連載
posted:2014.3.18 from:神奈川県鎌倉市 genre:食・グルメ
〈 この連載・企画は… 〉
イラストレーターとして活躍する平尾香が、各地の粋な飲み屋をご紹介。
旅して飲んで、おいしいお酒と肴と人に出会います。
text & illustration
kao.ri hirao
平尾 香
ひらお・かおり●イラストレーター。神戸生まれ、独自の個性を発揮した作風で、世界的ベストセラー「アルケミスト」を始めとする書籍のカバーや、雑誌の挿絵、広告などで活躍。個展も多数開催。現在は、逗子の小山にアトリエを構え、本人の取材やエッセイなど活躍の幅は広い。著書本に「たちのみ散歩」(情報センター出版局)「ソバのみ散歩」(エイ出版社)
http://www.kao-hirao.com/
https://www.facebook.com/Kao.0408.hirao
立ち飲み屋で立ち読み。鎌倉の夕方は、
文庫片手にレモンサワーで喉を潤す。
「どのお酒がお好きなんですか?」とよく聞かれます。
実は、答えに困るのです。
『たちのみ散歩』『ソバのみ散歩』というイラストエッセイの本を出した私は、
もちろんお酒は好きであるけど、お酒と一緒に味わう料理も好きであり、
なにより、お酒のある風景が一番の好物なのだから。
酒場といわれるような場所には、隣に並んだだけで、
会話が生まれたり、粋な店主の仕事っぷりにほれぼれしたり、
お客さんの様子をじっくり観察したり。
なんとも、楽しい時間が待ってるのです。そんな情景を、
イラストとともに、みなさまにお伝えできたらと思います。
夕暮れ時、夏ならヒグラシが鳴く頃。
鎌倉の小町通りの土産物屋が終い仕度をし、観光客が駅へと歩く。
その流れに逆らって向かうは、ヒグラシ文庫。
小町通りから一本入って、もう人は、ほとんど歩いていない裏路地に、
焼き鳥屋の煙とミミズクの看板を見つけたなら、
鉄階段をカンカンカンと音をたてて上がった2階。
縄のれんをくぐると黒のカウンター。
夕方4時からオープンのお店の先客は、
いかにも地元な方々と鎌倉に足しげく通う方々など。
この日は、会社帰りのサラリーマンのおじさんを、
おひとりさまの女性客が何度も名前をまちがえて呼んじゃってるかと思えば、
サラリーマンのおじさんは、もう一人の女性客と母娘?って聞くもんだから、
もぉ~失礼しちゃうわ~と、女性陣から猛反撃。
そんな酔っぱらいコント劇。
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こちらの立ち飲み屋の名前に文庫とつくのは、
壁の本棚にずらりと古本が並んでいるから。
立ち飲みしながら、立ち読みして、気に入ったら買うことも出来るのです。
会話に混じりたくなければ、読書家のふりもできます。
「正統金宮レモンサワー」で、爽やかに喉をうるおしながら、
おつまみは、何にしようかな?
飲み歩き好きのおじさんたちが店主とあって、
客の気持ちがよくわかってらっしゃる。
ひとり呑みにうれしい小鉢のつまみは、
地物の魚や旬の野菜、どれも安いのです。
コントも楽しんだし、読書家のふりもしたし、
立ち飲みのお尻も掛けずの長っ尻は、カッコ悪い。
夜になった鎌倉、まだまだたのしいお店があります。
店主に教えてもらった新しくできたお店へ、
ハシゴ酒とまいりましょうか。
information
ヒグラシ文庫
住所:神奈川県鎌倉市小町2丁目11-11 大谷ビル2F
TEL:080-2561-7419
ビール400円 正統レモンサワー400円 つまみ100円~
https://www.facebook.com/higurashibunko
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