連載
posted:2019.5.14 from:長野県北佐久郡軽井沢町 genre:旅行
〈 この連載・企画は… 〉
ひとつのまちの、ささやかな動きかもしれないけれど、創造性や楽しさに富んだ、
注目したい試みがあります。コロカルが見つけた、新しいローカルアクションのかたち。
writer profile
Akiko Nokata
のかたあきこ
旅ジャーナリスト、まちづくり人案内人、温泉ソムリエアンバサダー。旅行雑誌の編集記者を経て2002年に独立。全国で素敵に輝く〈まち、ひと、温泉、宿〉を見つけ出し、雑誌などで聞き書き紹介。旅館本の編集長。テレビ東京『ソロモン流』出演後、宿番組レギュラーも。本連載では撮影にも挑戦! 東京在住の博多っ子。
http://nokainu.com/
credit
撮影:星野リゾート、のかたあきこ
長野県軽井沢町に「仲間とルーズに過ごすホテル」をコンセプトにする、
〈星野リゾート BEB 5(ベブファイブ) 軽井沢〉が
2019年2月5日にオープンした。軽井沢駅からバスで15分ほど。
軽井沢星野エリアの一角にあり、
ウッドデッキの中庭を囲むようにして73室の客室が広がる。
メインターゲットは20〜30代だ。
客室はロフトベッドのあるカジュアルな造りの
「YAGURA Room(ヤグラルーム)」が40室、
「Twin Room(ツインルーム)」が32室、ユニバーサルルーム1室を用意する。
金子尚矢・総支配人は、「新しいホテルのかたちとして、
『居酒屋以上、旅未満』の空間を若者に提供したい」と話す。
その象徴としてあるのが、「TAMARIBA(タマリバ)」と名づけられた
24時間利用できるパブリックスペースだ。
TAMARIBAには、中庭、カフェ、ライブラリー、ショップ、DJブースがあり、
カフェでは24時間、ビールや量り売りのワイン、軽食を販売する。
おしゃべりが弾んでつい夜更かし……、ソファで寝落ちも、朝寝坊も大丈夫!
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〈BEB(ベブ)〉は星野リゾートの新しいスタイルのホテルとして誕生した。
同社は国内外で38施設のリゾート運営を手がけ、
ラグジュアリーリゾートの〈星のや〉、
子ども連れファミリーに好評の〈リゾナーレ〉、温泉旅館の〈界〉、
都市観光ホテルの〈OMO(オモ)〉ブランドがある。
どうして若者に向けたホテル〈BEB〉をつくったのか?
星野リゾートの星野佳路代表はこう話す。
「若者を旅に連れ出すホテルについてはこの5年、
温泉旅館の界で『若者旅プロジェクト』を実施するなど、
さまざまな取り組みを行ってきました。
それは20代男性を筆頭に“若者の旅離れ”が止まらないからで、
若い世代に『国内旅行って楽しい』と思っていただける魅力づくりや、
旅に駆り立てるホテルを提案していくことは、
観光に携わる者の使命だと思っています」
若者の旅を盛り上げることは同時に、将来の顧客獲得にもつながる。
インバウンドで活気づく国内観光だが、
実際はその市場の8割は日本人の、それも中高年が支えるという現実がある。
BEB5 軽井沢の金子さんは、
開業にあたりあらためて20〜30代に調査したそうだ。
その結果、若者は「どの宿へ行くか」というより
「何をするか(行動目的型)、誰と行くか(同行者優先型)」
を大事にしていることがわかったという。
「『日常=仕事』から離れたいから、余暇は普段できない体験を、
気心が知れた仲間と楽しみたいという声が圧倒的に多かった。
ならばBEBは自由気ままな滞在スタイルを提案する
『居酒屋以上、旅未満』を目指そうということになりました」
と金子さんは話す。
若者への提案として、宿泊料金を通年同じ価格にするのも特徴のひとつだ。
「35歳以下エコひいきプラン」では、
宿泊者全員が35歳以下なら一年中1室1万6000円(消費税込み)。
3人で宿泊すればひとり1泊5300円ほどで、除外日はない。
同一料金の目的を、星野代表はこう説明する。
「ホテル業界では1990年代から、
曜日・季節で価格を変動させるイールドマネジメントを採用し、浸透しています。
同じサービスに対して、予約時期によって異なる値づけをする。
その行き過ぎが消費者にサービスの価値をわかりづらくしてしまった。
いずれ“価格のわかりやすさ”が価値になる時代が来るはずで、
星野リゾートではまずはBEB5 軽井沢でご提案していこうと考えています」
徒歩圏内に日帰り入浴施設〈星野温泉 トンボの湯〉や〈村民食堂〉があるほか、
小川が流れる森には16の店舗が集まる〈ハルニレテラス〉がある。
カフェベーカリー、イタリアンに中華料理にそば、
雑貨店やタイ古式マッサージの〈常世(とこよ)〉など、個性店が揃い、
滞在中に周辺をめぐるのも楽しい。
また敷地内に広がる国設〈軽井沢野鳥の森〉では、
軽井沢の自然観察ツアーを行う〈ピッキオ〉が、野鳥観察をはじめ、
楽しみながら学べるアクティビティを用意する。
軽井沢の魅力は、四季それぞれ違った楽しみ方があることだ。
「夏の避暑はもちろん、新緑の春も、紅葉トンネルの秋も、雪化粧の冬も!」
と、ホテルスタッフは話す。
そのエリアは「軽井沢らしさ」に立ち返り、
自然と共生する暮らしにこだわる地域。
星野代表は、
「ひと昔前の軽井沢は、今以上に若者やファミリーのお客様が多かった。
仲間や家族との思い出づくりの場所に
軽井沢がこれからもなれるのなら、観光に携わる者としてはうれしい」と話す。
そうしてこう続ける。
「旅は発見の連続ですから、
自分自身に刺激を与えられることがその醍醐味だと思っています。
若い世代から『旅をして自分の違った面が発見できた』とか
『自分を見つけるきっかけができた』と言ってもらった時、
旅行業界にいて最高にうれしかったりするわけです。
BEBは、20代を旅に連れ出すホテルブランドになりたい。
それは簡単ではないと思いますが、チャレンジしていきます」
このホテル、若者大歓迎ではあるが、35歳以上でも、家族旅行でも、
グループでもひとり旅でも、自由に快適に過ごせる。
誰と行く? 何をする? 思い思いの軽井沢時間を!
information
星野リゾート BEB 5(ベブファイブ) 軽井沢
住所:長野県北佐久郡軽井沢町長倉3364-15
TEL:0570-073-022(予約センター)
部屋数:全73室
宿泊料:1名あたり9000円〜(2名1室利用時)、
1室1万8000円〜
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