今年の冬も小豆島から
〈HOMEMAKERS〉の
ジンジャーシロップをお届けします

ただいま、年末まで駆け抜け中!

やってきました! 12月。
クリスマスに大晦日。
あー、今年も年末がみえてきましたね。

私たちにとって、11月から年末にかけては毎年大忙しのシーズン。
収穫や加工などの農作業もいつもより大変なうえに、イベント出店なども重なる時期。
お正月休みを夢見ながら、年末まで一気に駆け抜ける感じです。

まさに今、現在進行系で駆け抜け中(笑)!
今年は初挑戦のジンジャーIPAビールづくりにも取り組み、
そのお披露目イベントでもあり、生姜の収穫を喜び味わうお祭り
〈GINGER FES〉の準備も進めています(小豆島日記vol.306)。
そして私たちにとってこの時期の大切な仕事が、ジンジャーシロップづくりです。

ジンジャーシロップをお湯で割って「ホットジンジャー」に。冬に欠かせない飲みもの。

ジンジャーシロップをお湯で割って「ホットジンジャー」に。冬に欠かせない飲みもの。

〈HOMEMAKERS(ホームメイカーズ)〉のジンジャーシロップは
生姜を育てるところから始まります。
今年も春から生姜を育ててきました。

4月頃、普通に食べることもできる生姜を土の中に埋めます。
そうすると、生姜は自分が蓄えている栄養を糧に、まず地上に芽を出します。
茎を伸ばし、葉を広げ、太陽のエネルギーを得て成長に必要な栄養をつくりだし、
地中では最初に埋めた親となる生姜を核にして少しずつ大きくなっていきます。

私たちは、生姜が健やかに成長していくように、虫を取り除いたり、
強すぎる雑草を抜いたり、土を寄せてあげたりと
春、夏、秋にかけて約半年間、手入れし続けます。
収穫するのは10月頃。150グラムほどの親生姜はうまくいくと
10倍以上の2キログラムくらいまで大きくなることもあります。

私たちが生姜の栽培を始めたのは、小豆島に引っ越してきた翌年の2013年。
体の冷えが気になっていて、体を温める食材といえば生姜だ! 
自分たちで育ててみたい! 
と思ったものの、生姜栽培に関しての知識はゼロ。
でもとにかく育ててみようといろいろ調べて、種生姜を購入して土の中に埋めてみました。

おー、芽が出た! 茎が伸びてきた! と、何もかもが新鮮。
その頃は夫婦ふたりだけで農作業をしていて、まだ小さかった娘も一緒に草を抜いたり、
水やりをしたりしていました。ほんとに懐かしいなぁ。
初めての栽培でしたが、秋に無事に収穫することができました。

2013年秋、まだ幼稚園生だったいろは(娘)も一緒に生姜の収穫。

2013年秋、まだ幼稚園生だったいろは(娘)も一緒に生姜の収穫。

収穫した生姜で初めてつくったジンジャーシロップ。

収穫した生姜で初めてつくったジンジャーシロップ。

東京・有楽町
〈ふるさと回帰支援センター〉
に行けば、
移住しようか迷っていても
道が切り拓ける

漠然としていても大丈夫、という安心感

なんとなく自分の住むべき場所は、今住んでいるまちではない気がする。
そんな漠然とした気持ちで、
「移住のことを考えている」と言ってもいいのだろうか?
“移住“というとハードルが高いと感じる人も少なくないだろう。

以前、移住希望のフォトグラファーがレポートした「ふるさと回帰フェア」も、
移住希望者の背中をそっと押してくれるようなイベントではあったが、
東京・有楽町駅前の〈東京交通会館〉にも、
親身になり、寄り添って考えてくれる人たちがいる。
それが〈ふるさと回帰支援センター〉だ。

ふるさと回帰支援センター全体像

ここには全国44都道府県と1政令市の専属相談員がいる移住相談窓口が設けられている。
移住先が絞り込めていなくても大丈夫。
そもそも移住自体について相談できたり、
広域から少しずつ地域を絞り込むのに具体的な相談ができる「エリア担当者」もいたりと、
移住に対してどんなレベルで迷っていても、あたたかく迎え入れてくれる。

藤岡みのりさん

まずは総合案内でエリア担当を務める藤岡みのりさんを訪ねた。

「移住に漠然とした興味がある、という方のご相談も多いですよ。
その方がどういう暮らしを思い描いているのかをヒアリングしていきます。
おひとりなのか? 今すぐなのか? 住むエリアは海や山に近いところがいいのか?
転職先も探すのか? などさまざまな角度から話をうかがいます」

エリア担当者の藤岡みのりさんも地方移住経験者。自身の経験も踏まえながら相談に乗る。

エリア担当者の藤岡みのりさんも地方移住経験者。自身の経験も踏まえながら相談に乗る。

「移住を進めるにあたっても段階があって、
ステップごとに理想と現実のギャップを確認していくことも。
情報提供や問いかけはしますが、
最終的にはご自身で考えていただくのが大事。
移住先が具体的に絞り込めた方には県の相談員をご紹介しますし、
人によっては移住自体を見送り、ということももちろんあります」

今ここで移住を決めてください! というわけではなく、
現在のライフスタイルのあり方に悩む人それぞれにとっての最適解を、
一緒に深く考えてくれる場所だということが、伝わってくる。

たべよう たべよう めしあがれ
心と身体が喜ぶ食卓の物語

写真:うえすぎちえ

ひわさんと囲んだ食卓での出来事をスケッチブックに記して

私が美流渡(みると)地区を拠点に続けている出版活動〈森の出版社 ミチクル〉では、
昨年からローカルブックスという仕組みを立ち上げ、
本づくりに思いを寄せる仲間と知恵を出し合い、「編集・印刷・流通・販売」を
ともに協力しながら本を刊行する取り組みを行ってきた。
これまで島牧(しままき)、美流渡、美唄(びばい)といった
ローカルな地域に住む人たちの、本に残しておきたい大切なことを綴ってきた。

これまで刊行してきたローカルブックス。左から『さくらの咲くところ』(吉澤俊輔)、『移住は冒険だった』(MAYA MAXX)、『おらの古家』(渡辺正美)。

これまで刊行してきたローカルブックス。左から『さくらの咲くところ』(吉澤俊輔)、『移住は冒険だった』(MAYA MAXX)、『おらの古家』(渡辺正美)。

12月、4冊目となる新刊が登場。
新千歳空港にほど近い長沼町にある〈大きなかぶ農園〉の
およそ13年前の食卓が舞台となっている。

本づくりの始まりは2008年。
札幌で音楽教育の講師を務めていた、うえすぎちえさんが、
この農園で小さなピアノコンサートが開かれることを知り、訪ねたことから。

「D型倉庫に案内された私は、不思議の国の物語の中の扉を開いてワクワクと恐る恐るの気持ちに揺れながら足を踏み入れました。そこには台所に立って洗い物をしている魔女。私を見るなり、コンサートのために知り合いの農家さんからいただいたお花をたくさんの小瓶に飾ってほしいと仕事を与えてくれたのです」(本書より、ちえさんの序文)

『たべよう たべよう めしあがれ 大きなかぶ農園の食卓の記録』より

『たべよう たべよう めしあがれ 大きなかぶ農園の食卓の記録』より

“魔女”と形容されたのは、永野ひわさん。
夫のさとしさんとともに、2001年から長沼で農園を営んでいる。
夫妻は作物を育て、各地の有機農産物や無添加の加工品などの販売を手がけている。

当時、母屋の改修が終わっていなかったふたりが住んでいたのは農業用D型倉庫。
住まいといっても床は土間。
靴を履き、近くの川から水をひき、薪ストーブひとつで暮らしていたという。

私自身も北海道に移住してしばらくして、八百屋さんを通じてひわさんと知り合った。
ひわさんは、敷地に生えているハーブを薬代わりに活用するなど、
昔ながらの知恵を生かした暮らしをしており、
その姿を“魔女”と言ったちえさんの言葉はピッタリだと思った。

以前住まいとなっていたD型倉庫は、現在、野菜の貯蔵場所となっている。極寒の北国で断熱が十分でない倉庫で暮らしていたとは本当に驚く。(写真:うえすぎちえ)

以前住まいとなっていたD型倉庫は、現在、野菜の貯蔵場所となっている。極寒の北国で断熱が十分でない倉庫で暮らしていたとは本当に驚く。(写真:うえすぎちえ)

ブルワリー〈まめまめびーる〉 
農家〈HOMEMAKERS〉がコラボし 
小豆島のジンジャーIPAが誕生

小豆島のブルワリー〈まめまめビール〉とコラボ!

「実りの秋」とはほんとによくいったもので、
秋は野菜や果実など収穫するものがいっぱい。
さつまいもに始まり、生姜、レモンなどの柑橘、
栗や柿も、秋から冬の初めにかけてが収穫シーズンです。
秋に収穫して貯蔵する野菜もあり、収穫、保管、仕込みなど大忙しです。

そんななか、この秋に収穫した「生姜」を使って、
島のブルワリー〈まめまめビール〉と一緒にジンジャーIPAビールを仕込んでいます!

小豆島・坂手地区にある〈まめまめびーる〉の醸造所とお店。

小豆島・坂手地区にある〈まめまめびーる〉の醸造所とお店。

醸造所に併設されているお店のテラス席。海を眺めながらビール飲んでランチとか最高です。

醸造所に併設されているお店のテラス席。海を眺めながらビール飲んでランチとか最高です。

〈まめまめびーる〉の中田雅也・史子ご夫婦は、
2016年に小豆島に移住し、翌年醸造所をオープン。
醸造所には飲食できる店舗が併設されていて、
そこでは醸造所でつくられたビールが飲めて、
史子さんのつくるおつまみやランチをいただくことができます。

〈まめまめびーる〉があるのは坂手地区という島の南東にある港まち。
2013年の瀬戸内国際芸術祭以降、移住者が増え、ブルワリーもカフェもできて、
さらに集落からは海も見えて、今とても楽しそうなエリアです(ちょっと嫉妬、笑)。
これは完全に私のぼやきですが、私たちが暮らす農村、肥土山からは
車で30分くらいかかります。
島は車しか現実的な移動手段がない(バスは本数が少なすぎて、タクシーは高すぎる……)
となると、なかなか気軽に飲みに行けない。これはほんとに寂しいことです(涙)。

お店に入るとズラッと並ぶ瓶。ラベルは史子さんデザイン。

お店に入るとズラッと並ぶ瓶。ラベルは史子さんデザイン。

話は戻り、〈まめまめびーる〉のビールづくりのテーマは「小豆島×ビール」。
小豆島の素材を生かしたビール。
小豆島で飲んだとき、最高だなと感じるビール。
ちなみに、大阪出身の中田くんに醸造所の場所としてなぜ小豆島を選んだのか? 
と尋ねたら、「ここで飲むビールが1番うまいと感じたから!」と。
世界中探せばきっとビールがおいしい場所はたくさんあるだろうけど、
彼が「ここだ!」と感じたのは小豆島。

これまで、小豆島の柑橘やお米、〈ヤマロク醤油〉さんのもろみなどの素材を使って
醸造してきた「しろまめまめ」や「みどりまめまめ」などは
定番のまめまめシリーズとなりました。
定番シリーズのほかに季節限定商品として年間10種類ほどのビールを醸造しています。
※まめまめびーるの製品は、酒税法上は発泡酒です。

閉校した校舎がまた明るくなった!
MAYA MAXXがつくった
クマのAmiちゃん

できるかわからないから、やってみましょうよ!

地域で3年前に閉校になった旧美流渡(みると)中学校の活用を、
昨年からさまざまなかたちで行ってきた。
なかでも美流渡在住の画家・MAYA MAXXさんは、
今年は年3回の『みんなとMAYA MAXX展』を実施し、
子どもと絵を描くワークショップなども精力的に開催してきた。
さらにもうひとつ、校舎に立体物を設置するプロジェクトも立ち上げた。

みんなとMAYA MAXX展会場にて。(撮影:佐々木育弥)

みんなとMAYA MAXX展会場にて。(撮影:佐々木育弥)

以前からMAYAさんは、グラウンドに大きなクマの像を立てたいという構想を持っていた。
その高さは10メートル以上。もし実際に行うことになれば、
重機を使った大がかりな作業が必要になるのではないかと想像された。

クマの全身像をグラウンドの中央に設置したいとMAYAさんが描いた初期スケッチ。

クマの全身像をグラウンドの中央に設置したいとMAYAさんが描いた初期スケッチ。

資金的にも技術的にも未知数で、すぐに具体化するのは難しかった。
そんなあるとき、MAYAさんと話していて、
「まずはできる範囲から始めてみてはどうか」ということとなった。
クマの全身をつくるのは難しくても、顔だけならなんとかなるんじゃないか。

「『スタイロフォーム』を重ねて立方体をつくって、それを削っていこう!」

MAYAさんはそう語った。
プランは、校舎の玄関口にある庇(ひさし)の上にクマの顔を設置すること。

「スタイロフォーム」とは商品名で、正式な名称は押出発泡ポリスチレン。
住宅の断熱材として使用されている。
発泡スチロールより加工も簡単で丈夫なので、
大きな立体をつくるのにも向いているのではないかとMAYAさん。
早速、市内にある建築資材会社で入手することにした。

32枚の「スタイロフォーム」。

32枚の「スタイロフォーム」。

「スタイロフォーム」の規格サイズは180×90センチ。
厚さはいろいろあるが10センチのものを選んだ。
それを18枚重ね、2列分用意すると立方体となる。
この立方体をノコギリやカッターなどで削っていき球体をつくっていくこととなった。
春からワークショップのかたちにして参加者を公募することにした。

「ワークショップの前に、模型をつくったりしないんですか?」

私がたずねると、

「うん、大丈夫。頭のなかではイメージができてるから」

とMAYAさん。いきなり本番に入ることとなった。

プロジェクト名は〈ビッグベアプロジェクト〉。
活動日は第2、第4木曜。
参加を呼びかけるチラシにMAYAさんはこんなメッセージを添えた。

これ、作るのは大変かも? と思います
でも、出来たらめちゃ可愛い! と思います
大変だから、やってみたいです
出来るかわからないから、やってみましょうよ!
力を貸してください〜!

ワークショップというと、事前に失敗がないように準備するものという固定観念があったが、
「出来るかわからないから、やってみましょうよ!」という呼びかけが、
何ともMAYAさんらしいと思った。
自分自身にとっても未知のことにトライするという、ワクワク感がそこには感じられた。

やさしいまちの偉人から超高級りんご、
おしゃれすぎるごみ処理施設まで。
全国のすごい人とモノ

今月のテーマ 「すごい人・モノ」

みなさんのまちの「すごい人・モノ」ってなんですか?
風景だったり、食べ物だったり、確かな技術を持つ匠だったりと
住んでいる人たちが自慢したくなるものなはず。

今回は、「すごい人・モノ」をテーマに
お住まいの地域にある偉人や施設を教えてもらいました。
気になった人はぜひ現地で体感してみてください。

【阿蘇郡南阿蘇村】
旅人のための道しるべづくりに心を砕いた、甲斐有雄氏

初夏、気まぐれな散歩の途中に見つけたそれ。
人も車もほとんど通らない細い道の傍らにポツンと佇む、
「甲斐有雄の道しるべ」。

以来、なんとなく気になって南阿蘇村内を見渡してみれば、
あちらこちらにその道しるべが建っていることに気づきました。

散歩の途中に見つけた道しるべ。

散歩の途中に見つけた道しるべ。

甲斐有雄氏とは何者なのか?
偶然村内のとある区長さん宅を訪ねたときに、そのヒントを見つけました。

区長さん宅の横に、どんと置かれたひと抱えはありそうな石。
うっすらと刻まれた文字は、
「右 阿〇さん 左 くまもと」(おそらく、「右 阿蘇さん」)。
100年以上も前、旅人が道に迷わないようにと、
甲斐氏が自らの材を投じて建てたものであることが、
掲げられた看板に記されていました。
その数、なんと2000基弱!

道に迷って行き倒れる人が多かったという時代、これを目にした旅人は心救われる思いだったに違いありません。

道に迷って行き倒れる人が多かったという時代、これを目にした旅人は心救われる思いだったに違いありません。

調べてみたところ、甲斐氏は1829年熊本県高森町の生まれ。
腕のいい石工(いしく)で、その技を駆使して道しるべを建てたようです。
「その由来を知っている人は、
地元にも少ないかもしれない」とは、ある方の言葉。

探し出せた資料はわずかでしたが、
熊本県の中学校道徳資料にも登場するなど
その心映えの豊かさに言及する記述が多く見受けられました。

幕末から明治に至る動乱の時代に
誰かのためを思って自らの技術を活かした甲斐氏。
今なお阿蘇地域周辺に残る道しるべに
「資性篤実にして公益を思う」と伝えられる人柄が伝わってきて、
あたたかい気持ちになれます。

参考資料
『野尻の自然と歴史』甲斐利雄著(熊本出版文化会館/2011年)
『くまもとの心』熊本県教育委員会中学校道徳教育郷土資料

profile

家入明日美 いえいり・あすみ

北海道帯広市から17年ぶりに熊本県へ帰郷。2022年1月南阿蘇村地域おこし協力隊着任。フリー編集者・ライター「たんぽぽのしおり」として活動開始。狼と馬とエゾナキウサギが好き。趣味は読書と散歩。いかにして、「いい肥料となる生き方」ができるか模索中。Instagram:@dandelion_seeds1124

稲刈り前の準備に必要なこととは?
稲架かけや天日干しまで、
手作業が集約したお米づくり

みんなで稲刈りから脱穀、
そして精米まで

田んぼを引っ越しして、
初めての稲刈りの時期を迎えた津留崎さん一家。

「自分たちだけでは、米はつくれない」
地域の方や友人、そして恵まれた環境があってこその米づくりだと
あらためて感じたようです。

旬のオリーブオイルを味わうなら
11〜12月がおすすめ。
秋の小豆島でオリーブ収穫!

小豆島ではオリーブの収穫時期

10月後半、ようやく空気が冷たくなってきた小豆島。
秋の小豆島は空気が澄んでいて、空は青く、瀬戸内海はキラキラしています。
そんな美しい景色のなか、島のあちこちで行われているのはオリーブの収穫。

小豆島でのオリーブ収穫風景。

小豆島でのオリーブ収穫風景。

秋の澄んだ青い空とオリーブ。美しい景色。

秋の澄んだ青い空とオリーブ。美しい景色。

オリーブの樹は、毎年5月頃に白い小さな花をたくさん咲かせ、
そのあと緑の実をつけます。
夏の間、少しずつ実が大きくなっていき、早いところでは9月頃から収穫が始まります。
オリーブの実は熟していくにつれて、果肉に含まれる油分が増え、
実の色は黄緑色から赤紫色に変わっていきます。

島のオリーブ生産者さんたちは、実の熟し具合、天候などの状況をみつつ、
収穫タイミングを決めて、11月頃まで収穫が続きます。

オリーブの実。まだ完熟する前の状態。ここから熟していくにつれて赤紫色に色づいていきます。

オリーブの実。まだ完熟する前の状態。ここから熟していくにつれて赤紫色に色づいていきます。

ちなみに収穫したオリーブの実は、オリーブオイルやオリーブの塩漬けに加工されて、
小豆島のお土産屋さんなどで販売されます。
加工品だからといって通年販売されているわけではなく、旬の時期があります。

小豆島産オリーブの新漬けは10月頃、オリーブオイルは11〜12月頃が旬!
小豆島のオリーブを楽しみたい! 味わいたい! という方は、
旅行するなら10〜11月がおすすめです。
オリーブ公園などでオリーブ収穫体験を楽しむこともできますし、
その年の新物のオリーブオイルを味わうことができます。

さて、私たちも毎年楽しみにしているオリーブ収穫&オリーブオイル。
今年も友人のオリーブ農家〈tematoca(テマトカ)〉の畑で
オリーブ収穫を手伝わせてもらいました。
小豆島で暮らしていると、オリーブのある風景があたりまえになってしまうのですが、
それってやっぱりスペシャルなことで、身近でオリーブの実を収穫できて、
その実から搾油したオイルを楽しめるなんて、なかなかできることじゃない。
なので、毎年秋にオリーブの収穫をお手伝いできるのはとてもありがたいことだし、
できれば続けていきたいなと思っています。

10月の日曜日、朝から友人のオリーブ畑で収穫お手伝い。

10月の日曜日、朝から友人のオリーブ畑で収穫お手伝い。

小豆島のオリーブ収穫作業は手摘みのところが多く、とても大変で時間のかかる作業。

小豆島のオリーブ収穫作業は手摘みのところが多く、とても大変で時間のかかる作業。

畑の声を聞きながらすべて手作業!
種から育て、石臼で粉をひき、
そば打ちまでの5か月

先人たちの知恵をいまによみがえらせたい

今年の春から、そばを育てそれを製粉するワークショップ『畑の声を聞こう』を、
私が代表を務める地域団体〈みる・とーぶ〉で行ってきた。
そばを栽培したのは、3年前に閉校した旧美流渡(みると)中学校。
これまで生徒たちが作物を育てていたというグランド脇のスペースを利用した。

ワークショップの下準備は4月から。まだ雪がたっぷりと残る畑に炭やコーヒーを融雪剤としてまいた。

ワークショップの下準備は4月から。まだ雪がたっぷりと残る畑に炭やコーヒーを融雪剤としてまいた。

そばの栽培方法を教えてくれたのは、北海道美唄(びばい)市の農家・渡辺正美さん。
昨年『おらの古家』という書籍を〈森の出版社ミチクル〉から刊行し、
本づくりを一緒にさせていただいた。
この本は、昭和初期に建てられた家にずっと住んできた渡辺さんが、
友人の手を借りながら自ら改修した記録をまとめたもの。
渡辺さんは祖父母や開拓のためにこの地にやってきた人々の暮らしに興味を抱いていて、
昔ながらの方法で餅つき会をしたり、藁で靴を編んだりと、さまざまな取り組みを重ねてきた。
農作業でも、納屋に残されていた古い道具を活用しており、
今回のワークショップは、できる限り電動機械を使わず人力で行うこととなった。

美唄から旧美流渡中学校までは車で約40分。渡辺さんは、たびたび畑に通ってくれた。

美唄から旧美流渡中学校までは車で約40分。渡辺さんは、たびたび畑に通ってくれた。

ワークショップ第1回は5月7日に開催。
スコップで畑を耕し、地中深く伸びている雑草の根を取り去る作業を行った。
北海道の家庭菜園は、どこもそれなりに広くて、
たいていは耕運機で耕しているが、今回はあえて手作業。
1平方メートルほどスコップで土をひっくり返すと、汗びっしょりになった。
土はそれほどかたくなかったが、タンポポやスギナなどの根が地中にはびっしり。

「畑でどんな声が聞こえるかな?」

そう渡辺さんは参加者に声をかけた。
地中にはミミズがいたり、芋が埋まっていたり。
機械で一気に耕したのでは気づかない動植物の営みが感じられた。
掘り返したあとは、農具のレーキで根を集めていって2時間ほどで作業は終了した。

続いて5月下旬にワークショップを開催。
そばとともに手のそれほどかからない作物を植えてみようと、
大豆とひまわりの種をまいた。
その後、1週間ほどして発芽。
しかし、その2日後、大豆の双葉が半分以上、何者かに食べられてしまっていた。

〈Sumally〉山本憲資
『距離をテクノロジーでハックする』
軽井沢でのライフスタイル

軽井沢で実現させたスマートハウス

取材日の軽井沢はあいにくの雨模様。
それでも「今日も日課の〈野鳥の森〉の散歩に行ってきました」と話すのは、
〈サマリーポケット〉などを展開するSumally Founder&CEOの
山本憲資(けんすけ)さん。軽井沢に拠点を移して3年目。
自然の中での暮らしを楽しんでいる様子が窺える。

山本さんが軽井沢に拠点を移したことがことさらトピックスとして扱われる理由は、
山本さんがスタートアップ企業の代表だからだ。
サマリー社は「『所有』のスタイルを進化させる」というコンセプトのもと、
宅配収納サービス〈サマリーポケット〉というサービスなどを展開している。
いわばデジタルを駆使した先端的ビジネスといえる。

六本木ヒルズでギラギラやってそうなイメージもあるかもしれないが、
新しいアイデアをもってサービスを提供するCEOも、
自然と近い暮らしを望んでいるのだ。

起床はだいたい5時頃。毎朝、近所の森を散歩し、時間がある日は温泉に入る。

起床はだいたい5時頃。毎朝、近所の森を散歩し、時間がある日は温泉に入る。

山本さんは、東京に住んでいるときから軽井沢をちょくちょく訪れていて、
軽井沢を好きになった。その思いが特に強くなったのは3年ほど前。

「土地の雰囲気が好きで定期的に訪れていて、
そのうちに思い切って軽井沢に拠点をつくってしまおうと。
当初は、月2回くらい、週末に来られればいいかなと思っていました」

そうして軽井沢で物件を探し始め、約1年ほど見て回った。
購入したのは、別荘エリアとして有名な千ヶ滝エリアの一角。
家の前に流れるせせらぎも気に入った。

「家を見てすぐにリノベーションのイメージが湧きました。
部屋はすべてぶち抜いて一度スケルトンにし、ワンルームにしました」

道からも奥まった場所に家はある。

道からも奥まった場所に家はある。

ワンルームのうえに窓ガラスが大きく、
外へとシームレスにつながっているような感覚でとても広く感じる。
骨格には手を加えていないというが、
数寄屋づくりのような屋根の張り出しに風情を感じる。
家の中から漏れる光が、一層それを強めるのかもしれない。

2019年末に家を購入、さあリノベーションの工事に入りかけた2020年3月頃になると、
新型コロナウイルスの流行が爆発した。

「それもあって別荘的な住まいではなく、きちんと快適に生活できるように、
ちょっと力を入れてリノベーションすることにプランを変更したんです」

窓が大きく、抜けがいい。外に見えるのは緑のみ。

窓が大きく、抜けがいい。外に見えるのは緑のみ。

拠点自体を軽井沢に移すと決めたので、当然、住むには申し分ない設備が整っている。
都会よりむしろ便利なのでは? という感じでIoT化など、最先端のテクノロジーを駆使。
「距離をテクノロジーでハックする」と表現する山本さん。

「どこまで物理的な場所がボトルネックにならないように暮らせるかな、
と取り組んでみるのはおもしろそうだと思いました。
自然環境を享受したいと思って軽井沢に来たわけで、
たとえば電波がつながらないといった不便な暮らしをしたいわけではありませんから」

掃除機やエアコンなどはリモートで動かせるので、
東京からの帰り道に遠隔で作動させておくことができる。
玄関のインターフォンを鳴らすと、自分のスマートフォンに連絡が届く仕組み。
軽井沢の家に来た宅配便などへの指示も、東京にいても可能なのだ。

「コロナ禍になる前の数年のテクノロジーの進化が、
現在のリモートライフを支えている気がします。
ZOOMやSLACKなどのサービス、スマホの通信速度など。
10年前だったら、
こんなにスムーズにリモート的な環境に移行できていなかったと思います。
僕個人というより、社会全体としてインフラが整いつつあったところに、
コロナがトリガーとなりましたね」

このような暮らしは、サマリーの基本的な考え方にも通じる。
常に所有や距離、場所など、
フィジカルであることのユーザーエクスペリエンスについて
問い直してきたスタートアップの側面もある。

350もの自治体が勢ぞろい
大規模移住相談会
「ふるさと回帰フェア」で
理想のライフスタイルと
マッチする移住先は
見つかったのか?

「ヤギと一緒に暮らしたい」

ふと私の中から出てきたひと言に、自分で驚いたが、
その場にいた友人はもっと驚いていた。

「東京では難しいんじゃない?」
「なんでヤギなの?」

自分でも説明するのが難しかったが、
きっとヤギがのんびり草を喰んでいる、広々とした風景の中で、
生活してみたいということなのだと思う。

フリーランスのフォトグラファーというお仕事をしている私、黒川ひろみは、
日本各地に出張する機会をいただくことがたびたびあって、
そんな風景を幾度となく目にしていたから、かもしれない。

出張先の淡路島で出会ったヤギ。

出張先の淡路島で出会ったヤギ。

現在、東京を拠点に活動をしていて、
ずっと憧れていた写真を撮るお仕事ができて、
東京にはたくさんの知り合いや仕事仲間もいる。

だから◯◯県に移住がしたくてたまらない、というよりは、
ヤギを飼うことは本当に難しいのだろうか、
「好きな仕事」と「理想の生活」は両立できるのかというシンプルな問い。

そして憧れている先輩フォトグラファーが移住して、
その地で新たに人脈を広げたり、
写真のお仕事を充実させたりしている様子を
SNSで見つけたことをきっかけに、
東京以外の選択肢もあるのでは? と淡く期待をふくらませた。

そんな将来の可能性を拡充するために、
9月25日〈東京国際フォーラム〉にやってきた。

「ふるさと回帰フェア2022」の入場ゲート。

「ふるさと回帰フェア2022」の入場ゲート。

観光者視点ではなく“生活者視点”で

全国から350もの自治体や団体が集う「ふるさと回帰フェア」。
東京・有楽町の〈ふるさと回帰支援センター〉が主催し、
移住希望者や、検討中の人が、
実際に自治体の移住担当者とお話できる貴重な機会だ。

11時に到着したが、すでに大盛況で、
熱心にうなずきながら説明を聞く人、
パンフレットを握りキョロキョロとしている人、
何か新しいことが始まるような高揚感が会場に満ちていた。

都道府県の総合案内ブースと、自治体ごとのブースが並ぶ。のぼりや揃いの衣装、展示物など各自治体工夫を凝らしていて、眺めるだけでも楽しい。

都道府県の総合案内ブースと、自治体ごとのブースが並ぶ。のぼりや揃いの衣装、展示物など各自治体工夫を凝らしていて、眺めるだけでも楽しい。

まず先に向かったのは、故郷である北海道のブース。
深川市、聞いたことがある地名に安心感を覚え、
まずはお話を聞いてみた。

担当してくださったのは同年代くらいの女性で、
市内のありのままの様子をお話してくれた。
(勢いよく話を聞きに行って、
うっかり名刺をもらい忘れてしまった……)

彼女によると深川市は、スーパーには地元野菜もたくさん並び、
お米の生産量は道内3位と豊かな農地が広がる美しい場所だが、
インターチェンジも近く都市にも出やすい穴場とのこと。
観光パンフレットには載っていないような、
生活者視点のお話がありがたい。

「実はヤギを飼いたいと思っていて……」

変なやつと思われるかなと少し心配しながらも、
自分が考える理想の生活を伝えてみると、

「へえ、そうなんですね!」

と落ち着いた笑顔。
「え!?」とか「なんで!?」といつものような
リアクションが来るかと思っていたので拍子抜けした。

「私の知り合いにも飼っている人いますよ」
「かわいいですよね〜」

とのこと。
あれ、犬の話だっけと思うくらい自然に話が進んでいく。

移住した先でヤギを当たり前のように飼っている自分の姿が、
より現実味をおびて浮かび、一気に楽しくなって、
時間が許すかぎりさまざまな地域に顔を出した。

自然と人をつなぐ
木育マイスター
〈てしかが自然学校〉萩原寛暢さん

豊かな自然を誇る、北海道から生まれた「木育」

北海道には、木育マイスターという制度がある。
「木育」とは、「木とふれあい、木に学び、木と生きる。」
をモットーにした、北海道から生まれた言葉。
そして木育マイスターは、その理念に基づき活動できる人。

2010年から育成研修が始まり、
北海道認定の木育マイスターは、299人にも及ぶ(2022年3月現在)。
その栄えある第1期生が、弟子屈町で活躍している。

弟子屈町にある、カラマツ林にて。身長181センチの萩原さんも見上げる、立派な樹木が並んでいる。

弟子屈町にある、カラマツ林にて。身長181センチの萩原さんも見上げる、立派な樹木が並んでいる。

〈てしかが自然学校〉を主宰する、
自然ガイドの萩原寛暢さん。通称“ハギー”。
アウトドアのイベントで、学校の行事で、登山道整備で……
数か月に1度は町議会でもよく見かける、
町民が信頼を寄せる人気者だ。

萩原さんの拠点は、カラマツ林が広がる約10ヘクタールの原野にある。
敷地内には2棟のログハウスがあり、ひとつは4人家族が住む家に、
もうひとつは「原野のもり」という名の「木育」のフィールドになっている。

 

2011年から管理を任されているカラマツ林には、住居(手前)と「てしかが自然学校」の拠点となるログハウス(奥)がある。

2011年から管理を任されているカラマツ林には、住居(手前)と「てしかが自然学校」の拠点となるログハウス(奥)がある。

「元々はカラマツの人工林で、
ササがぼさぼさに生えていたので
草刈りをしたり、間伐材を馬で引っ張り出したり、
薪割り機を使ったり、子どもたちと遊びながら整備しました」

こうした森の手入れも、立派な「木育」。

ここには散策路もつくられていて、
樹齢50年以上の背の高いカラマツの間に、
イタヤカエデ、ミズナラ、タラノキ……
さまざまな広葉樹も自由に育っている。

ポップな海苔ブランドを
手がける漁師
スケートランプがある家

暮らしの真ん中に、階段

三重県四日市市に、〈BESS〉の「ワンダーデバイス」モデルを
10年前に建てた矢田さん一家。新一郎さん、美保子さん、
そしてふたりのお子さんと暮らしている。
家の前まで行くと、
駐車場にはカスタムされた古い〈NISSAN〉テラノと〈ルノー〉カングーが並び、
その横には小さなスケートボードのセクションが鎮座。
どうやらモノにこだわりがあり、暮らしを楽しんでいる様子が窺える。

リラックスできるソファでくつろぐ新一郎さんと美保子さん。

リラックスできるソファでくつろぐ新一郎さんと美保子さん。

家を建てるとき、BESSのワンダーデバイスをすぐに気に入ったという新一郎さん。
その理由は
「1階の部屋の真ん中に階段があり、区切られていないユニークなつくり」だという。
(※現行モデルでは階段の位置は異なります)

「部屋の真ん中にあると頭もぶつけるし、邪魔でもありますが、
なんとなく仕切られているのがいいですね」

部屋の真ん中にある階段が「ゆるい」仕切りとなる。

部屋の真ん中にある階段が「ゆるい」仕切りとなる。

この「なんとなく」が、実は重要。
矢田家では、ダイニングキッチンとリビングのようにふわっと分かれている。
壁などできっちりと部屋に分けられていると狭く感じ、一方で何もないと落ち着かない。
ゆるりとしたつながりをもたせている。

「2階に子供部屋があるので、自分の部屋に上がるときに必ずここを通ることになります。
そこで顔を合わせます」

生活動線を家の中心に置くと、家族の様子がよくわかる。
お互いの息遣いを感じられる家だ。

2階の子供部屋は、ひと部屋を上部が開いている間仕切りで分けた。

2階の子供部屋は、ひと部屋を上部が開いている間仕切りで分けた。

引越し当初、子どもたちに木で囲われたBESSの家は好評だった。
それは自分の子どもたちだけではないようで……。

「息子の友だちが毎日のように遊びにきていたんですよ。
それも階段の周りを走り回る。そして元気にウッドデッキに飛び出していく。
鬼ごっこ系がやばかったですね(笑)」

これもひらけた空間があるからこそ。
自分たちのリラックスする居場所がなくなってしまったが、
「楽しんでもらえている」と受け入れていた。
子どもの居心地はよかったということである。

小豆島に本屋さんがオープン!
〈TUG BOOKS〉で出会う
セレクトされた素敵な本たち

“お店を持たない本屋さん”が、ついにお店をオープン!

小豆島にまたひとつおもしろい場所が増えました。
TUG BOOKS(タグブックス)〉という名の本屋さんです。

TUG BOOKSのこと、本屋の主である田山直樹くんのことは、
以前この小豆島日記で紹介しました。
ちょうど1年前です。
当時はお店を持たない本屋さんとして活動していて、
私たちが運営している〈HOMEMAKERSカフェ〉の庭でも本のイベントを開催してくれました。

HOMEMAKERSカフェで2021年秋に開催されたTUG BOOKSのブックイベント。

HOMEMAKERSカフェで2021年秋に開催されたTUG BOOKSのブックイベント。

本と出会える貴重な機会。島で暮らしている知人や友人がたくさん来てくれました。

本と出会える貴重な機会。島で暮らしている知人や友人がたくさん来てくれました。

さて、田山くんはこのイベントのあとも島のあちこちで本にまつわる企画を実施しながら、
お店オープンにむけてじわじわと準備を進めてきました。
彼が「本屋」という場として選んだのは、古い木造の民家です。
立派な木材でつくられた歴史ある古民家という感じではなくて、古い家です(笑)。
おー、そこで本屋さんをやるんだー、すごいなぁというのが話を聞いたときの最初の印象。
改修工事は2022年3月から始まりました。

海に向かって続く細い道を歩いていくと、ぽつんと建っている古い家があります。ここを本屋として改修。

海に向かって続く細い道を歩いていくと、ぽつんと建っている古い家があります。ここを本屋として改修。

本屋の名前は〈TUG BOOKS〉。書物の海の水先案内。

本屋の名前は〈TUG BOOKS〉。書物の海の水先案内。

札幌〈500m美術館〉で
上遠野敏さんの個展。
祈りを込めた無数の作品たち

三笠の幾春別(いくしゅんべつ)地区で制作を続けるアーティスト

3年前に閉校した旧美流渡(みると)中学校の活用プロジェクトを
私たちが本格的に始めたのは昨年の夏。
その頃から、親身になって活動をともにしてくれたアーティストがいる。

三笠市の幾春別地区にアトリエがあり、札幌市立大学名誉教授の
上遠野敏(かとおの・さとし)さんだ。
その来歴や美流渡との関わりについては以前の連載で紹介したが、
今回は、札幌にある〈500m美術館〉で10月26日まで開催中の
『上遠野敏展 命と祈りの約束』が生まれるまでのプロセスについて書いてみたい。

幾春別のアトリエで制作する上遠野さん。撮影:佐々木育弥

幾春別のアトリエで制作する上遠野さん。撮影:佐々木育弥

〈500m美術館〉は、札幌市営地下鉄の大通駅とバスセンター前駅を結ぶ
コンコースを利用してつくられており、今回は8基あるガラスケースに作品が展示された。

それぞれにテーマが設けられていて、「羊毛・毛皮」「綿毛・植物」「塩」といった
上遠野さんが関心を寄せる素材から展開したものや、
神仏の伝承がある風景を撮影した写真や天気図を集めたものなど、多様な作品が発表された。

8基あるガラスケースごとにテーマが設けられている。全国各地の神仏の伝承がある場所を40年以上撮影し続けている『ネ・申・イ・ム・光景』シリーズ。

8基あるガラスケースごとにテーマが設けられている。全国各地の神仏の伝承がある場所を40年以上撮影し続けている『ネ・申・イ・ム・光景』シリーズ。

1基目のガラスケースには、羊毛を素材とした作品が並べられている。
羊の原毛に洗剤をかけ圧力や振動を加えてフェルト化させることによって、
これまでさまざまな作品が生み出されてきた。

例えば『MOTHER』シリーズでは、ガウンのようなかたちのなかに
臍の緒をかたどった紐状のものがあり、内側には1頭の子羊が隠れている。
このシリーズは、塩などの別の素材によっても展開されていて、
それらは「生命はどこから来て、どこへ向かうのか」という、
大きな問いかけのなかから生まれてきたものだという。

中央が『MOTHER』。

中央が『MOTHER』。

『MOTHER』の奥に目を凝らすと1頭の羊が。羊毛を使用するのは、母体のなかで生命を育む「羊水」に通じるから。

『MOTHER』の奥に目を凝らすと1頭の羊が。羊毛を使用するのは、母体のなかで生命を育む「羊水」に通じるから。

羊毛による新シリーズとなったのは『家族の肖像』。
SNSで提供を呼びかけ集まった9家族のぬいぐるみをフェルトで包んだ作品。
ぬいぐるみには、子どもたちが愛情を傾けた想いや家庭で過ごした時間が蓄積されている。
それらをフェルト化させた羊毛で封印し一堂に並べることで、
時代性や地域性が浮かび上がってくるのではないか。そんな考えをもとに制作された。

「僕は彫刻家ですが、作為的ではない表現をしていきたいと思っています」

アトリエで制作中の『家族の肖像』。

アトリエで制作中の『家族の肖像』。

昨年、上遠野さんのアトリエを訪ねたとき、ちょうど『家族の肖像』シリーズの制作中だった。
ぬいぐるみの表面に羊毛を置いてニードルという専用針で刺すことによって、
繊維を絡ませフェルト化していくのだが、予想を超える手間のかかる作業だった。
ぬいぐるみの色が透けないようにするためには、羊毛を3層以上重ねる必要がある。
さらに縫い目の部分にニードルが当たると、針が折れてしまうことがあるので、
慎重にそこを避けながら刺さなければならない。

「大きいものだと1か月くらいかかります」

今回の展覧会では、60体のフェルトでくるまれたぬいぐるみが展示された。
集まったぬいぐるみは全部で270体。展示終了後もこのシリーズは継続されるという。

ぬいぐるみを羊毛で包む。ニードルで何度も刺してフェルト化していく。

ぬいぐるみを羊毛で包む。ニードルで何度も刺してフェルト化していく。

展示された『家族の肖像』。

展示された『家族の肖像』。

スマホを置いて、
芋を掘り、栗を剥く。
デジタル・ミニマリストと田舎暮らし

いつのまにかスマホに時間を奪われていない?

最近、『デジタル・ミニマリスト 本当に大切なことに集中する』
(著者:カル・ニューポート、翻訳:池田真紀子/早川書房)
という本を読みました。

ついつい手にとって見てしまうスマートフォン。
無意識にSNSアプリを立ち上げて、スクロールしながら「いいね!」して、
はっと気づけば大切な自分の時間が、知らないうちに30分も1時間もなくなっていたり。
どうやったら、スマホやSNSに時間を奪われず、余計な情報を見て
心をざわつかすこともなく、自分のやりたいこと、大切なことに集中できるのか、
そんなことが書かれている本です。

今やどんな地方の末端でもインターネットに接続できる環境があって、
離島の農村で暮らしている私たちも、もれなく活動時間のうちの
ほとんどがオンライン状態で、ピコーンピコーンと鳴る通知に毎日気をとられています。
でも地方で商売をする上で、オンラインであることが必須なのも間違いないです。
お客さまと直接つながることができて、私たちのことを知ってもらうことができる。

要はその使い方さえ間違わなければすばらしいツールなんですが、
最近の私はスマホに時間を奪われぎみ、集中を奪われぎみな状態です。

すっかり秋らしい風景になった小豆島。柿があちこちで実っています。

すっかり秋らしい風景になった小豆島。柿があちこちで実っています。

今年の秋は彼岸花が一斉にとてもきれいに咲きました。

今年の秋は彼岸花が一斉にとてもきれいに咲きました。

この本のなかで、ちょっと興味深かったことがあったので、
今回はそのことについて考えてみようと思います。

著者は、「すばらしい人生には質の高い余暇活動が不可欠である」という前提のもと、
充実した余暇活動、言い換えると趣味、好きなことを生活に取り入れ始めることで、
それまでのスマホ習慣が急につまらないものに思えるようになる。
それがデジタル・ミニマリストにつながっていくと書いています。

その質の高い余暇活動としてあげているのが、家をDIYで直したり、
草刈りしたり、薪を集めたりする、体を動かす活動。
一見すると、それ仕事じゃんというような重労働を
趣味として楽しんでいる人たちがいると。

おや?
それって、私たちの生活そのものじゃないか!
畑で野菜を地道に育て、草刈りをして、薪を集めて、家を直して。
この、日々やらなきゃいけないと思っていたことが、
実は素晴らしい人生に必要不可欠な趣味として捉えることができるのかと、
はっとしたんです。

畑にある大きな栗の木。台風で何本か枝が折れてしまったのでその片付けと栗拾い。

畑にある大きな栗の木。台風で何本か枝が折れてしまったのでその片付けと栗拾い。

廃校舎が日を追うごとに活気づく。
「本物」のアートと
音楽が集まった40日間

撮影:佐々木育弥

年3回の開催で4300人が来場!

岩見沢市の山あいにある、3年前に閉校した旧美流渡(みると)中学校にて、
私が代表を務める地域PR団体が、今年は年3回、ふたつの展覧会を同時開催してきた。
地域のつくり手の作品を集めた『みる・とーぶ展』と
美流渡に移住した画家・MAYA MAXXさんによる『みんなとMAYA MAXX展』。
春、夏、秋で合計40日間開催した展覧会が、先日ついに閉幕した。

校舎のひさしには、MAYA MAXXさんが制作した赤いクマの立体「Amiちゃん」が設置され、来場者を出迎えた。

校舎のひさしには、MAYA MAXXさんが制作した赤いクマの立体「Amiちゃん」が設置され、来場者を出迎えた。

美流渡地区は過疎化が進んでおり、人口わずか330人。
告知も会場設営も、参加メンバーが知恵を出し合い手づくりだったけれど、
札幌や空知(そらち)管内などから多くの人が足を運んでくれ、
トータルで約4300人の来場者があった。
秋の開催で実施したアンケートによるとリピーターが約半数。
徐々にこの展覧会が定着していることが実感できた。

MAYA MAXXさんが筒状の段ボールに絵を描いた作品。「どうくつ」というタイトルで、子どもがくぐって遊べるようになっている。(撮影:佐々木育弥)

MAYA MAXXさんが筒状の段ボールに絵を描いた作品。「どうくつ」というタイトルで、子どもがくぐって遊べるようになっている。(撮影:佐々木育弥)

秋のみる・とーぶ展では、作品発表とともに、土日祝日はイベントが目白押しだった。
特に人気だったのは、MAYAさんによる『自画像を描こう』。

「鏡で自分の顔をよーく見てください」

そんなMAYAさんの呼びかけから始まり、
目、まつげ、まゆ、鼻と顔のパーツを順番に描き、
パーツが全部描けたあとに輪郭を描いていった。

MAYAさんによると、最初に輪郭を決めてしまうと、
そこに収めなければならないという意識が働き、
のびのびとした気持ちで描くことができなくなってしまうそうだ。
また、描いたのは紙でなくキャンバス。
一度はキャンバスに絵を描いてほしいという思いと、
子どもが描いた絵は、年月が経つと整理してしまうことが多いが、
キャンバスであれば大切に保管してもらえるのではないかという思いからだ。

「子どもが描いた自画像は、リビングなど、よく見える場所にかけておいてほしいです」

年齢ごとの自分の顔を残しておくのは大切なことだとMAYAさんは語った。

自画像を描いた参加者と記念撮影。(撮影:佐々木育弥)

自画像を描いた参加者と記念撮影。(撮影:佐々木育弥)

絶景ヒルクライムや藁細工、
からし漬けの食べ比べにも挑戦!
わたし、移住してコレ始めました


今月のテーマ 「移住して始めたこと」

新しい土地へと移住した人、IターンやUターンをした人など
さまざまな想いを胸に、住まいを移していまの暮らしを楽しんでいる人たちは
新天地でどんなことをしているのでしょうか?

そこで各地で暮らす本連載ライター陣に、
「移住して始めたこと」について教えてもらったところ、
新しい挑戦が人との交流、趣味、仕事へと繋がっていっているようです。

移住を考えている人もそうでない人も
まちの魅力を再発見できるアクション、始めてみませんか?
ちょっとしたことが、自分のフィールドを広げてくれます。

【秋田県にかほ市】
まちの地形を体感できる週末部活動!

2236メートルの標高を持つ鳥海山と、日本海に囲まれた秋田県にかほ市。
この特異な地形によって絶好のサイクリングコースになっているんです。

山と海の直線距離がわずか16キロという地形のおかげで、
海岸沿いは平坦ですが、山へ向かえばすぐに激坂に。
ロードバイクの醍醐味のひとつであるヒルクライムを堪能でき、
きつい坂道を登りきると、眼前にはダイナミックなパノラマが広がります。

サイクリングコース

その風景を目にすると
自分の力でこんなに高いところまで登ってきたんだという
達成感でいっぱいになります。
また、その坂道を海に向かって下れば、
視界いっぱいに広がるのは真っ青な海。
まっすぐに延びる水平線や、同じ景色は二度とない夕陽は、
どれだけきつい坂道でもまた登りたくなってしまうほど魅力的。

自転車のレースも行われ、
県外からもサイクリング目的の観光客が耐えないこの地には、
地元のロードバイカーもたくさんいます。
私も地元の方に誘われて、週末自転車部に入部しました。

自転車

ママチャリにしか乗ったことのなかった私も、
人生で2番目に高い買い物をしてロードバイクを手に入れました。
これまで車で行っていた場所に自転車で訪れると、
見たことのある景色であっても感動はひとしお。
また、自転車で時間をかけて走ることで、
地形やまちの様子をじっくりと感じることができるのも魅力です。
みなさんもぜひ、絶景ヒルクライムを始めてみませんか。

ヒルクライム

photo & text

國重咲季 くにしげ・さき

京都府出身。秋田県の大学に進学したことを機に、東北各地の1次産業の現場を訪ねるようになる。卒業後は企業に勤めて東京で暮らした後、にかほ市で閉校になった小学校の利活用事業「にかほのほかに」に携わるべく秋田にAターン。地域で受け継がれてきた暮らしを学び、自給力を高めることが日々の目標。夢は食べものとエネルギーの自給自足。

〈一般社団法人Pine Grace〉
酒巻美子が助けられた「女神の木」
アカエゾマツの甘い香り

アカエゾマツが与えてくれた多くの出会いと、さまざまな可能性

アカエゾマツに惹かれている。
北海道、とくに道東と道北に多く分布し
クロエゾマツとともに「北海道の木」に指定されている常緑針葉樹。

赤蝦夷松。英語名は、Sakhalin spruce(サハリン・スプルース)。高さは30〜40メートルにもなる。

赤蝦夷松。英語名は、Sakhalin spruce(サハリン・スプルース)。高さは30〜40メートルにもなる。

ウロコ状になった赤茶色の樹皮と、
触るとチクチクする葉が特徴で、
真っ直ぐ天に向かって伸びる凛とした感じが、北の大地によく似合う。

エゾマツと並んで北海道を代表する針葉樹、トドマツとは、葉先の形が大きく異なる。触ると痛いのがアカエゾマツだ。

エゾマツと並んで北海道を代表する針葉樹、トドマツとは、葉先の形が大きく異なる。触ると痛いのがアカエゾマツだ。

アカエゾマツ(以下、アカエゾ)の世界へと導いてくれたのは、酒巻美子さん。
「森林、樹木、草花の機能成分を有効利用し、動物や人の健康福祉に貢献する」
ということを目的に掲げる、〈一般社団法人Pine Grace〉の副代表である。

酒巻さんが所属する『一般社団法人Pine Grace』は、2018年に弟子屈町に蒸留所を設立した。

酒巻さんが所属する〈一般社団法人Pine Grace〉は、2018年に弟子屈町に蒸留所を設立した。

酒巻さんがアカエゾに夢中になったきっかけは、香りだった。
「その日は雨上がりで、地面から水蒸気が上がっていて、
アカエゾの森に入った途端、めっちゃいい香りがしたんです」
と、まるで昨日のことのように臨場感たっぷりに
感動の体験を話してくれる。

「森を案内してくれたガイドの方に『何の香り?』と尋ねたら、
『いろんな香りが混ざっているからわからないね〜』なんて
はぐらかされたんだけど……さらに奥へと歩いていったら
一本のアカエゾに洞があって、そこに樹液が垂れていて、
近づいたらまさに! その香りだったんです」

「アカエゾは、他の針葉樹にはない甘い香りがするんです。アイヌの人たちは『女神の木』と呼んでいたそうです」と酒巻さん。

「アカエゾは、他の針葉樹にはない甘い香りがするんです。アイヌの人たちは『女神の木』と呼んでいたそうです」と酒巻さん。

今年も大ボリュームで開催。 国内最大級の移住マッチングイベント 〈ふるさと回帰フェア2022〉

今年は参加自治体も増えました!

全国の自治体と連携して移住を支援する〈認定NPO法人ふるさと回帰支援センター〉が、
2022年9月25日(日)東京・有楽町の〈国際フォーラム〉にて、
国内最大級の移住マッチングイベント〈第18回ふるさと回帰フェア2022〉を開催します。
北海道から沖縄まで、全国の350の自治体・団体が一堂に会する移住相談コーナーを設置。
住まい、仕事、子育てなど移住に関わるさまざまな相談に対応します。
イベントは参加無料、事前申込み不要です。

前日の24日(土)には、「地方移住の20年、さらなる飛躍のために」と題した
前夜祭シンポジウムを開催。
パネリストとして、群馬県知事 山本一太氏ら4名をお招きし、
移住推進と地域創生についてたっぷりと話し合います。
こちらの前夜祭シンポジウムは、イベント公式特設サイトからの申し込みが必要です。

また、毎年おなじみになりつつある〈日本全国ふるさとマルシェ〉では、
「わがまちの農産物・特産品を都会の方に届けたい」と、
全国から自治体・団体が、新鮮な生鮮食品や地域で自慢の加工食品などを販売します。

ブースの様子

漠然と移住を考え始めたという方でももちろんOK。
むしろそういう方にとって、たくさんのブースで自治体を比較できるこの機会は、
まさに好機。
ぜひ足を運んでみてくださいね。

information

map

ふるさと回帰フェア2022

日時:2022年9月25日(土)10:00〜16:30

会場:東京国際フォーラム ホールE(地下2階)

住所:東京都千代田区丸の内3-5-1 (JR・東京メトロ有楽町駅より徒歩1分)

主催:認定NPO法人ふるさと回帰支援センター

Web:公式サイト

〈BESS〉の「栖ログ」は、 小屋で、平屋で、ログハウス。 小さく建てる、という逆転の発想とは?

新しい「平小屋(ひらこや)」という文化

断捨離という言葉が当たり前のように使われる世の中になっています。
家にいろいろなモノがついつい溢れてしまうという人も多いと思います。

暮らしに必要なものとは何か? もっといえば、自分にとって重要なものとは何か?
そんなことを今一度考えてみたくなる家のカタチがあります。
ログハウスを多数展開している住宅メーカー〈BESS〉から
新発売された「栖(すみか)ログ」です。

栖ログは小屋であり、平屋であり、ログハウス。
その融合である“平小屋”です。
小屋裏(屋根裏)はあるものの、基本的には平屋づくりであり、
コンパクトな設計になっています。

かわいい平屋に憧れている人も多いはず。

かわいい平屋に憧れている人も多いはず。

栖ログをデザインしたBESSチーフデザイナーの山中祐一郎さんは
「栖とは鳥の巣の意味。鳥の巣って家ではなく、仮のもの。
そのように、もっと軽やかに暮らしてほしい」と言います。
家ではなく、小屋で暮らすという提案です。

「鳥の巣は“子宮の外部化”であって、子供を育てるためにある。
つまり目的がはっきりしています」

暮らしの目的は何か、何がいちばん大切か。
家が大きいと、その箱に合わせてモノがどんどん増えていきます。
収まりがつかなくなって、
より広い家に引っ越しをしたという経験を持つ人も多いのではないでしょうか。

ただ物を整理して処分していく断捨離というよりは、
自分にとって何が大切かを理解すれば、自ずと目的はシンプルになる。
すると自分らしい暮らしが見えてきそうです。

栖ログのシンボルは鳥?

栖ログのシンボルは鳥?

土偶と動物マスクを制作! 
心からやりたいことを
自由に発表できる『みる・とーぶ展』

出版活動を超えた作品づくりが始まって

北海道岩見沢市の閉校した旧美流渡(みると)中学校で年3回、
有志が集まって展覧会を開催することになり、
これまでこの連載ではさまざまな角度からそれについて書いてきた。

地域のつくり手の作品を集めた『みる・とーぶ展』と、
画家MAYA MAXXさんによる『みんなとMAYA MAXX展』。
そこに関わるメンバーたちはつねに新作を生み出したり、
クオリティアップを目指したりと日々進化を遂げている。

万字地区でハーブブレンドティーをつくる〈麻の実堂〉。回を重ねるごとにブレンドの種類も増え、秋の展覧会では試飲会も開催。

万字地区でハーブブレンドティーをつくる〈麻の実堂〉。回を重ねるごとにブレンドの種類も増え、秋の展覧会では試飲会も開催。

変化は、私自身にも起こっていて、いま新たな作品づくりが始まっている。
これまで『みる・とーぶ展』では、〈森の出版社 ミチクル〉という活動名で、
オリジナルの書籍を販売してきた。
私が2016年にこの地域に山を買った体験談をまとめた『山を買う』や、
北海道に暮らす人々と協力しながら本をつくる「ローカルブックス」というレーベルなど。
展覧会に合わせて毎回1冊ずつのペースで新刊を出していた。

森の出版社ミチクルの書籍。北海道の人々とつくった書籍をはじめ、この地に自生する植物をテーマにした絵本なども。

森の出版社ミチクルの書籍。北海道の人々とつくった書籍をはじめ、この地に自生する植物をテーマにした絵本なども。

この夏には縄文時代につくられた、ヒトをかたどった土偶をテーマに絵本『DOGU』を刊行。
このとき私は、以前からつくり続けていた土偶や土器も発表しようと考えた。
昨年、一昨年と冬の間、MAYAさんが、近くにあった陶芸のできる施設に通っていて、
私も一緒に週1回、土偶や土器制作を行っていた。
もともと美術大学に通っていたこともあって、何かをそっくりに写しとることが得意。
ずっと興味を持っていた縄文時代の造形を、いつか自分で再現してみたいとつねづね思っていた。

夏の展覧会。中央に絵本『DOGU』を置き、周りに再現した土偶や土器を並べた。

夏の展覧会。中央に絵本『DOGU』を置き、周りに再現した土偶や土器を並べた。

主に青森の三内丸山遺跡で出土した板状土偶を再現。野焼きで焼成した。

主に青森の三内丸山遺跡で出土した板状土偶を再現。野焼きで焼成した。

岩見沢のみなさんに贈り物を。
MAYA MAXXが高さ10メートルの
食品冷凍庫に描いたクマ

「あの壁に描きたい!」そのひと言から始まった

地域の閉校した中学校で、2020年にこの地に移住した
画家・MAYA MAXXさんの展覧会『みんなとMAYA MAXX展』を
7月中旬から月末まで2週間開催した。
展覧会の撤収をした翌日、休む間もなくMAYAさんは、
次のプロジェクトをスタートさせた。

プロジェクトの舞台は、美流渡(みると)地区から車で10分ほどまちのほうへと向かった
志文(しぶん)地区にある食品メーカー〈モリタン〉の巨大な冷凍庫。
全長100メートル、高さ10メートルにもなるこの建物の壁面に絵を描くことになった。

きっかけとなったのは昨年のこと。
私が代表を務める地域団体が、旧美流渡中学校のさまざまな活用の窓口となったことだ。
閉校して3年。
この地域は豪雪地帯であることから、1階の窓すべてに雪除けの板が貼られており、
それらが人気のなくなった場所であることをありありと感じさせていた。
地域の人たちからも、閉鎖されて寂しいという声があがっていた。
そんななかで、MAYAさんがあるとき「ここに絵を描いてみよう」と提案してくれた。

中学校と同時に閉校した、隣接する小学校の校舎も合わせて、窓板は45枚以上。
地域の人々の手を借りながら、MAYAさんは約3か月間絵を描き続けた。
窓板の絵が仕上がったあとには、校舎の向かいに建つ
〈安国寺(あんこくじ)〉にも絵を設置。お寺ということで、
涅槃図(ねはんず、釈迦が入滅する様子を描いた絵)を思わせるクマが描かれた。

2021年、旧美流渡中学校の窓板にMAYAさんは絵を描いた。

2021年、旧美流渡中学校の窓板にMAYAさんは絵を描いた。

安国寺に設置されたクマの涅槃図。

安国寺に設置されたクマの涅槃図。

こうした制作の様子を日々見つめていた人がいた。
それがモリタンの平井章裕(ひらい あきひろ)社長だった。
モリタンは、岩見沢の美流渡地区と志文地区に加工センターを持っていて、
社長はその2か所を行き来する車中から、校舎の制作を見守っていた。
当初は校舎の敷地のみのプロジェクトかと思っていたところ、
お寺に絵が設置されたのを見て「モリタンにも絵を描いてもらいたい」と考え、
私たちに連絡をしてくれた。

モリタンの平井社長(右)。

モリタンの平井社長(右)。

社長は当初、敷地内に看板のようなものを設置し、そこに絵を描いてもらおうと考えていた。
しかし、打ち合わせの席でMAYAさんは思いがけない提案をした。

「敷地が広いので看板を立ててもそんなに目立たないと思います。
冷凍庫の壁に大きなクマの絵を描きたい」

高さが10メートルにもなる壁に描くとなると、これは大きなプロジェクトだ。
その場で、すぐには了承が得られないのではないかと思ったが、
この提案に対して社長は具体的な方策を考えてくれた。

「倉庫の土台は、土が盛られているので足場を組むのは難しそうだな」

打ち合わせから1か月ほど経った昨年末、社長から
「足場を組むとなるとかなり大がかりになることから、
高所作業車をレンタルして進めたい」という提案があった。
そして、自ら高所作業車の技能講習を受けてくれることになった。

高所作業車。「ブーム」と呼ばれる部分が伸びて、高い位置での作業が可能になる。

高所作業車。「ブーム」と呼ばれる部分が伸びて、高い位置での作業が可能になる。

小豆島で草木染めをする〈月樹舎〉と
『植物からのメッセージ』を
伝える本をつくる

美しい植物の色に。月樹舎の草木染め

「植物からのメッセージを伝える本をつくりたい」

そんな話が始まったのは、2020年夏。もう2年前になります。
長い時間をかけて、『植物からのメッセージ』という本が
この夏にようやくできあがりました。
今回は、この本ができるまでのお話をしたいと思います。

この本の著者は、〈月樹舎(つききしゃ)〉の植松優子さん。
優子さんは、2013年に小豆島に引っ越してきて、
瀬戸内海の見えるとても素敵なアトリエで、
レッグウォーマーや腹巻きなどの衣類を草木で染めています。
優子さんの染めたレッグウォーマーは、色もつけ心地もやさしくて、
私も一年中お世話になっています。

小豆島で草木染めをする月樹舎の植松優子さん。

小豆島で草木染めをする月樹舎の植松優子さん。

月樹舎のレッグウォーマー。手や足先が冷えやすい私も一年中愛用しています。

月樹舎のレッグウォーマー。手や足先が冷えやすい私も一年中愛用しています。

月樹舎のアトリエ兼自宅の窓からは瀬戸内海が一望できます。いつもここに行くと癒やされます。

月樹舎のアトリエ兼自宅の窓からは瀬戸内海が一望できます。いつもここに行くと癒やされます。

月樹舎の草木染は、植物を集めるところから始まります。
小豆島で生育している草花や、畑で育てたハーブなど、
染める日に合わせて、その時期いちばん力強いと感じる植物を選びます。

セージ、ラベンダー、ミント、びわ、よもぎ、けやき、マリーゴールドなど、
これまで染めで使った植物は50種類ほど。
集めた植物をきれいに洗い、植物のエキスがたっぷり出るように細かく刻み、
大きな鍋でぐつぐつと煮込みます。

ゆっくり植物エキスを抽出し、
黄色、オレンジ、ピンク、紫、シルバー、グリーン、茶色、水色など
天然の美しい色を布に移し込んでいきます。

販売されている粉の染料などを使うのではなく、生きている植物を集めたり、
自分で育てるところから草木染めを始めるというのは
手間と時間のかかる大変なことだと思います。
でも、そうやって植物に接することで、優子さん自身も
植物からパワーをもらったり癒やされたりしているそう。

ホームメイカーズの畑にも染める植物を収穫しに来てくれます。これはマリーゴールドの花。

ホームメイカーズの畑にも染める植物を収穫しに来てくれます。これはマリーゴールドの花。

マリーゴールドの花で鮮やかな黄色に染まったレッグウォーマーと腹巻き。

マリーゴールドの花で鮮やかな黄色に染まったレッグウォーマーと腹巻き。