colocal コロカル マガジンハウス Local Network Magazine

連載の一覧 記事の検索・都道府県ごとの一覧
記事のカテゴリー

連載

小布施 Part4
図書館から、まちをデザインする

山崎亮 ローカルデザイン・スタディ
vol.005

posted:2012.2.28  from:長野県上高井郡小布施町  genre:活性化と創生

〈 この連載・企画は… 〉  コミュニティデザイナー・山崎亮が地方の暮らしを豊かにする「場」と「ひと」を訪ね、
ローカルデザインのリアルを考えます。

writer's profile

Maki Takahashi
高橋マキ

たかはし・まき●京都在住。書店に並ぶあらゆる雑誌で京都特集記事の執筆、時にコーディネイトやスタイリングを担当。古い町家でむかしながらの日本および京都の暮らしを実践しつつ、「まちを編集する」という観点から、まちとひとをゆるやかに安心につなぐことをライフワークにしている。NPO法人京都カラスマ大学学長。著書に『ミソジの京都』『読んで歩く「とっておき」京都』。
http://makitakahashi.seesaa.net/

credit

撮影:嶋本麻利沙(THYMON)

小布施の図書館「まちとしょテラソ」で館長を務める
花井裕一郎さんを訪ねた山崎さん。
4回にわたりお二人の対談をお届けします。

コミュニティのある図書館、僕もやりたいな(笑)。

山崎

静かにしなくちゃダメ、みたいな制約が、
図書館をつまらなくさせているところ、ありますよね。

花井

ありますね。

山崎

以前、とあるまちで「全体としてはにぎやかだけど、静かな部屋がある」
という図書館を提案したことがあるんですけど、
残念ながら実現しなかったんです。

花井

うちは、館内ワンフロアがテーマなので、そこをクリアするために、
タイムシェアリングしてるんですよ。

山崎

タイムシェアリング……?

花井

そうです。たとえば夕方は学校帰りのこどもたちが集うので、
比較的にぎやかな時間。でも、18時を過ぎれば、自然と静かになるんです。
まちのひとたちが、そこをわきまえて利用してくれるようになっています。

山崎

なるほど!

花井

でしょ?

山崎

ここまできたら、ひとつ、告白していいですか。

花井

え、なんですか?

山崎

実は大学3年のときに「読書園」というのを考えたことがあるんです。
テニスしながらテニスの本が読めて、
さらにまちじゅうにある小さな小屋みたいなところのどこにでも
本が返却できるっていう……。

花井

それ、僕らも同じようなこと考えてます(笑)。
造り酒屋に酒の本があったら、
そこにはさらに酒のプロフェッショナルもいるわけだから、
より豊かな体験ができる。まちがまるごと図書館になる仕組み、みたいな。

山崎

そこにコミュニケーションが発生しますよね。

花井

まちを歩くきっかけにもなるはずです。

山崎

ああ、やっぱり、僕もやりたいなあって今でも思いますね。
そういう、コミュニティのある図書館!

花井

こどもたちのさわぎ方も、度が過ぎれば叱ることもありますから、
子育ての場でもあります。

山崎

いずれにしても、始まりにしっかりとした
「町民力」があったからこそできるていることですね。

花井

はい。町民ひとりひとりに「じぶんたちが責任を負っている」という
自覚を促すことが大事なんだと。山崎さんの本にも書いてありましたね。

「TERRA」にはラテン語で地球、大地の意、「SOW」には種を蒔くという意味も。

日中は、陽が燦々と射し込む、開放的で明るい空間。

まちとしょテラソが、まちを変える。まちを元気にする。

山崎

とくに進歩的な取り組みなどはありますか?

花井

文書が文書を探し出す「連想検索」というシステムの導入したり、
アップルコンピューターを複数台設置して
デザインのワークショップを行ったり……。

山崎

これがうわさの連想検索ですか! すごいですね。

花井

本がまんなかにあって、衛星的に企画があり、
再び本に戻っていくようなイメージでしょうか。

山崎

書籍購入の注文も受けたって聞きましたけど。

花井

ええ。なにを隠そう、このまちには本屋さんがないんです!
だから、今年からの新たな取り組みとしてライブラリーショップも併設しました。
D&Departmentのようなセレクトショップが、
この場所でならできると思うんです。
あと、「出張まちとしょテラソ」とかね。

山崎

え、まさかよそのまちに行ったり?

花井

そうですね。まちとしょの「まち」には「待ち」の意もあるんですが、
これからの僕らは、待ってるだけじゃないぞって(笑)。

山崎

うーん、アグレッシブだなあ(笑)。
でも、そのアグレッシブさは、間違いなく
まちを元気にしていく大きなチカラです。
今後がますます楽しみになりました!

「高遠・本の町をつくる会」に「出張まちとしょテラソ」が参加。着物で読みたい本を、まちとしょテラソのスタッフが選書。(写真提供:まちとしょテラソ)

僕も、コミュニティのある図書館がやりたくなってきましたよ。(山崎)

information

map

まちとしょテラソ

「学びの場」「子育ての場」「交流の場」「情報発信の場」という4つの柱による「交流と創造を楽しむ、文化の拠点」という理念のもとで建築された小布施町立図書館。「本を貸し出す業務」だけにとどまらず、この場で未来を担うこどもたちが世界を感じ、飛び立っていくための支援や、なにかを創り出すひとの支援を通じ、町内外のひとびとの生涯学習の拠点としての「図書館」を目指している。
住所 長野県上高井郡小布施町小布施1491-2 TEL 026-247-2747
開館時間 9:00 〜 20:00 火曜休館 http://machitoshoterrasow.com/

profile

YUICHIRO HANAI
花井裕一郎

1962年福岡県筑豊生まれ。テレビディレクターからスタート。2000年、東京から小布施町に拠点を移し、本来の人間の姿、生き方を模索し創作。2009年より、小布施町立図書館・まちとしょテラソ館長。図書館を交流の場、ワクワクする情報を提供する場として演出している。

profile

RYO YAMAZAKI
山崎 亮

1973年愛知県生まれ。大阪府立大学大学院地域生態工学専攻修了後、SEN環境計画室勤務を経て2005年〈studio-L〉設立。地域の課題を地域の住民が解決するためのコミュニティデザインに携わる。まちづくりワークショップ、住民参加型の総合計画づくり、建築やランドスケープのデザイン、パークマネジメントなど。〈ホヅプロ工房〉でSDレビュー、〈マルヤガーデンズ〉でグッドデザイン賞受賞。著書に『コミュニティデザイン』。

Feature  注目情報&特集記事「日本のクリエイティブ」

Tags  この記事のタグ

Recommend