最終回:青春よ、サヨウナラ

これまでのこと、これからのこと、家族のこと。

最近なにかと『Krash japan』づいてる。
トークイベントやセミナーで話をしたり、
小林エリカの新著で再録された彼女の連載マンガを見たりで
(『忘れられないの』青土社刊/これ実にいい本です!)。
前にも触れたと思うが、
『Krash japan』は2005年から2010年にかけてぼくが発行した
全10号のフリーマガジンである。
いろんな意味でハチャメチャな雑誌だった。
毎号倉敷をテーマに作っているんだけど、
配布はロンドンやレイキャビク、パリ、ニューヨークなど海外に重点を置いていた。
内容もやっぱり変で、
たとえば倉敷にある一軒の大衆食堂で30ページの特集を組んだかと思えば、
同じ号の第二特集は舞台がメキシコとマカオだったりする。
とにかくお金は惜しみなく使った。10号でおよそ3000万円のお金を集め、
制作と配布で4000万円以上使った
(マイナス分は借金と労働で補填、もちろんぼくの人件費は含まず)。
思い返せば、あの5年はまさに狂気の沙汰だった。
全身の穴という穴から血を垂れ出し、
でもおそろしく楽しげに笑いながら全力疾走している、というのが
あの5年間のぼく自身のイメージだ。
つまるところ、底抜け楽しかったのだ。
終始、しびれるような疾走感と高揚感があった。
そしてマチスタをやっていたときにも、似たような感覚があった。

正直、前半の経営に徹した期間は苦しいことの方が多かった。
一転、俄然楽しくなったのは、年が明けて自分で店に立つようになってからだった。
ぼくが店に時間をとられることで会社全体の経営がさらに厳しくなって、
おかげで我が家の家計なんか目もあてられない始末だったけど、
それでも楽しかった。突然地面が抜け落ちて暗闇にストーンと落ちたかと思えば、
そこにほんのかすかな光を見て天にも昇るような気持ちになったり。
いつも肌がヒリヒリするような感じがあった。脈打つものが常に内にあった。
生きてるって感じがした。
(言葉にするとこっ恥ずかしいことこのうえないのだが)ぼくは五十にしてなお
青春のなかにいたんじゃないかと思う。

ここしばらく、ぼくが考えなければならなかった、
どう現実と気持ちの折り合いをつけるかはカタがついた。
マチスタの終焉とともに、「青春よ、サヨウナラ」だ。
これからはそうそう生身をさらけ出すような無茶はしない。
「地道に生きます」とか、そんな殊勝なことを言うつもりはないんだけど、
まずはチコリを、家族のことを一番に考えようと思う。
チコリを見ていると、ぼくの青春だとかつくづくアホらしくなってくる。
理想やスタイルなんてものもどうでもよくなってくる。
チコリがいつも笑っていられるような環境を与えてやりたい、
心からそう思うのだ。
はた目、『いちご白書をもう一度』的なぼくの変わりように、
倉敷の〈shuby〉のシミちゃんから「笑えないっスよ」と悲しげな顔で言われたとして、
今度はこう言い返せたらと思っている。
「期待を裏切ったとしたらゴメン。
でもなあシミちゃん、やっぱりオレには家族が大事だ」

来月ふたりめの子どもが産まれる。ふたりめも女の子だ。
名前はまだ決めていない。

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