長崎県民なら知っている?『和・華・蘭』の歴史を感じる銘菓3選|ニッポンおやつ図鑑

カスドース、ちゃんここ、よりより
日本各地に根付く、愛らしくも味わい深い「おやつ」の世界を紐解く連載。今回の舞台は、日本(和)、中国(華)、西洋(蘭)の文化が混ざり合い、独自の発展を遂げた「和華蘭(わからん)文化」が息づく長崎県。この地で古くから愛され続けている、歴史の詰まったお菓子を3つご紹介します。

五島列島の念仏踊りの熱気を伝える。〈はたなか〉の治安孝行(ちゃんここ)

ちゃんここ

大正元年、五島列島福江島で饅頭店として創業した〈はたなか〉。現在は、お菓子作りだけでなく「観光ビルはたなか」としてレストランや宴会場も運営し、島の人々にとって親しみ深い存在となっています。そんな老舗が60年以上守り続ける看板商品が、五島を代表する銘菓「治安孝行(ちゃんここ)」です。

一度聞いたら忘れられない、そのユニークな名前は、島に800年前から伝わる念仏踊り「チャンココ」(県指定無形民俗文化財)が由来となっています。語源はカネの音の「チャン」と太鼓の音「ココ」。先祖の霊を鎮め、家内安全の祈りを込めて踊られる、五島の夏の風物詩です。毎年お盆の時期になると、花傘を被り、腰みのをつけた踊り子たちが太鼓を叩きながら踊る様子が島の各所で見られます。コロンとした俵型は、踊り手が首から提げる太鼓を模したものなのだそう。

きな粉がたっぷりまぶされたもちもちの求肥の中には、職人が丁寧に練り上げたあんこがぎっしり。かつて天皇陛下へ献上され、全国菓子博覧会でも名誉総裁賞に輝いた、五島が誇る正真正銘の銘菓です。

ちゃんここのポップ

実はこの「治安孝行」、島外の実店舗ではなかなかお目にかかれない希少な一品。今回、商品を購入したアンテナショップ〈日本橋長崎館〉でも、「交渉の末、ようやく入荷!」というポップが添えられていました。島の歴史がぎゅっと詰まった、出会えたらラッキーな五島のおやつです。オンラインでも販売されているので、ぜひ食べてみてください。
(※日本橋長崎館は2026年4月1日〜5月31日にリニューアル工事のため一時休館予定。)

Information

御菓子司はたなか

住所:長崎県五島市中央町7番地20|地図電話番号:0959-72-3346
HP:https://www.hatanaka.cc/
Instagram:@chankoko_hatanaka

中国文化を感じる、長崎県民のソウルフード。〈福建〉のよりより

よりより

日本三大中華街の一つがある長崎で古くから愛され続けている「よりより」は、小麦粉の生地をねじって油で揚げた、中国発祥のお菓子。「麻花兒(マファール)」や「唐人巻」など様々な呼び名がありますが、2本の生地をよりあわせて作られることから、地元では「よりより」の愛称ですっかり定着しています。長崎では学校給食にも登場するほど身近な存在で、県民のソウルフードともいえる食べ物です。

今回、アンテナショップに並ぶ、数あるよりよりの中から手に取ったのは、中華街で70年以上続く老舗〈福建〉のもの。おいしさの秘密は、中国の伝統的な饅頭作りにも使われる、自然発酵させた熟成生地「老麺(ろうめん)」。これを一本一本職人の手で編み上げ、大豆油で揚げることで小麦本来の旨みを引き出しています。

よりよりのポップ

最大の特徴は、なんといってもその独特な歯ごたえ。アンテナショップのポップにも「歯の弱い方はお気をつけください」と注意書きがあるほどの硬さです。ボリボリとした食感と、さっぱりとした優しい甘さはクセになること間違いなし。商品ごとに違う「硬さ」を食べ比べして、自分好みのよりよりを探してみるのも楽しみのひとつかもしれません。異国の文化が街に溶け込み、日常のおやつとして根付いた、長崎の歴史を感じる一品です。

Information

福建

住所:長崎県長崎市出島町4-13|地図
電話番号:095-823-1036
HP:https://fukken-nagasaki.jp/

殿様が愛した、黄金のお菓子。〈平戸 蔦屋〉のカスドース

カスドース

かつて海外交通の拠点として栄え、南蛮貿易の幕が開いた長崎県平戸市。文亀2年に創業した〈平戸 蔦屋〉は、江戸時代に平戸藩主・松浦家の御用菓子司を務めた、九州最古とも言われる歴史ある菓子店です。

看板商品の「カスドース」は、長崎に伝えられた南蛮文化のひとつ。ポルトガルの家庭で食べられてきた伝統的なお菓子で、長崎名物カステラよりも早くポルトガルの宣教師から伝えられたとも言われています。名前の由来は、カステラの「カス」にポルトガル語で甘いという意味の「ドース」。卵や砂糖が最高の贅沢品だった当時、殿様しか口にできない“幻の菓子”と呼ばれていました。

保存料は一切使わず、厳選した長崎県産の新鮮な卵を使い、丸2日間かけて手作業で仕上げられているカスドース。一口大のカステラをたっぷりの卵黄にくぐらせ、沸騰した糖蜜で揚げ煮にし、仕上げにグラニュー糖をまぶして作られます。糖蜜で揚げる工程は、冷蔵設備がない時代に日持ちを良くするための先人たちの知恵。第十代平戸藩主・松浦熈(ひろむ)が町民のために編纂したお菓子図鑑『百菓之図』にもその姿が描き残されており、古くからこの地で愛されてきたことが分かります。

シャリッとした砂糖の食感のあとに広がる、濃厚なコクと贅沢な甘み。黄金色に輝くその姿は、まるで宝石のよう。特別なティータイムに、一切れずつ大切にいただきたい一品です。

Information

つたや總本家

住所:長崎県平戸市戸石川町953-5|地図
電話番号:0950-22-2360
HP:https://www.hirado-tsutaya.jp/

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