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連載

「何もないのが、いい。
だけど面白くなる予感」
天竺鼠・川原克己さんが帰る場所。
鹿児島・大崎町の思い出とこれから

あの人が、愛する地域のおすすめスポット紹介
vol.012

posted:2025.12.1   from:鹿児島県曽於郡大崎町  genre:旅行 / アート・デザイン・建築

〈 この連載・企画は… 〉  日本、そしてグローバルでも活躍する、感度の高いナビゲーターが登場。
生まれ育った地元の、はたまた、大人になってから出会った、もう一つのふるさとなど。
ローカルに詳しいからこそ知っている、おすすめスポットを紹介してもらいます。
絶景、食、アートスポットなど、超極私的おすすめを語ってもらう連載です。

writer profile

Minori Okajima

岡島みのり

愛知県出身。
2013年に上京し、文化服装学院に進学後、エディター、ライターとして活動。好きな名古屋料理はシジミ入りの味噌煮込みうどん。

日本やグローバルで活動する方々に、地元や拠点のおすすめスポットを紹介してもらうこの企画。

今回登場いただくのは、お笑い芸人・天竺鼠の川原克己さん。ふるさとPR大使も務めている鹿児島県大崎町について、「何もないのがいい」と語る川原さんに、地元での思い出や自身のアート活動、お気に入りのスポットをご紹介していただきました。

ー故郷である鹿児島県大崎町は、川原さんにとってどんなところですか?

「なんもないところ。正直、頻繁に帰りたいと思うことはあまりないんです。最初にテレビに出たとき、ナスビをかぶってボケてたのを両親や祖父母が見て、おばあちゃんに『かわいそう、早く帰っておいで』って言われたときくらいかな、思い出深い帰省は。それ以降は基本、仕事で帰るのがほとんど。でも大崎町のYouTube撮影など、きっかけがあれば自然と足が向く。帰りたいというより、呼ばれて帰る感じですね。

帰るとやっぱりパワーをもらえるんですよね。地元って不思議で、離れてみて初めて土地の力に気づくというか。大阪や東京での生活が長くなったけど、大崎町に戻ると、生まれた場所だからこそ感じるエネルギーがある。だから僕にとっては、心の充電ができる、パワーの源みたいな存在です」

ー東京で暮らしていて、ふと地元を思い出す瞬間はありますか?

「お酒が好きなので、芋焼酎を飲んでいるときですね。千鳥の大悟さんに連れていってもらったおしゃれなバーで『鹿児島の芋で一番くせぇやつください』って頼んだことがあって(笑)。先輩には『川原、やめてくれ』って突っ込まれましたけど。あの瞬間に地元を思い出しました。鹿児島の焼酎ってクセが強いけど、それがまたいい。飲むたびに、大崎町や鹿児島の空気を思い出すんですよね」

ー笑いの感覚をにじませた独自の油絵に加え、場そのものを仕立てる発想力にも長けている川原さん。大崎町のYouTube「大崎町役場」では、自身のアート活動にフォーカスした動画を投稿していますが、きっかけはどこからでしょうか?

「最初は大崎町の方から『壁画を描いてほしい』と依頼があったのが始まり。アートの街じゃないのに、急に『川原君に頼もう』となったらしく。でもファンの方が大崎町へ訪れたときに何もないよりは、作品があったほうがフォトスポットとして楽しめるし、地元にもお金が落ちる。そういう発想が広がって、YouTubeで大崎町の取り組みや僕の制作を紹介するようになったんです。結果的に、帰るきっかけや地元とのつながりを持ち直す場にもなりました」

「大阪や東京で個展をすると、お客さんもアートを見ることに慣れているから、作品をどう受け取るかも洗練されてるんです。でも大崎町みたいな田舎だと、みんな“変な空間”に慣れていない。だからこそ、いい意味で違和感を持ってもらえる場所にしたいと思うんです。人間って普段使ってない脳みそがほとんどだって言うじゃないですか。その一部をちょっとでも突けたら、面白い子どもや変な大人が育っていくかもしれない。地元でつくるときは、そんな意識が強いですね。

ギャラリーは、僕が通っていた小学校のすぐそばにできるんです。昔は女性用の下着屋さんがあった場所で、建物を解体したあともブラをつけたマネキンが何体も残っていて。それも一部残してもらってるんですよ。子どもの頃に毎日通った道沿いに、自分の作品を見てもらえる空間ができるのはすごく特別。地元の子どもたちにとってもちょっとした刺激になればいいなと思っています」

今年、大崎町に川原さんのアートギャラリーが誕生する

ーこれから大崎町や鹿児島でやってみたいこと、地域と一緒に実現したいことはありますか?

「やっぱり“もっと変な街”にしていきたいんですよね。壁画だけじゃなくて、銅像でもなんでもいいから、町のあちこちに違和感のあるものを置いてみたい。普通に暮らしてると気づかないけど、ふとしたときに『あれ何だ?』って思わせる存在があると面白いと思うんです。そうやって少しずつ、地元の人や子どもたちの想像力を刺激できたらいいなと。町が前のめりで挑戦してくれているから、僕も一緒にもっと変えていけるんじゃないかなって感じています」

川原さんのアートでまちを盛り上げる!名スポット3選

①大崎町のギャラリー(年内完成予定)
②大崎町のガソリンスタンド
③大崎郵便局

動画はこちらから!

取材後に川原さんが食べていた鹿児島の銘菓とは⁉︎

profile

Katsumi Kawahara 
川原克己

お笑いコンビ『天竺鼠』のボケ担当。2018年から開催し始めた絵画の個展では、総動員数2万人を超える。物語17編を描いた絵本「ららら」や「ぬり絵本」なども出版。さらにMV 監督・演出家として「幽霊失格 /クリープハイプ」「 嗚呼、麗しき人生/ C&K」「ひとりぼっちの唄 / TAK-Z&GADORO」を手掛ける。

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