卒業して、東京の女子美(女子美術短期大学)に進学するのですが、
そこで出会いました。

山崎

そのあとしばらく東京というわけですね。

加納

機織りの師匠にあたる先生の教室に通ったり、出版社でアルバイトしたり。
結婚してからは自宅を開放して、女子美の後輩にあたる卒業生たちに
織物を教えたりしていました。
でも、母の病をきっかけに、家業を継ぐために
家族全員でこのまちに帰ってきたんです。

山崎

旦那さんも東京の仕事を辞めて?

加納

ええ。帰ったほうがいいと言ってくれたのは主人だったんです。
でも、しばらくすると結局、東京が恋しくなって、
彼だけ戻ってしまったんですけどね(笑)。
3人のこどもたちは今でも一緒にこのまちで暮らしています。

山崎

そうだったんですね。加納さんにとって、勝山ってどういうまちなんでしょう。

加納

はじめは正直、帰りたくないと思っていたの。
でも、帰ってみれば幼なじみもたくさんいるし、
秋の勝山まつりでは、伝統的な「喧嘩だんじり」のためにみんな帰ってくるし、
悪くないなって。
そのうち、ここに居場所を作ろうと「じぶんが楽しむため」にやることが、
自然とまちのためになっているということが起こってきて、
それが今はとても心地いいし、楽しいのかな。

山崎

ということは、加納さんの場合は……。

加納

そうなの。
「まちおこし」なんてことは、これまで一度も考えたこともないのよ!(笑)

(……to be continued!)

古くから残る街並に、加納さんの作るのれんはよく似合う。

昭和60(1985)年、岡山県初の「街並み保存地区」として指定された。

土蔵、白壁、格子窓……風情ある勝山の街並を散歩。ふと心を癒される時間。

profile

YOKO KANOU
加納容子

1947年岡山県勝山生まれ。女子美術短期大学デザイン科、生活美術科卒業後、29歳で勝山にUターン。1996年に勝山町並み保存地区にて、のれん制作開始。翌年、生家にて「ひのき草木染織工房」を立ち上げる。染織作家/「勝山文化往来館ひしお」館長。

profile

RYO YAMAZAKI
山崎 亮

1973年愛知県生まれ。大阪府立大学大学院地域生態工学専攻修了後、SEN環境計画室勤務を経て2005年〈studio-L〉設立。地域の課題を地域の住民が解決するためのコミュニティデザインに携わる。まちづくりワークショップ、住民参加型の総合計画づくり、建築やランドスケープのデザイン、パークマネジメントなど。〈ホヅプロ工房〉でSDレビュー、〈マルヤガーデンズ〉でグッドデザイン賞受賞。著書に『コミュニティデザイン』。

山崎亮 ローカルデザイン・スタディ 勝山編

Tags  この記事のタグ

Recommend