連載
posted:2015.11.18 from:高知県高知市 genre:食・グルメ
〈 この連載・企画は… 〉
イラストレーターとして活躍する平尾香が、各地の粋な飲み屋をご紹介。
旅して飲んで、おいしいお酒と肴と人に出会います。
text & illustration
kao.ri hirao
平尾 香
ひらお・かおり●イラストレーター。神戸生まれ、独自の個性を発揮した作風で、世界的ベストセラー「アルケミスト」を始めとする書籍のカバーや、雑誌の挿絵、広告などで活躍。個展も多数開催。現在は、逗子の小山にアトリエを構え、本人の取材やエッセイなど活躍の幅は広い。著書本に「たちのみ散歩」(情報センター出版局)「ソバのみ散歩」(エイ出版社)
http://www.kao-hirao.com/
https://www.facebook.com/Kao.0408.hirao
路面電車が大通りをチンチン走る景色は、旅情感。
高知、はりまや橋のほど近く、ここ〈葉牡丹〉は、
そんな路面電車が走る大通り沿いに、ビルに挟まれつつも、
どっしりした風格で建つ木造2階建。
線路の向こうからもすぐに看板が見えました。
市場とフードコートが合体したような人気の〈ひろめ市場〉でみやげものを買って、
ビールとちょこっとつまんでからの2軒目。
まだまだ明るい午後2時過ぎくらい。
えんじ色に、お店の名前と、ビールを持った南蛮人風の
イラストが染め抜かれたのれんをくぐり、
引き戸を引けば、ザ・居酒屋の雰囲気が店内いっぱい。
厨房も見渡せる入ってすぐのカウンターのコーナーに席は決まり。
店の奥はまだまだ深そう。とりあえず、荷物や上着を置いて、
見渡せば、ところどころに短冊メニュー、
真上に日本酒と焼酎の銘柄のメニュー。
テーブルの上の「食三昧」と書かれたメニューを開けると
迷ってください、と言わんばかりのそそる品々。
高知は、日本酒がおいしいと、超辛口の〈船中八策〉を頼めば、
升を受け皿にグラスに注がれた酒がカウンター越しに渡されます。
おっとと、こぼさぬように受け取って、ハイ乾杯。
昼酒というのにするりとお酒は喉を通ります。
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ドドン~んと盛られて出されたのは、たたき盛り合わせ。
カツオの身は、分厚く切られ、合わさるもうひとつは、ウツボ!
ニンニクとわさびは、横に添えられ、ポン酢がさっとかかったそれら。
ひと口では無理とカツオを噛み入れれば、まったりとした食感に風味が広がります。
ウツボは、鶏肉のような食感でこれまた美味。
アジの刺身も鮮度よし、珍味、マグロの皮ポン酢で、お酒も進みます。
海鮮の次は、煮込み系、カウンターのほど近いところに
豆腐や煮込み系の鍋から、よそってもらった土手煮のスジ肉がやわらかい。
煮込み鍋の前には、ご婦人がひとり酒と、反対側の焼き物を焼く前には、
出張中のサラリーマン風ふたり客がのんびり杯を重ねている様子。
あとから座ったおじいさんも、ひとり酒で刺身に小鉢、串揚げと食欲旺盛です。
カウンターの前の、中が見える冷蔵ケースには、串に刺さった食材が
串揚げ、串焼きになる出番待ちで、ズラリと待機中。
昭和27年ごろ先代が大阪にカツオを売りに行って、串揚げを習い、
屋台からスタートしたお店だそうで、細かいパン粉の串揚げ。
酔鯨のお酒に合わせてクジラの串揚げがアツアツでおいしいこと。
気がつくと、キビキビと働くボタンダウンシャツ制服の
お姉さんたちの顔ぶれが入れ替わった様子。
昼から夜の営業へ、時計は午後4時。
これから夜のお店の賑わいもすごそうです。
満腹なのにお会計もお安くって、土佐の心意気、
太平洋のような広さを感じた日帰り昼酒高知の旅でありました。
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葉牡丹
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