連載
posted:2012.3.28 from:福島県 genre:活性化と創生
〈 この連載・企画は… 〉
日本の地域を拠点にしてさまざまなプロジェクトを仕掛ける地域プロデューサー、
本田勝之助さんから地域活性のヒントを学びます。いま、ローカルビジネスが注目されるその理由とは?
writer's profile
Masayuki Sawada
澤田真幸
さわだ・まさゆき●東京生まれ。幼少期より国内外を転々とし、現在は東京在住。ジャンルはとくに問わず、面白ければオールOKのスタンスでライター稼業を邁進中。旅好き。仕事でもプライベートでも、ここではないどこかに行けるならどこへでも。
本田勝之助さんがプロデュースするものは
食品、伝統工芸品、イベント、ホテルなど多岐に渡る。
さまざまな案件を抱え、全国を飛び回る本田さんだが、
生まれ育った会津の仕事には、やはり特別な思いがあるようだ。
お米から始まった本田さんの仕事は、
やがてお米を原料とする酒造りにも広がっていった。
そもそも良質な水に恵まれた会津地方は古くから銘酒の産地として知られ、
およそ40軒の蔵元が今も酒造りに精を出している。
通常、酒造りというのは、まず先にイメージする味と香りがあって、
そこを目指して仕込みが行われる。
しかし、本田さんは違った。
何より米ありきで酒を造ることにこだわった。
だから、使うお米も、一般的な酒造好適米ではなく、食米。
日本の伝統的肥料である米ぬかを醗酵させ、
さらに植物性酵素を加えた天然有機肥料を用いた
“ながいき農法”によってつくられた最高級米「雷神光」を使っている。
前例のない取り組みゆえ、
当然、蔵元である榮川酒造にとっても未知なる部分は多く、
どんな酒を目指しているのかを問いかけながらの酒造りだったという。
そして、創業以来140年を超えて受け継がれた技と品質へのこだわりは、
ついにひとつのかたちに結実した。
それが「雷神光 純米吟醸酒」である。
「食用のお米を酒造りに用いるなんてことはこれまでだったら考えられませんでした。
ただ、酒造りは“一に水、二に米、三に技”と言われますが、
そのすべてに最高品質のものを使えば、
間違いなく美味しいお酒ができると思ったのです。
蔵元の並々ならぬ努力もあって、自信をもってお届けするお酒ができました」
福島、山形、新潟の3県にまたがる磐梯朝日国立公園。
裏磐梯の名所として知られる五色沼に程近い
木立の中にひっそりと佇む「ホテリ・アアルト」も、
本田さんがプロデュースしている。
元々は築40年の山荘だったものを、
3人の建築が新たにホテルへとリノベーションし、
自然の中で豊かに暮らす北欧のライフスタイルやデザインを取り入れた
モダンな建物へと生まれ変わらせた。
このホテルの最大の“おもてなし”は、
裏磐梯とその周辺地域の恵みを“お裾分け”することにあると本田さんは言う。
「それを我々は“お福分け”と呼び、
建物の材料は県産材を使用し、
料理の食材も基本は地産地消にこだわっています。
ホテルというのは、地域のコンシェルジュであり、拠点となるところです。
しつらえもサービスも、
根本をかたちづくるのは会津であり、福島であり、日本ですが、
そこに吟味されたシンプルでナチュラルな北欧の家具を組み合わせた点に、
このホテルならではのオリジナリティがあります。
その妙をぜひお客様に味わっていただきたいです」
客室は全部で13室。温泉は源泉かけ流し。
会津の拠点にオススメのホテルである。
profile
KATSUNOSUKE HONDA
本田勝之助
ほんだ・かつのすけ●福島県会津若松市生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。会津食のルネッサンス代表取締役。ヒルサイドコネクション代表取締役。地域を経営するという視点で、会津地方や福島県内を中心に食やモノづくりのプロデュース、ならびに伝統産業のコンサルティングやリノベーション事業を展開している。福島復興のキーパーソン。
会津食のルネッサンス
株式会社ヒルサイドコネクション
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