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小豆島女子へんろ、ふたつの山越え15km歩く

小豆島日記
vol.010

posted:2013.6.17   from:香川県小豆郡土庄町  genre:暮らしと移住

〈 この連載・企画は… 〉  海と山の美しい自然に恵まれた、瀬戸内海で2番目に大きな島、小豆島。
この島での暮らしを選び、家族とともに移住した三村ひかりが綴る、日々の出来事、地域やアートのこと。

writer's profile

Hikari Mimura

三村ひかり

みむら・ひかり●愛知県生まれ。2012年瀬戸内海の小豆島へ家族で移住。島の中でもコアな場所、地元の結束力が異様に強く、昔ながらの伝統が残り続けている「肥土山(ひとやま)」という里山の集落で暮らす。移住後に夫と共同で「HomeMakers」を立ちあげ、畑で野菜や果樹を育てながら、カフェ、民宿をオープンすべく築120年の農村民家を改装中。
http://homemakers.jp/

島の自然や景色を楽しみながら。

「お遍路」といえば四国が一番有名だと思いますが、
実は小豆島にも「小豆島八十八ヶ所」があり、
白衣(びゃくえ)を着て歩くお遍路さんをよく見かけます。
小豆島八十八ヶ所は、四国八十八ヶ所に比べて距離が短く(約10分の1)、
海や山など美しい自然に囲まれた霊場が多いことから、
景色を楽しみながら徒歩でまわるお遍路さんも多いそう。
距離が短いといっても、全行程約150km。
さすがに1日で全部をまわることはできず、車でも2~3泊、徒歩なら7~8泊のコース。

山道を歩いていると福田の集落と海を見渡せる場所が。こういう景色が遍路の途中あちこちにある。

紫陽花が綺麗な時期。季節の花を楽しみながら歩くのもいい。

小豆島で暮らしているからには、一度はお遍路してみたいなと思いつつ、
何を準備したらいいのか、どうやってまわったらいいのか、わからないことだらけ。
ひとりで始めるにはかなりハードルが高い。

そんな時、島の友人に誘われたのが「小豆島女子へんろ」。
ショウドシマ・クリエイティブさんの企画で、参加者を女性に限定し、
和気あいあいと楽しく無理なく小豆島の霊場を歩き遍路するイベント。
「へんろ」とあえてひらがな表記にしているのは、お遍路の制約からちょっと離れて、
ぐっと敷居を低くした初心者のためのへんろだから。
白衣や金剛杖、経本、念珠といった遍路用品も参加費に含まれていて、
何も持たずにとりあえず小豆島に来れば参加可能!
ただ、結構本気で歩くので、山道を歩く体力とへこたれない気持ちは必要かも。

バスでスタート地点まで移動。常光寺の副住職である大林慈空さんよりへんろについてのお話。

第4回小豆島女子へんろ巡礼冊子。白衣や金剛杖、輪袈裟(わげさ)などを貸してくれます。

今回私が参加したのは、第4回目の小豆島女子へんろ。
なんと約30名の女性が参加。そのうち約半数が島外からの方。
回を重ねるほどに参加者が増えているそうです。

今回集まった女性約30名。出発前に皆でストレッチ。

最初に輪になって自己紹介。今回はテレビ局の取材の方も来ていました。

今回のコースは、小豆島の北東部、小部(こべ)という集落から
吉田、福田を通過して当浜(あてはま)までの約15km。
ちなみに小豆島八十八ヶ所の全行程が約150kmだから、
女子へんろに10回参加すればコンプリートできそうですね。

巡礼冊子には地図も載っていました。小部からスタートして86番当浜庵までの15km。

コース途中には、豆坂峠(まめざかとうげ)という
小豆島霊場の中で最も長い遍路道(徒歩約2時間)がありました。
その昔はこの峠を越えるしか吉田集落に行く方法はなく、ここを歩いて越えると
足の裏に豆ができるほどということから、その名前になったそう。
この日は曇り空で強い陽射しはなかったものの、山道を10分も登ると汗が吹き出し、
和気あいあいというより修行のような区間も(笑)。

豆坂峠を列になって歩く。全コースの半分くらいがこうした山道でした。

遍路の途中でこうした看板がいくつもありました。裏には次の霊場までの距離が書かれています。

吉田ダムに到着。ここのところ雨が全然降っていなくて、ダムの水もかなり少なめ。

こうやって集落から集落へ歩いていく。
そしてお寺や庵で参拝し、お経を唱える。
その途中、山の中の腐葉土の匂いや栗の花の香り、
海からの心地良い風など小豆島の自然を贅沢に感じる。
お遍路というのはそんなに堅苦しいものではないんだなと思った。
気持ちのいい季節に、その土地を歩くことを楽しむ。
そんなスタイルのお遍路もありなのかなと。

83番福田庵で参拝。お賽銭と願いを書いた御札を入れてお参りします。

お昼ごはんは82番吉田庵で。小豆島の伝統料理「石切り寿司」をいただきます。

かつて大阪城築城のために小豆島から多くの石を切り出しており、その時に石工たちに振舞われたのが石切り寿司の始まりと言われています。それ以来、島の北部では祭りや法要などのハレ食に欠かせないものとされているそうです。

84番雲海寺。海と福田の集落を見渡せる最高の場所にあります。

次回の小豆島女子へんろは、2013年12月の予定だそうです。
お遍路をしたいという方だけでなく、小豆島の自然を歩きながら楽しみたい、
そんな方にもちょうどいい企画だと思います。

小豆島女子へんろ、小豆島の新しい魅力と楽しみ方を発見できた充実の1日でした。

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