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仙台〈源氏〉
すてきな女将のいる
品のいい居酒屋

たびのみ散歩
vol.017

posted:2015.12.29  from:宮城県仙台市  genre:食・グルメ

〈 この連載・企画は… 〉  イラストレーターとして活躍する平尾香が、各地の粋な飲み屋をご紹介。
旅して飲んで、おいしいお酒と肴と人に出会います。

text & illustration

kao.ri hirao

平尾 香

ひらお・かおり●イラストレーター。神戸生まれ、独自の個性を発揮した作風で、世界的ベストセラー「アルケミスト」を始めとする書籍のカバーや、雑誌の挿絵、広告などで活躍。個展も多数開催。現在は、逗子の小山にアトリエを構え、本人の取材やエッセイなど活躍の幅は広い。著書本に「たちのみ散歩」(情報センター出版局)「ソバのみ散歩」(エイ出版社)
http://www.kao-hirao.com/
https://www.facebook.com/Kao.0408.hirao

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割烹着姿の女将とコの字カウンター

ほんわり明かりを灯した飲食店が軒を連ねる仙台は文化横丁。
その中にあっても、飛び抜けて控えめな白地に筆文字の
〈文化横丁 源氏〉の看板を見落とさずに見つけたなら、
そこから人がひとり歩けるほどの路地を入り
曲がった正面に縄のれんがみえました。
あたたかい明かりとざわめきが、すりガラスの引き戸と
格子窓の中から感じられて、ほっとします。

一瞬深呼吸をして引き戸をガラガラと開けると、
見渡せるコの字カウンターはお客さんでいっぱいの様子。
奥の厨房のほうから着物に白い割烹着の女将さんが現れたので、
こちらの人数をお伝えすると、カウンター越しに、
ゆっくりと丁寧にお辞儀をされてしまいました……。
ひとまず出直すといたしましょう。
まだ一歩も踏み入れてなかった店の外側から、ゆっくりと引き戸をしめて、
しばらく別のお店で飲むことに。

ここに来るのは3度目。仙台に来るたびに立ち寄る大好きな店。
時間も時代も止まったような空間は、
店いっぱいに使い込まれて角のとれたコの字のカウンター。
それを囲むように長椅子も三方向に並びます。
長椅子も同様に使い込まれているので滑りやすく、
するするとお尻を移動させて自分のポジションを確保。
出直し源氏は、入って右側の席にするすると落ち着きました。

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1杯ごとにつくお通し、最初の品は…?

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1杯目は、振り向いた背中側の壁に貼られた日本酒メニューから
東北のお酒、高清水の辛口を。
テーブルの上段に厚みのあるグラスと受け皿がセットされ、
女将がきれいに注ぎこぼしてくれます。
こぼさぬように右手にグラス、左手に受け皿、
同時に口もぐぐいと前に近づけてお出迎え。
あぁ、目が醒める。おかしな表現ですが、日本酒のひと口目は、
いつも気持ちが一瞬リセットされるような感覚に。
女将さんが上手に注いでくれて、この古い佇まいの源氏でならなおさら。

源氏のお酒はお通しつきなので、お酒を頼むごとに何が出されるかが、お楽しみ。
1杯目は、ぬか漬けとくらかけ豆。
正面の壁には、さしみ、おでん、珍味など
日本酒に合いそうな素朴な季節の品書きが並んでいるので、
お腹の具合、お酒の具合で注文することもできます。

店内全体を見渡せるのがコの字カウンターの好きなところ。
若い男性3人組、お酒好きそうなカップル、出張サラリーマン、女性同士。
酒場ブームのせいでしょうか、遅い時間のせいでしょうか、
数年前に訪れた時より若くて色のあるお客さんが目立ちます。
その全体をカウンターの中からことなく切り盛りする女将さんの所作は美しく、
言葉に余分もなく、品のいい居酒屋の空気感。
薄暗い店内にゆっくりとした時間が流れます。

もう1杯お酒のお代わりを。次は冷奴が出されて、ひと口食べれば、
冷んやり目が醒め、酔って火照った体もクールダウン。
カウンターにいっぱいだったお客さんもいつの間にか少なくなって隙間風。
さあ、そろそろ次の横丁へ繰り出すといたしましょうか。

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information


map

源氏

住所:宮城県仙台市青葉区一番町2-4-8

TEL:022-222-8485

営業時間:17:00~23:00

定休日:日曜日・祝日

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