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番外編 瀬戸内国際芸術祭2013
「小豆島町コミュニティアート
プロジェクト」レポート

山崎亮 ローカルデザイン・スタディ
vol.062

posted:2013.4.20  from:香川県小豆島町  genre:活性化と創生

〈 この連載・企画は… 〉  コミュニティデザイナー・山崎亮が地方の暮らしを豊かにする「場」と「ひと」を訪ね、
ローカルデザインのリアルを考えます。

writer profile

Maki Takahashi

高橋マキ

たかはし・まき●京都在住。書店に並ぶあらゆる雑誌で京都特集記事の執筆、時にコーディネイトやスタイリングを担当。古い町家でむかしながらの日本および京都の暮らしを実践しつつ、「まちを編集する」という観点から、まちとひとをゆるやかに安心につなぐことをライフワークにしている。NPO法人京都カラスマ大学学長。著書に『ミソジの京都』『読んで歩く「とっておき」京都』。
http://makitakahashi.seesaa.net/

credit

撮影:濱田英明(メインカット)、中島光行

ヒアリングを重ねて、地域の課題をみつける。
島でいらないものを尋ね歩いて、素材として集める。
「アーティストじゃない」山崎さん率いるstudio-Lが、
まちづくりと同じ手法でつくりあげたコミュニティアートで
小豆島町のみなさんと一緒に「瀬戸内国際芸術祭2013」に参加しています。
会期直前に行われた最後のワークショップのようすを取材しました。

ぼくたちはアーティストじゃない。

2012年6月、ある夜の居酒屋にて。
現代美術家の椿昇さんとの講演会を終えた山崎さんが、打ち上げの席で
アートやコミュニティアートについての思いを語りはじめました。
ふだんはそういう場で滅多にじぶんのはなしをしない山崎さんにしては、
ほんとうに珍しく。

「そのうちにわくわくしてきて、気がついたら『やりましょう!』と言っていたんです」
それがこのプロジェクトの始まりだったということは、studio-L のメンバーも、
ワークショップに参加したメンバーも、みんな知っています。

「でも、ぼくはアーティストではありませんから」

山崎さんとstudio-L は、「いつもの」じぶんたちのやり方で、
アートに関わることにしました。

「コミュニティデザイナーとして、
地域のみなさんと一緒にアートをつくりたかったんです」

studio-L のメンバーは、いつもあたらしい地域に入るときにそうするように、
まちのみなさんへのヒアリングから活動をスタート。
ヒアリングの結果から浮かび上がった「島でいらないもの」のなかに、
醤油のたれ瓶がありました。お弁当の隅っこに入っているちいさなアレです。

「たとえば、弁当の新商品が出るたびに、たれ瓶の大きさやカタチも少しずつ変わるので、
旧タイプがどんどん在庫になるんだそうです」

果たしてそんな必要があるのかどうかつくづく不明だけれど、
そんな理由でつくるたびに生まれる不要品。
「これを素材として、なにをつくろうか」というところから、
まちのみなさんにもアイデアを求め、ぐんぐんと巻き込んでいきます。

「醤油の壁」

お弁当用の醤油のたれ瓶に、濃度の違う醤油を詰めて、8万個ずらり並べた「醤油の壁」。光のグラデーションが美しい。(写真提供:studio-L)

ふたに記した番号は、醤油の濃度をあらわす

ふたに記した番号は、醤油の濃度をあらわす。数字の順にならべると、見事な醤油のグラデーションができあがる。

「醤油の壁」の美しい光のグラデーション

醤油の一升瓶を運ぶ木箱が、テーブルや椅子に

醤油の一升瓶を運ぶ木箱が、テーブルになったり椅子になったり。町にあるものを、できるだけ使う。

町に生まれた関係性こそが、いちばんのアート。

濃度の異なる醤油を詰めたたれ瓶を8万個、規則正しく並べたインスタレーション。
濃度を変えて光を透かすヒントになったのは、小豆島で醤油づくりに関わるひとたちが、
醤油の瓶を陽にかざして新旧を見極める、そのしぐさ。

「はじめに、これをつくろうと決めたとき『何個いるんや?』と問われて、
ぼくたちが『8万個』と答えたときは、一斉にひかれたけれど(笑)、
こうしてできあがったのは、みなさんのちからの集大成です」

たれ瓶詰めに関わった人数、350名。
老人ホームのおばあちゃんや幼稚園児にも手伝ってもらいました。
醤油を詰める作業も、たれ瓶をアクリル板に並べて貼る作業も、
重くなったアクリル板を立てる作業も……。
若いstudio-L のメンバーが途方にくれたりへこたれたりするたび、
人生経験豊富なまちのみなさんの知恵や知識や効率的な提案が窮地を救ってくれました。

「床に置いて作業を終えたアクリル板を、起こしてまっすぐ立てるのも
ひと苦労だったのですが、実際に作業をしてみると、
古い建物自体がゆがんでいるという事実に直面して、
またそこに別な大変さが待ち受けていたりね(笑)」

会場は、昭和の初期に建てられた旧醤油会館。
さすがに古ぼけてくすんだ壁をじっと見つめていた山崎さんが、
「これ全部、薄いグレーに塗ろうか」とぽつりとつぶやきます。
瀬戸内国際芸術祭開始まであと10日。
作品は完成したけれど、古くてどこか愛おしいこの空間は
まだまだこれからグレードアップしそうです。

夜には、第5回目/最終回となるワークショップが開かれ、
約25名の参加者が展示チーム、屋外チームなどの班にわかれて
「会期開始までにやること」「会期が始まってからやること」を洗い出していきます。
和気あいあいとして、老いも若きも、表情がとても生き生きとしています。
そんなみなさんに、山崎さんから、会期前のラストメッセージです。

「偶然の出会い、あのひとにはあんな能力があるんだ、という発見、結束力。
その関係性がいちばんのアートじゃないでしょうか。
せっかくですから、芸術祭が終わったらハイ解散! ではなく、
瀬戸芸以降も今回生まれた関係性をつなげていってもらうことが
“ずっと息の長い作品”になるんだと思います。
終わったあとに“もっとやりたい”と思ってもらえたら、
最初のきっかけを少しだけお手伝いさせていただいた僕らはとてもうれしいです。
どうか、いまできかけている作品=関係性を、
もっともっとつよく、大事にしていってください」

久しぶりに会場を訪れた山崎亮さん

芸術祭の開催日まであと10日。久しぶりに会場を訪れた山崎さんが、気付いたことを次々とstudio-Lのメンバーに伝えていく。「まだまだこれから!」

内海電工の宮谷さん

困ったことがあるたびに、救世主のようにひょっこりあらわれて課題を解決してくれる、内海電工の宮谷さん。

ワークショップの模様

第5回ワークショップのようす。しごとを終えたまちのひとたちが集う。

模造紙とマジックペンを使って、やることを洗い出して行く

模造紙とマジックペンを使って、やることを洗い出して行く。屋外グループは、紙にひと文字も書かないまま、実務作業に入っていくなど、ミーティング時間の使い方にもグループごとの個性がはっきり。

山崎亮さん

「どうか、いまできかけている作品=関係性を、もっともっとつよく、大事にしていってください」

information

map

旧醤油会館(会場番号 83番)

住所:香川県小豆郡小豆島町馬木36-2

開館時間:9:30〜17:00

瀬戸内国際芸術祭2013

Web:http://setouchi-artfest.jp/

※芸術祭の会期外もオープンしています。

profile

RYO YAMAZAKI 
山崎 亮

1973年愛知県生まれ。大阪府立大学大学院地域生態工学専攻修了後、SEN環境計画室勤務を経て2005年〈studio-L〉設立。地域の課題を地域の住民が解決するためのコミュニティデザインに携わる。まちづくりワークショップ、住民参加型の総合計画づくり、建築やランドスケープのデザイン、パークマネジメントなど。〈ホヅプロ工房〉でSDレビュー、〈マルヤガーデンズ〉でグッドデザイン賞受賞。著書に『コミュニティデザイン』。

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