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連載

平井俊旭さん
(雨上(あめあがる)株式會社)
いいものをつくっているという
市民の自信が、
高島市のブランドをつくる

PEOPLE
vol.043|Page 2

posted:2017.3.20  from:滋賀県高島市  genre:活性化と創生 / 暮らしと移住

PR 滋賀県

〈 この連載・企画は… 〉  ローカルにはさまざまな人がいます。地域でユニークな活動をしている人。
地元の人気者。新しい働きかたや暮らしかたを編み出した人。そんな人々に会いにいきます。

writer profile

Ikuko Hyodo

兵藤育子

ひょうどう・いくこ●山形県酒田市出身、ライター。海外の旅から戻ってくるたびに、日本のよさを実感する今日このごろ。ならばそのよさをもっと突き詰めてみたいと思ったのが、国内に興味を持つようになったきっかけ。年に数回帰郷し、温泉と日本酒にとっぷり浸かって英気を養っています。

credit

撮影:川瀬一絵(ゆかい) 映像制作:京都造形大学 谷口篤史

Page 2

自らのテリトリーをガイドする、新しいツアーのかたち

おもしろい活動をしている人が1か所に集まっているのではなく、
いろんなエリアに散らばっていて、
しかも地元出身者と移住組のバランスも比較的いいところが、
高島の魅力だと平井さんは考えている。
こうした“人の利”を生かしたのが、〈サトパス〉という体験型ツアーだ。

市民がそれぞれの職業の専門性を生かしてガイドとなり、
参加者に体験型のツアーを楽しんでもらうプロジェクト。
2016年11月5日に3つのツアーが同時開催された。
ガイドになったのは、それぞれ家業として製材業と運送業、そして農業を営む3人。
製材業者である岡本顕典さんのツアーでは、森で栃の巨木を見たり、
自身の製材所を案内しながら、高島における林業の歴史と、
人と木の関わりを感じてもらった。
運送会社の西川将平さんは、配送等でいつもやり取りをしている
柿農家の柿畑をガイドして、柿の食べ比べを行った。
有機米の農家の釆野 哲さんは、一見何の変哲もない水門を
ツアーのスタート地点に設定し、
稲作をするうえでここがいかに大事な場所なのかを解説。
ランチには異なる品種の新米の食べ比べを行った。

西川将平さんのツアー。柿農家の柿畑をガイドして、柿の食べ比べを行った。撮影:春山太郎

「専門性を生かしてガイドをすることで、高島の魅力を発信できるだけでなく、
ガイドを務める方の事業の顧客の創造につながるなど、
参加する人とガイドをする人の両方がプラスになるツアーを仕組み化するのが、
サトパスのひとつの目的です。
2017年度にある程度の仕組みをつくり、
ガイドの方にも日本山岳ガイド協会の自然ガイドの資格取得も
目指していただきたいと思っています」

〈高島の食と人〉で柿の生産者に取材をした際、味の異なる柿が次々と出てきた驚きから商品化した〈かきくらべ〉。4種類の柿を食べ比べることができる。パッケージは、京都造形芸術大学の学生の水迫涼太さんが担当した。

伝統の知恵と技術を現代の食卓に応用する

もっと広く知られるべき高島の魅力として、もうひとつ注目したのが発酵文化だ。
冬は雪に閉ざされるため冬の食料の確保の手段として、発酵食文化が根付いており、
鮒ずしや鯖のへしこなどが伝統的につくられてきた。
しかしながら従来の発酵食品は伝統食として据え置かれてしまい、
現代の食生活とは距離のあるものになってしまっている。

そこで平井さんは、発酵の知恵や技術を現代の食卓に乗る身近な料理に活用した、
〈ヒビノハッコウ〉というブランド開発を提案。

「ヒビノハッコウの基準は、
1、発酵食の技術が活用されていること。
2、高島産の農産品が使われているか、高島で加工されているか、
もしくはその両方であること。
3、現代の日常的な食卓に乗るためのこれまでにない提案があること。
第1弾として、日本3大和牛のひとつ〈近江牛〉や、
地元で育った豚肉、鶏肉の塩甘酒漬けを商品化しました。
甘酒に含まれる麹の酵素はタンパク質を分解して、
うま味成分であるアミノ酸に変えるので、甘さや深みが出るんです。
熟成肉と理屈は同じですね」

ヒビノハッコウのロゴ。ロゴデザイン:(株)スマイルズ 北山瑠美

ヒビノハッコウは〈日本橋タカシマヤ〉で
2017年3月に行われた催事〈大近江展〉でデビューしたばかり。
実を言うと百貨店の髙島屋は、ここ高島にルーツがあり、
このご縁をうまく生かしたいという思いも。
「ヒビノハッコウの商品は今後は購買層に応じた開発を行い、
いずれは高島屋さんだけでなく、市内でも買えるようにしたいですね」

塩甘酒加工の近江牛は、〈かもし 発酵食シリーズ〉という名で販売された。麹の酵素がお肉をやわらかく、おいしくする。

雨粒のように人やものを循環させる

〈高島の食と人〉〈サトパス〉〈ヒビノハッコウ〉など、
移住してわずか2年でかなりの成果のように思えるが、
「問題を挙げだしたらキリがない」と平井さんは笑う。
しかし問題や課題について話す様子もどこか楽しげだ。

「美大を出てから、〈スーパーポテト〉という
インテリアデザインの設計事務所で働いて、
その後スマイルズに転職して今があるのですが、
ルールのない環境ばかりで、イレギュラーなことだらけだったんですよね。
高島の地域ブランディングは2歩進んで3、4歩下がっているようなときもありますが、
それでも少しずつは前に進んでいるはずです。
いずれにしても結果が出ないまま終えることはしたくないですし、
次につながるかたちでバトンを渡したいと思っています。
だからこそ、こうして移住してまでやっているので」

最後に、雨上(あめあがる)株式會社という会社名に込めた思いを尋ねたところ、
そこには平井さん独特の哲学があった。

「僕のなかで人間が生きている期間っていうのは、雨の粒みたいなイメージなんです。
たまたま自分は今、人間という肉体を持っているけど、
死んだら土に還って肉体に宿っていたエネルギーも戻るのではないかと。
それを勝手に“雨理論”と呼んでいるんですけど、雨は雲から離れた瞬間に粒となり、
地面に落ちるまで個として存在して、やがて個の存在を失い全体に還る。
生きている期間だけが粒であって、循環して次の世代につなぐことこそが
人の生きている意味なんじゃないかと思っていたので、
自分が会社をやるのであれば、そういうプリミティブなことを
理念にしたかったんですよね」

雨が循環するように、人やもの、都市や地方の本来あるべき循環を取り戻す。
平井さんがかたちにしようとしているのは、
ある意味とてもシンプルなことなのかもしれない。

profile

平井俊旭さん

武蔵野美術大学空間演出デザイン学科卒業。インテリアデザイン設計事務所「スーパーポテト」に勤務後、創業当時のSoup Stock Tokyoを運営する「スマイルズ」に入社し14年間デザインディレクターを務める。2014年12月に「雨上(あめあがる)株式會社」を設立。2015年7月より、滋賀県高島市で地域ブランディングディレクターを務める。

information

高島の食と人

http://takashimashi.com/
ロゴデザイン:京都造形大学 水迫涼太

information

サトパス 

http://satopath.com
ロゴデザイン:京都造形大学 水迫涼太

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