連載
posted:2013.5.13 from:香川県小豆郡土庄町 genre:暮らしと移住
〈 この連載・企画は… 〉
海と山の美しい自然に恵まれた、瀬戸内海で2番目に大きな島、小豆島。
この島での暮らしを選び、家族とともに移住した三村ひかりが綴る、日々の出来事、地域やアートのこと。
writer's profile
Hikari Mimura
三村ひかり
みむら・ひかり●愛知県生まれ。2012年瀬戸内海の小豆島へ家族で移住。島の中でもコアな場所、地元の結束力が異様に強く、昔ながらの伝統が残り続けている「肥土山(ひとやま)」という里山の集落で暮らす。移住後に夫と共同で「HomeMakers」を立ちあげ、畑で野菜や果樹を育てながら、カフェ、民宿をオープンすべく築120年の農村民家を改装中。
http://homemakers.jp/
あっという間に終わってしまったゴールデンウィーク。
今年はお天気にも恵まれ、とても気持ちのいい連休でした。
その連休のまんなか、5月3日に毎年恒例の「肥土山農村歌舞伎」が開催されました。
肥土山農村歌舞伎は、300年以上続く肥土山地区の伝統芸能。
その昔、肥土山は毎年のように水不足。
困った百姓たちを救おうと、時の庄屋太田伊左衛門典徳さんが
3年の歳月と私財を投じて蛙子池を完成させ、
その水が伝法川を伝って肥土山へ流れてきたのを大変喜んだ村人たちが、
肥土山離宮八幡神社の境内に仮小屋を建てて、芝居をしたのが始まりと言われています。
なんとも昔話に出てきそうなお話。
それがこんなに身近にあるから驚きです。
今年は私たちが初めて住民として参加する農村歌舞伎。
実は見るのも初めて。
そしてさらに歌舞伎の演目と演目の間の舞踏に、
いろは(5歳の娘)が参加することになったので、
初めての農村歌舞伎ながらいきなり深く関わることに。
3月2日の「練固め(ねりがため)」という顔合わせから始まって、
5月4日の「どうやぶち」という打ち上げまでの2か月間、
どっぷり歌舞伎な日々でした。
本番までの1か月間は、ほぼ毎日踊りの練習。
幼児園が終わってから、そのままお稽古。
「お願いします」
「ありがとうございました」
踊りはもちろん、始まりと終わりの挨拶など礼儀作法まで、
島に住む踊りの先生がとても丁寧に教えてくださいました。
そして家でもお友だちと自主練。
子どもと一緒にひとつの目的に向かって一生懸命頑張ることはとても楽しい。
こんなふうにして、役者から大道具、着付けなど
すべてを肥土山で暮らす人々が担当し、当日に向けてつくりあげていく。
別にお金をもらってるわけでもないのに、皆が責任感をもち、
いいものにしようと自然と頑張れるこの雰囲気は本当にすごいなと感じました。
こんな田舎に、むしろ田舎だからこそなのか、
理想的なプロジェクトの進め方がしっかりと存在してる!
そして当日15:30から開演。
夕方から夜にかけて、舞台うしろの暮れゆく風景を眺めながらの歌舞伎は
本当に最高だった。
農村歌舞伎は全然難しいものじゃなくて、
同じ地域に住むあの人、あの子が演じているのを見るのはとても楽しかった。
地元ネタなどのアドリブもあって、観覧席からどっと笑いも起こっていました。
今年は例年に比べて若い世代の人たちがたくさん見に来ていたそうで、
大盛況だったみたいです。
私の知人も、島外島内からたくさん来てくれました。
家で作ってきた割子弁当を一緒に食べながら、皆昔からの友人のような雰囲気で。
肥土山農村歌舞伎というのは、こんなふうにして
親戚や友だちと一緒に楽しむことができるお祭りなんだなとひしひしと感じました。
来年もその次の年もこのお祭りが開催され続けるように、
肥土山で暮らす家族として少しでも貢献できるといいなと思います。
来年も皆でつくり、皆で楽しめるといいな。
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