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渋すぎる売り上げ

マチスタ・ラプソディー
vol.027

posted:2012.9.7   from:岡山県岡山市  genre:暮らしと移住

〈 この連載・企画は… 〉  東京での編集者生活を経て、倉敷市から世界に発信する
伝説のフリーペーパー『Krash japan』編集長をつとめた赤星 豊が、
ひょんなことから岡山市で喫茶店を営むことに!? 
カフェ「マチスタ・コーヒー」で始まる、あるローカルビジネスのストーリー。

writer's profile

Yutaka Akahoshi

赤星 豊

あかほし・ゆたか●広島県福山市生まれ。現在、倉敷在住。アジアンビーハイブ代表。フリーマガジン『Krash japan』『風と海とジーンズ。』編集長。

マチスタの救世主現るか!?

飲食店業界では「6月は悪い」というのが通説らしい。
おっしゃる通り、マチスタの6月の売り上げが
20万円以上の赤字を計上したことは前に報告した通りだ。
でも、とりたてて「6月が悪い」というからには、7月には通常上向くはずで、
なのにマチスタの7月の売り上げは6月とほとんど変わらず。
そして8月までもがほぼ同レベルの売り上げで推移した。
これほどの低迷はさすがに想定外だ。
世の中、そう甘くないとは思っていたけど、ちょっと渋すぎるよ、これ。
「夜なんかね、考えると眠れなくなるから、もう考えないようにしてます」
そう言うと、電話の向こう、ジローちゃんが
「そうか、それは困ったな」といつもの鼻にかかった声で。
「じゃあ、まちおこし的にマチスタでオレのライブやるか?」
やっぱりそうきたか。
ジローちゃんにはここ数か月、
ことあるごとに「ライブをやらせろ」と言われ続けている。
ぼく自身がジローちゃんのライブを見たことがないのを理由に
やんわり断ってきたんだけど、これが簡単に引き下がるタマじゃない。
「この間やったライブがyoutubeにアップされてる。
それ見て決めてくれていいよ。9月は連休があるから、
オレも岡山に行きやすいんだけどね」

ジローちゃんは、ぼくが世田谷の「三栄造園」という植木屋で働いていたときの先輩だった。
もう25年以上も前の話だ。当時からレゲエのミュージシャンをやっていた。
カラダはほっそりして、長い髪を後ろで束ね、見るからに「レゲエやってます」
という感じだったんだけど、力はあるし職人としての腕はよかった。
ちなみに、当時のぼくも体力はそこそこのもので、
剣スコ(先が尖ったスコップ)のスピードでは負ける気がしなかった。
そんなことはさておき、ジローちゃんだ。
ジローちゃんは長男の誕生後にほどなくして高松に引っ越して行った。
それからの10数年はほとんど会うこともなかったんだけど、
ぼくが岡山に帰った2006年以降、高松でちょくちょく会うようになった
(児島・高松間は電車で約30分)。
近年のジローちゃんも相変わらずラスタマンな感じで、バンドは止めて久しいものの、
ときどき馴染みの小さなクラブでレゲエのDJをやっていた。
イベントにも2度ほど顔を出したことがある。
何人かいるDJのなかでジローちゃんは頭抜けて最年長だった。
レコードを変えるときは、わずかな照明を頼りに老眼鏡をかけてジャケットを見る。
慣れた手つきとは言いがたかった。
一度、DJの途中で、かけたりはずしたりしているうちにどこに置いたかわからなくなり、
「眼鏡がない!」と大騒ぎしたこともあった。
そんなジローちゃんが、「オレ、ギターを始めたのよ」と言ったのは1年ほど前だったか。
「これが案外悪くないのよ。最近は自分でオリジナルもつくっとるしね」
「サックスはもう吹いてないの?」
「ああ、あれ売った。結構いい値段で売れたんよ」
ジローちゃんはあっけらかんとそう言った。もう眼中にないという感じで。
「岡山でライブしようか? 赤星、知ってるところあるやろ?」
そんな感じで、「ジローのレゲエ弾き語りライブ」の押し売りが始まったのだった。

ジローちゃんに言われてyoutubeの映像を見た。
あんまりこの表現は使いたくないけど、うーん、ちょっと微妙だ。
味があるといえばあるが、ただの酔っぱらいのように見えなくもない。
どっちに転ぶかわからない、そのわずかな可能性に賭けてみるか。
「とゆうわけで、もうさすがに断れなくなってきたんですよね」
コイケさんは声に出さずに笑いながら聞いていた。
コイケさんも街スタで何度かライブを引き受けたという。
最高で50人ぐらい入ったこともあるとか。
「ライブ、どうですかね、やってもいいですか?」
「いいですよ、やりましょう」
これで決まった。
ジローちゃんの岡山初ライブ「コーヒー&レゲエ・ナイト@マチスタ」。
日時は9月22日(土)の18時開場、18時半開演あたりでどうか。
「ちょうどその日はダメなんよ。イベントの前座が入っとるんよ」
ジローちゃんはそのイベントの詳細を聞いてもらいたそうだったが、
ぼくはまったくそこには触れずにいたら、
「その次の週の土曜日なんてどうよ?」
「だって、ジローちゃん、普通の土曜日は仕事があるが」
「そんなん、休むがな」
というわけで、「コーヒー&レゲエ・ナイト@マチスタ」は
9月29日(土)の18時開場、18時半開演に開催が決定。
詳細はこの『マチスタ・ラプソディー』の次回でもお伝えします。
というのも、肝心の本人にはまだこの決定を伝えていないもので。
ちなみにジローちゃんのミュージシャンネームは「Jah South」。
「Jah」はラスタの世界では神を意味するらしい。
あれ、もしかしたら「マチスタの救世主はジローちゃんだった」
みたいなことになっちゃうのか? 俄然、期待。ジロー、頼んだぞー!

ぼくが家で使用しているコーヒーマグ。ピッチャーの球種の握りを示したイラストがお気に入り。2年ほど前に番長からNY土産でいただきました。こんなのマチスタで出せたらいいなあ。

Shop Information

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マチスタ・コーヒー

住所 岡山県岡山市北区中山下1-7-1
TEL なし
営業時間 月〜金 8:30 ~ 20:00 土・日 11:00 〜 18:00

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