連載
posted:2015.4.7 from:新潟県南魚沼郡湯沢町 genre:食・グルメ
〈 この連載・企画は… 〉
イラストレーターとして活躍する平尾香が、各地の粋な飲み屋をご紹介。
旅して飲んで、おいしいお酒と肴と人に出会います。
text & illustration
kao.ri hirao
平尾 香
ひらお・かおり●イラストレーター。神戸生まれ、独自の個性を発揮した作風で、世界的ベストセラー「アルケミスト」を始めとする書籍のカバーや、雑誌の挿絵、広告などで活躍。個展も多数開催。現在は、逗子の小山にアトリエを構え、本人の取材やエッセイなど活躍の幅は広い。著書本に「たちのみ散歩」(情報センター出版局)「ソバのみ散歩」(エイ出版社)
http://www.kao-hirao.com/
https://www.facebook.com/Kao.0408.hirao
「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」
この有名すぎる川端康成『雪国』の小説の冒頭が
いつも北に向かうトンネルの中で、頭をよぎります。
ここは、上越新幹線の車内。東京駅で買った缶ビールを飲み干した頃、
長いトンネルを抜けると、まだ雪国ではなく、がっくり。
ワクワクしながら、次の長いトンネルを抜けると、雪国であった。
白く積もった雪が、視界をパッと明るさせたかと思うと、越後湯沢駅に到着。
日帰りスキー&スノーボードのお得なチケットでやってきたけど、
悪天でスキーはあきらめ、温泉を楽しんで、温まった体で駅構内の「ぽんしゅ館」へ。
お土産ものが並ぶ売り場を抜けた先、入場すると
今度は壁一面にお酒のラベルが貼られ、それぞれ自動販売機のよう。
レジカウンターで500円を払って、お猪口と金色コイン5枚に交換。
このコインを1枚投入してボタンを押すと、
指定位置に置いたおちょこに日本酒が注がれるという仕組み。
利き酒にぴったりの23ml。番号がふられた日本酒の銘柄がずらーり120番まで。
すべて新潟のお酒というからさすがの酒どころ。
これだけのお酒を目の前にすると何から飲むか迷います。
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困ったときのジャケ買い。目に飛び込んできたのは、
黒に金の牛がプリントされた日本酒らしからぬラベル。塩川酒造の「COWBOY」。
ひと口飲めば、お米の甘みがじんわり広がる芳醇な味わい。
日本酒初心者にも飲みやすいお味。
店内の黒板の人気ランキングにも上位で書かれています。
あっという間にお猪口は空に。次のお酒を選ぶ前に、お水のコーナーへ、
日本酒を悪酔いせずにおいしく飲むにはお水も一緒にとるとよいとか。
お猪口を洗うこともできるし一石二鳥。
そのお水がおいしいことで、ここは、新潟なんだなぁと実感。
お水の手前にお塩のコーナーも。お猪口に盛られて、
升で仕切られた各地の厳選されたお塩がずらり90種類。
小さなスプーンですくって手の甲に乗せて舐めて、日本酒ぐびっと。
冬限定のお燗もいただきましょうと、ひと口飲んでから、お猪口をお湯につけて2~3分。
冷とはまた違う味わい、冷だとツンとした印象だったお酒も柔らかくなったり、
香りが鼻を通って、おいしいこと。利き酒って楽しいなぁ。
気に入ったお酒をお土産に買って、新幹線で帰ります。
ほろ酔い車中。トンネルのことなどすっかり忘れて、
うたた寝から覚めると大都会であった。
Information
ぽんしゅ館 越後湯沢店
住所:新潟県南魚沼郡湯沢町湯沢2427-3
TEL:025-784-3758
営業時間:9:00~18:00(12月下旬~3月の冬季は9:00~20:00、受付は閉店15分前まで)
定休日:無休
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