連載
posted:2025.12.4 from:青森県 genre:食・グルメ
PR 青森県県産品販売・輸出促進課
〈 この連載・企画は… 〉 青森県は、豊かな大地と清らかな雪解け水、澄み切った空など、おいしいお米を育む自然条件に恵まれた国内有数のお米の産地です。この連載では、青森の恵みがひと粒ひと粒に詰まった “あおもり米〈青天の霹靂〉〈はれわたり〉〈まっしぐら〉の魅力をご紹介します。

Writer
Chihiro Kurimoto
栗本千尋
くりもと・ちひろ
青森県八戸市出身。旅行会社勤務→編集プロダクション→映像会社のOLを経て2011年よりフリーライターに。主な執筆媒体はマガジンハウス『BRUTUS』『CasaBRUTUS』『Hanako』など。2020年にUターン。
X(@ChihiroKurimoto)
Photographer
Yuji Hachiya
蜂屋雄士
はちや・ゆうじ
1981年宮城県仙台市生まれ、青森県八戸市鮫町在住。ウェブデザイナーや写真館勤務などを経て、2013年フリーランスのフォトグラファーに転身。地元の八戸を中心にフイルムで人々の写真を残す「はちや写真館」も開催している。
Kazumasa Harada
原田教正
はらだ・かずまさ
1992年生まれ。武蔵野美術大学在学中より雑誌や広告など多方面で活動。2023、2024年にベルリンでの滞在制作、2025年9月より同地に拠点を移す。
国内有数の米の産地である青森県。県内で生産される“あおもり米”の主力品種は、〈青天の霹靂〉〈はれわたり〉〈まっしぐら〉の3つがあります。今回は、3年連続(2022年は参考品種として)で最高評価“特A”を獲得した青森県のブランド米で、2023年に全国デビューした、新たなあおもり米〈はれわたり〉についてご紹介。
まずは、青森県三沢市に本社があり、米卸業を行う株式会社PEBORAの取締役で、「五つ星お米マイスター」の認定を受けている川村敦子さんにお話を聞きました。

川村敦子さんは、ペットボトルに精米をボトリングした〈PeboRa(ペボラ)〉をはじめ、日本のお米を世界に発信する米卸業を行う、青森県三沢市の株式会社PEBORA取締役。日本に476人しかいない(※2022年9月30日時点)「五つ星お米マイスター」の認定者。
2009年に育成をスタートし、13年かけて開発された〈はれわたり〉は、2023年に全国デビューしました。お米のプロから見て、どんなお米なのでしょうか?
「3品種の中で〈青天の霹靂〉は作付けできる地域が限られていますが、〈はれわたり〉はそれ以外の地域でも栽培できる品種です。食味ランキングで最高位の特Aを3年連続取得するなど、あおもり米を牽引する存在としても期待されています。
粒感は大きめでみずみずしく、ふんわりした食感のお米なので食べやすく、お米の甘さが口の中でじゅわーっと広がります」
〈はれわたり〉のおいしい食べ方について川村さんは、「ほどよい粘りがあるので、おにぎりにしてもふっくら。さっぱりとした魚料理のほか、魚卵や塩辛などのシンプルな食材もおすすめです」と、おすすめしてくれました。

PEBORAが運営するお米の専門店〈KOMEKUUTO八戸店〉に併設するカフェレストランでは、「紅子と紅鮭 わっぱ膳」(1,680円)を提供しています。
〈はれわたり〉は、店頭でも購入可能です。
取材先情報
KOMEKUUTO八戸店
続いて、〈はれわたり〉を生産している米農家さんのもとへ。八戸市出身の久保沢卓さん、麻美さん夫妻は2023年、MARBLE FARM(マーブルファーム)の屋号で新規就農しました。〈はれわたり〉を栽培しているのは、八戸市の南郷島守地域。丘陵地に囲まれた島守盆地は、新井田川が近くを流れ、冷涼な気候条件のもと、雑穀を中心とした農業が行われてきました。初夏には盆地を覆うように幻想的な朝もやがかかることでも知られています。

屋号のマーブルファームは島守弁で“守る” という意味がある“まぶる”に由来。「自然豊かなこの景色を守っていきたい」と、願いを込めたそう。
お米の栽培には十分な日光と水、稲穂が垂れる登熟期の寒暖差が欠かせません。特に島守地域は、イワナやヤマメなどが棲むきれいな水が田んぼに流れ込み、盆地なので昼と夜の寒暖差も十分。お米の栽培に適している地域です。

未経験から農家になったおふたりですが、なぜお米をつくることにしたのでしょうか。
「わが家には子どもがふたりいるのですが、子どもたちの食をめぐる環境について疑問を抱いたことがきっかけです。毎日口にするものなので、農薬を使わず、子どもたちに自信を持って食べてもらえるようなお米をつくりたいと考えて就農しました」(麻美さん)
「2023年のデータによると、日本のカロリーベースの食料自給率が38%、主食用穀物自給率は63%だそうです。このままだと、お米すらも輸入することになる時代がくるかもしれないと、危機感を覚えました。
今は約3ヘクタールの田んぼで、種まきから収穫まで、無農薬・有機栽培の米づくりをしています。 自然の力を最大限に生かしたこの栽培方法は、手間と時間がかかりますが、安心で安全、そしてなによりも生命力に満ちたお米をお届けしたいという想いから、この農法を選びました」(卓さん)

マーブルファームが〈はれわたり〉を栽培し始めたのは2025年から。2024年に、〈はれわたり〉の新米を買って食べてみたところ、青森県産米の品種の中では粘りが強く、特においしいと感じ、この品種を育てることを決めました。
「〈はれわたり〉は、もちもちとしたやわらかい食感と、ほどよい甘みが特徴です。特に魚の塩焼き、煮物など、素材の味を活かした和食と相性が良いと思います。また、冷めてもおいしいので、おにぎりにもおすすめです」(麻美さん)

田んぼの近くにある〈舘のやかた〉を借りて、ちょうどお昼休憩をするというので、食事風景を見せてもらうことに。

「今日は、〈はれわたり〉に合う和食を用意しました。八戸エリアの郷土料理である『せんべい汁』と、塩漬けの梅干しにします。炊飯器がないので、土鍋でご飯を炊きましょうか」(麻美さん)
土鍋でおいしいご飯を炊く方法を麻美さんに教えてもらいました。
【つくり方】
①お米を正確に計量し、やさしく研ぐ。最初の水はすぐに捨て、お米が水を吸い込む前に手早く行う。
②研いだお米は、別のボウルなどに移し、水に浸す。お米1合に対して、水は200〜250mlが目安。浸水時間の目安は、夏場は30分、冬場は1時間。
※土鍋に直接浸水させると、土鍋が水を吸いすぎてひび割れの原因になることがあるため注意。
③浸水させたお米と水を土鍋に入れる。蓋をして、強めの中火にかける。火加減は、炎が鍋底に当たるくらいが目安。
④沸騰するまでの時間は、土鍋の大きさやお米の量によって異なるが、10分程度を目安に。蓋から蒸気が出てきたり、カタカタと音がしたりしたら沸騰のサイン。
⑤沸騰したら、すぐに弱火にして、そのまま10分~15分炊く。土鍋から聞こえるパチパチという音が小さくなってきたら、水分がなくなってきた合図。
※おこげを作りたい場合は、火を止める直前に10秒ほど強火にすると良い。
⑥火を止めたら、蓋を開けずに10分~15分蒸らす。この蒸らしの時間が非常に重要なので、蓋は絶対に開けないように。
⑦蒸らしが終わったら蓋を開け、しゃもじで底からご飯をやさしく混ぜる。余分な水分を飛ばすことで、ひと粒ひと粒が立った、つやつやのご飯に。

炊きあがりました!つやつやに輝いています。

せんべい汁と、塩漬けの梅干しと合わせていただきます。

茅葺屋根の古民家〈舘のやかた〉は、囲炉裏や土間、和室、台所などがあり、誰でも借りることができます。(有料)
マーブルファームが見つめているのは、子どもたちの未来。健やかに成長してほしいという思いのもと、ひとり親家庭へお米の無料お渡し会なども開催しています。
また同時に、次の世代へ、豊かな農地を引き継ぎたいという思いもあると久保沢卓さん。
「今年から耕作放棄地を復活させたのですが、一度山に戻してしまった農地を復活させるのは、すごく大変なんです。農地は農地の状態で、ちゃんと次の世代に引き継いでいかなきゃならない。
私たちが『無農薬・有機栽培で米づくりをしている』というと、農薬や化学肥料を使っている農家さんを悪く言っているように聞こえてしまうかもしれないのですが、そうではありません。慣行栽培でも、どんな品種やどんな作物であっても、農業をしていること自体が次の世代のためになると思います」(卓さん)

「ぺろりと食べました」のポーズ。
最後に、「今後のあおもり米に期待することは?」と問いかけてみると……。
「気候の変化によって、西日本ではどんどん米がつくりづらくなっていると聞きました。これまで青森県は寒くて米の栽培が難しかったのですが、気候の変化や品種の改良によって、これからもっとおいしいお米の産地になり得るんじゃないかと、期待しています」(卓さん)
ふたりの就農したタイミングと同じ2023年に全国デビューした〈はれわたり〉。2025年の収穫で、マーブルファームの〈はれわたり〉の新米が食べられるようになりました。
取材先情報

マーブルファーム
Instagram:@marble_farm88
最後に、雑誌やWEBなどで活躍中の料理家・冷水希三子さんに、〈はれわたり〉に合うレシピを教えてもらいました 。手が込んだように見えて実は工程が少ない、昼食におすすめのメニューです。

「ふっくらとしていて粘りがあり、甘みもある〈はれわたり〉にはソースがよく絡むので、汁気のあるメニューがおすすめ。昼食のシチュエーションなら、『アサリと豚肉のバジルココナッツ煮こみ』はいかがでしょうか。カレー粉を使っていないのに、手軽にカレーのような味わいになりますよ」(冷水さん)
■アサリと豚肉のバジルココナッツ煮こみ

【材料(2~3人分)】
アサリ…200g
豚肉…120g
バジル…1パック
油…小さじ2
塩…少々
生姜スライス…5枚
赤唐辛子…1本
酒…50ml
ココナッツミルク…100ml
レモン…好みで
※写真は2倍の分量でつくっています。
【つくり方】
①アサリは砂抜きして洗う。豚肉はひと口大に切って軽く塩を振る。
②鍋に油を入れ豚肉を炒める。色が変わってきたらアサリと生姜スライスと種を取り除いた赤唐辛子、酒を加え、強火でアサリの口が開くまで煮る。
③ ②にココナッツミルクを加え1~2分煮て塩味が足りないようなら足す。
④火を消し、バジルを加えひと混ぜする。
⑤器に盛り、好みでレモンを絞って食べる。
アサリと豚肉の旨みが溶け出したスープに、バジルの風味が加わり、ほんのり甘みのあるお米によく合います。ゴロゴロの具材で、満足度の高いランチになりました。
他にも〈はれわたり〉は、ハンバーグ、角煮、カレー、天つゆで食べる天ぷら、ぶりの照り焼きなど、汁気のあるメニューと合わせるのがおすすめだそう。
「ソースがよく絡み、米の甘さがより旨みを引き立ててくれます。もっちりしていてやわらかいので、パリパリの海苔を巻いたおにぎりや、お弁当にも」
取材者情報

冷水 希三子
料理にまつわるコーディネート、スタイリング、レシピ制作を中心に、書籍、雑誌、広告などの仕事をしている。
Instagram:@kincocyan
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