山村富貴子さん
備前の良さを経験的に知っている強み。
「私は、他の作家のように備前がやりたくてここに来たわけじゃないんです。
なんとなく、流されるように辿りついたというか(笑)」
大阪出身の山村富貴子さんは、
高校生の時にはインテリアデザインを学び、
卒業後は神戸の「釉薬を使う」陶芸の学校に通っていた。
備前に移り住んでからも
「最初は、全然良さがわからなかった。渋すぎるなぁ」と思っていた。
けれど、さまざまな備前焼に触れ、
自分の眼で確かめていくうちにその世界に引き込まれていくようになる。
「私がつくりたいのは、思わず触りたくなるようなモノなんです。
コップでも器でも、備前焼は使ってこそ真価を発揮するし、
使えば使うほどツヤも増すんです。使う人に育ててもらう。
備前焼のそういう部分が私には合っているんじゃないかなと」
取材時にいただいた、山村さんのカップで飲んだ抹茶は、実にまろやか。
人里離れた、穏やかなアトリエの環境と相まって、
ついつい長居をしてしまった。
「女性ならでは」というと語弊があるかもしれないが、
ものづくりへの視線には確かに「女性らしい」堅実さとこまやかさがある。
「もしかしたら、食器にしろ花器にしろ、
日常使いという視点が強いのかもしれませんね。
細工物に関しても、そうかも。
飾ってカワイイ動物をつくりたくなっちゃうから(笑)」
猫をモチーフとした器や、象の置物が整然と並ぶアトリエ。
「自分が欲しくなるようなもの」を経験的に知っている山村さんのつくる備前焼は、
使ってこそ、価値がわかるはず。

備前の歴史の中には、「細工物」と呼ばれるジャンルがある。象をそのままかたちにした、山村さんならではの細工物。