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滝川 Part1
小さな北のまちに、
デザイナーたちが集まる日。

山崎亮 ローカルデザイン・スタディ
vol.027

posted:2012.8.9   from:北海道滝川市  genre:活性化と創生

〈 この連載・企画は… 〉  コミュニティデザイナー・山崎亮が地方の暮らしを豊かにする「場」と「ひと」を訪ね、
ローカルデザインのリアルを考えます。

writer profile

Maki Takahashi

高橋マキ

たかはし・まき●京都在住。書店に並ぶあらゆる雑誌で京都特集記事の執筆、時にコーディネイトやスタイリングを担当。古い町家でむかしながらの日本および京都の暮らしを実践しつつ、「まちを編集する」という観点から、まちとひとをゆるやかに安心につなぐことをライフワークにしている。NPO法人京都カラスマ大学学長。著書に『ミソジの京都』『読んで歩く「とっておき」京都』。
http://makitakahashi.seesaa.net/

credit

撮影:山口徹花

生まれ育った北海道滝川市にて、デザインとアートによるまちの再生にたずさわる
彫刻家・五十嵐威暢さんと山崎さんの対談を、4回にわたってお届けします。

「太郎吉蔵デザイン会議」という特別な1日。

山崎

今日はお招きいただき、ありがとうございます。

五十嵐

最近はどうですか?

山崎

本をいくつか出版しました。書きながら、五十嵐さんのことばのアレコレを
思い出す機会が多かったので、今日は久しぶりにお会いできて光栄です。

五十嵐

午後のデザイン会議には取材に入ってもらえなくて、申し訳ないですが。

山崎

いえいえ。マスコミは、初回から一貫してシャットアウトなんですよね。

五十嵐

そうなんですよ。山崎さんもはじめはたしか、
聞き手としていらしてくださったんですよね。

山崎

はい。第3回の2009年「太郎吉蔵デザイン会議(*1)」に、
聴衆として参加させていただきました。

五十嵐

なにがきっかけで?

山崎

その直前に、エレファントデザイン株式会社代表の西山浩平さんと
初めてお会いする機会があり、意気投合したんです。
そうしたら、1か月後に北海道で彼がしゃべる場があるという。
聞けば、その10人のパネリストたるや、原研哉さん、梅原真さん、
それに五十嵐さんと、そうそうたるもので、さらにユニークなのは、
聴衆だけでなく、彼らパネリストもみな手弁当。
しかも、会議後の質疑はナシ! それはなんとしても行ってみたいぞ、と(笑)。
それが、「太郎吉蔵デザイン会議」との出会いです。

五十嵐

そう。聴衆のためでなく、10人のパネリストが自分のために話をする場なんです。

山崎

日本では、なかなかないですよね。

五十嵐

ええ。本音で話す場にしたいから、取材もご遠慮いただいていると。
そういう次第です。

*1 太郎吉蔵デザイン会議:1926年に建設された歴史ある石蔵「太郎吉蔵」で行われる、パネリストによるパネリストのための円卓会議。パネリスト以外の90名の参加者は、議論の場に立ちあう聴衆となる。2007年に「アートフェスタタキカワ」のメインイベントとしてスタート。以降、今年で5回目を数えるデザイン会議。http://www.designconference.jp/

日本で3番目に長い石狩川

新千歳空港から直通電車で約90分。滝川市は、北海道の中空知地域の中心都市。市西部には、日本で3番目に長い石狩川が悠々と流れる。

本音でしゃべり、じぶんのことばを見つける。

五十嵐

ぼくも、お会いする前に、ローカルデザイン研究会の鈴木輝隆さんから
山崎さんのことを聞いていてね。ぜひ会わせたいと言われていたんだけれど、
ご覧の通り老人なものだから(笑)、なかなか行動力がなくて。
そんなときに会いに来てくださるというので、どうぞどうぞ、とお受けしたんです。

山崎

そうでしたか。ありがとうございます。

五十嵐

それでもそのときのぼくは、山崎さんのやっていることを
ほんとうには理解できていなくて。
その後ですね、すばらしいことをされているんだな、と。
だから、今日はぼくのほうが質問したいくらいなんですが(笑)。

山崎

いえいえ、とんでもない。

五十嵐

あのときも面白かったですよね。

山崎

ええ。めちゃくちゃ面白かったです。

五十嵐

デザイナーがビジュアルにたよらずに、
じぶんのことばでほんとうのことを上手にしゃべる。
その「練習の場」としてこのデザイン会議を立ち上げたんです。

山崎

そうだったんですか?

五十嵐

うん。日本人はそういうことに慣れていないでしょう?
やさしいから、相手に気を遣って本音が言えなかったり、自慢話に終始したり。
でも、そこからはなにも生まれませんから。そうではなく、
ここで感じたこと、経験したことを日常にもって帰ってもらいたいなと。

山崎

なるほど。

五十嵐

だから、3回で辞めようと思っていたんです。
みなさん、すばらしいリーダーたちなんだから。

山崎

練習の場だとすれば。

五十嵐

それが5回も続いて、どうしたものかと(笑)。

山崎

でも、3回目で終わっていたら、ぼくは今日ここに呼んでもらえていないので(笑)。

五十嵐

ああ、そうですね。楽しみだ。

(……to be continued!)

designshop takikawaの入り口ロゴ

五十嵐さんプロデュースによる「designshop takikawa」。小さな空間に、世界のグッドデザインプロダクトがそろう。滝川市内の「hotel miura kaen」内に併設。

五十嵐さんの作品「eki clock」

五十嵐さんの作品「eki clock」。「designshop takikawa」オープンとともに、壁掛時計と腕時計が発表された。

information

map

TAKENOBU IGARASHI 
五十嵐威暢

1944年北海道滝川市生まれ、多摩美術大学卒業、UCLA大学院修士課程修了。1970年イガラシステュディオを設立。国内外でグラフィック・プロダクト デザイナーとして活動し、その作品はニューヨーク近代美術館(MOMA)をはじめ世界各国の美術館に永久保存されている。’94年より米国を拠点に彫刻制作に専念し’04年に札幌駅の時計デザイン、札幌駅JRタワー展望室の彫刻「山河風光」などを手掛け、帰国を決意。現在、故郷滝川市にて、デザイン/アートで町を再生するプロジェクト「NPOアートチャレンジ滝川」を設立し、「五十嵐アート塾」を主宰する。2011年4月から多摩美術大学学長に就任。

Web:http://www.igarashistudio.com/

profile

RYO YAMAZAKI 
山崎 亮

1973年愛知県生まれ。大阪府立大学大学院地域生態工学専攻修了後、SEN環境計画室勤務を経て2005年〈studio-L〉設立。地域の課題を地域の住民が解決するためのコミュニティデザインに携わる。まちづくりワークショップ、住民参加型の総合計画づくり、建築やランドスケープのデザイン、パークマネジメントなど。〈ホヅプロ工房〉でSDレビュー、〈マルヤガーデンズ〉でグッドデザイン賞受賞。著書に『コミュニティデザイン』。

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