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前橋 Part4
リユースとリサイクルのあいだに。

山崎亮 ローカルデザイン・スタディ
vol.068

posted:2013.7.2  from:群馬県前橋市  genre:活性化と創生

〈 この連載・企画は… 〉  コミュニティデザイナー・山崎亮が地方の暮らしを豊かにする「場」と「ひと」を訪ね、
ローカルデザインのリアルを考えます。

writer profile

Maki Takahashi

高橋マキ

たかはし・まき●京都在住。書店に並ぶあらゆる雑誌で京都特集記事の執筆、時にコーディネイトやスタイリングを担当。古い町家でむかしながらの日本および京都の暮らしを実践しつつ、「まちを編集する」という観点から、まちとひとをゆるやかに安心につなぐことをライフワークにしている。NPO法人京都カラスマ大学学長。著書に『ミソジの京都』『読んで歩く「とっておき」京都』。
http://makitakahashi.seesaa.net/

credit

撮影:ただ(ゆかい)

今回、山崎さんが注目したのは、産業廃棄物にあたらしい命を吹き込む
「モノ:ファクトリー」を展開している株式会社ナカダイ。
1日約50トンも運び込まれる廃棄物を「素材」さらに、「ソーシャルマテリアル」
と言い換えてみれば、リサイクルのあたらしい方法だけでなく、
これからのわたしたちの生き方までもが見えてきそうです。
そんな “リマーケティングビジネス” の仕掛人とも言える、中台澄之さんを訪ねました。

“廃棄物” を言い訳にしないデザイン。

山崎

9月に予定されている「産廃サミット(*1)」も、俄然興味がわいてきました。
もう3回目の開催なんですね。

中台

個人、団体を公募して、ナカダイのマテリアルを用いた作品展示を中心に、
ワークショップの開催、マテリアルの販売やリユース、リサイクルの流れなど、
さまざまな“使い方”を提案してもらう場です。

山崎

コンセプトが、“廃棄物を言い訳にしない”デザイン!

中台

です(笑)。
「廃棄物だからこれしかできないよ」もNGだし、
「廃棄物だからエコ」的なのもどっちもNG。
そうすると、これやっておもしろいなあと思うのは、
実績をもってるプロダクトデザイナーほど頭を悩ますお題だということ。
学生なんかのほうが、直感で動けるというか、自由度が高いですね。

山崎

かもしれませんね。建築でも、たとえば一般的に
既製品を使うのはあまりかっこよくないとされていて、
「いかに特注品をつくらせたか」が一流の証、ステイタスなんですよね。
ぼくはそこにずっと違和感をもっていた気がするんです。
でも、あるとき書店で、クラウス・エン・カーン
(アムステルダムの建築設計事務所)が既製品だけでつくった
建築物の写真集『ビルディングス』っていうのを見つけたんです。
これが、かっこいい。しかも、アーキテクチャー(建築物)じゃなくて、
ビルディングス(建物たち)って言ってしまってるタイトルが
また力が抜けてていい(笑)。既製品だけで、めちゃくちゃかっこいい、
オリジナリティのあるものができてしまっている。
これってどういうことかというと、つまり、彼らは「編集」しているんですよね。

*1 産廃サミット:“廃棄物を言い訳にしない”をキーワードとして、さまざまなモノの使い方を創造することにより、リマーケティングビジネスの可能性を表現するイベント。ナカダイのマテリアルを用いた作品展示を中心に、ワークショップの開催、マテリアルの販売やリユース、リサイクルの流れなど、さまざまな“使い方”が提案される。次回は2013年9月7日(土)~15日(日)にプラス株式会社 赤坂ショールーム「+プラス」にて開催。

ナカダイ前橋支店に併設された「モノ:ファクトリー」

ナカダイ前橋支店に併設された「モノ:ファクトリー」。大迫力の鉄の棚に、気になる「廃棄物、改め、マテリアル」がずらりと並ぶ。

中台澄之さん

「まだまだうまくことばにできないことも多いんだけど」。新しいモノの流れと産業をつくる“リマーケティングビジネス”に挑戦する中台さん。

“使う” と “捨てる” をつなぐビジネス。

中台

以前はほかとの差別化という部分で
「ナカダイならではの独自性」みたいなことを言いがちだったんですけれど、
そうじゃないなってわかってきたんです。ゴミに優劣はないですからね。

山崎

そりゃあそうです。

中台

そこをつき詰めていくと、お客さん、つまりうちに廃棄物を出してくださっている
企業様の「気づかない価値」を提案することが重要なんだな、と。
それを実行するのはうちじゃなくて、ナカダイが縁を取りもつ
アーティストやデザイナー、建築家や学生たちで、
リサイクル率の高さだけでなく、彼らが見いだす「あたらしい価値観」が、
廃棄物を出す企業にとってのCSRになるようなビジネスケースをつくりたいんです。

山崎

社会貢献だけど、ちゃんとビジネスになってると。

中台

はい。うちにとってはビジネスとして成立しなければならない。
ただ、リーマンショック後のいまは、利益ではなく、
「理念」で社員をひっぱっていくべきなんだと思っています。
企業のトップとして「コミュニティを活性化させるためのビジネスができますよ」
と提案し、ビジネスを創出していくひとりのアーティストであるべきだと。

山崎

「ビジネスアーティスト」という肩書きの所以ですね。

中台

はい。
山崎さんの「コミュニティデザイナー」に触発されて、名づけてみました(笑)。
まだまだうまく言語化できない思いも多いのですが、
多様化する社会のニーズにあうコミュニティデザインを、
ビジネスとして提案できればと考えています。

山崎

そのなかで「モノ:ファクトリー」の位置づけは?

中台

リユースとリサイクルのあいだを埋める「場」ですね。
中間処理場じゃなくても、この機能だけ全国に展開していっても
おもしろいんじゃないかと思ってるんですが。

山崎

フランチャイズ展開! うん、おもしろそうですね!

シャンデリアのパーツ

「モノ:ファクトリー」内でマテリアルとして販売されているシャンデリアのパーツ。「それが何だったか」を考えるのもたのしいけれど、ただ「キラキラしてきれいなもの」として愛でるのもまた一興。一部はオンラインで購入も可。https://monofactory.nakadai.co.jp/store/

ワークショップで作られるアクセサリー

ナカダイ前橋支店に併設された「モノ:ファクトリー」では、マテリアルを使ったものづくりワークショップも行われる。

information

map

株式会社ナカダイ

再生資源、中間処理、廃棄物コンサルティングなどを行う会社。中間処理場である前橋支店での取扱量は1000t/月程度で、リサイクル率は95%を超える。粕川工場では、リユースを目的とした中古家具をオークションする市場、“MRC(マテリアル・リバース・センター)”を運営、その他、工場やオフィスビルの管理や廃棄物削減などのコンサルティングなども行う。2010年より、新しいモノの流れと産業を創る“リマーケティングビジネス”を展開。前橋支店内に、“発想はモノから生まれる”をコンセプトにした、「モノ:ファクトリー」を併設し、様々な“マテリアル”を発見できる「マテリアルライブラリー」、そこから生まれた商品や作品などを販売する「ストア」、ワークショップのできる「工房」を整備。工場見学やリサイクル体験プログラムなども随時受け付けている。

ナカダイ前橋支店

住所:群馬県前橋市駒形町1326

TEL:027-266-5103

Web:http://monofactory.nakadai.co.jp/

profile

SUMIYUKI NAKADAI 
中台澄之

1972年生まれ。ビジネスアーティスト/株式会社ナカダイ前橋支店支店長/モノ:ファクトリー代表。東京理科大学理学部卒業、証券会社勤務を経て、ナカダイに入社。ISO14001の認証取得や中古品オークションを行う市場の立ち上げなど、総合リサイクル業として事業を拡大。“リマーケティングビジネス”を考案し、“発想はモノから生まれる”をコンセプトに、モノ:ファクトリーを創設。使い方を創造し、捨て方をデザインするビジネスアーティストとして、さまざまな研修やイベントなどの企画、運営を行っている。

profile

RYO YAMAZAKI 
山崎 亮

1973年愛知県生まれ。大阪府立大学大学院地域生態工学専攻修了後、SEN環境計画室勤務を経て2005年〈studio-L〉設立。地域の課題を地域の住民が解決するためのコミュニティデザインに携わる。まちづくりワークショップ、住民参加型の総合計画づくり、建築やランドスケープのデザイン、パークマネジメントなど。〈ホヅプロ工房〉でSDレビュー、〈マルヤガーデンズ〉でグッドデザイン賞受賞。著書に『コミュニティデザイン』。

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