連載
posted:2016.1.7 from:鳥取県八頭郡智頭町 genre:暮らしと移住
〈 この連載・企画は… 〉
鳥取県南東部に位置する八頭郡智頭町。
森林に囲まれたこの小さなまちに、家族4人で移り住んだ一家がいます。
このまちで、どんな風に子どもたちが育っていくのか。普通の母親の目線から、その日常を綴ります。
writer profile
Aya Tanaka
田中亜矢
たなか・あや●横浜市生まれ。2013年東京から広島・尾道へ、2015年鳥取・智頭町へ家族で移住。ふたりの子ども(3歳違いの姉弟)を育てながら、マイペースに音楽活動も続けている。シンガーソングライターとしてこれまで2枚のソロアルバムをリリース、またバンド〈図書館〉でも、2015年7月に2枚目のアルバムをリリース。
http://ayatanaka.exblog.jp/
「カメムシが多い年は雪が多い」
というのが、この辺の地域の定説らしい。
秋頃から、家の中でカメムシを見かけることが多くなった。
ほぼ毎日、数匹はいて、窓の外に逃がすのだけど、
翌日になるとまた何匹か入り込んでいる。
こんな経験は初めてなので、私たちは「多い」と感じたが、
近所の方いわく、今年は「少ない」そうで、多い年はこんなものではないらしい。
実際、今シーズンはいまのところ、けっこうな暖冬だ。
例年、12月にはある程度雪が積もるそうなのだけど、
まだ半日で溶けてしまうくらいの積雪しかない。
あまりに暖かいので、ご近所の方が、これでは来年の稲作はダメだ、と言っていた。
冬が暖かいと、稲を食べる虫が増えてしまうらしい。
12月下旬、初めてほんの少しだけ雪が積もった日、
娘を森のようちえんの集合場所まで送っていくと
車から降りた途端、雪の球が2、3個飛んできた。
地面に積もるわずかな雪をかきあつめて、
子どもたちがワイワイと雪合戦をしていたのである。
自分のつくった球のかたさを自慢しにくる子どもたち。
今シーズン初の雪遊びに、ウキウキとうれしそうだった。
今年もしっかり雪が降るといいよね。
寒さは厳しくとも、やはり本来の四季があってこそ、わたしたちは生かされている。
そのことを子どもたちに感じてほしいし、わたし自身も感じたい。
本当は、寒いのは苦手だけれど……。
せっかく智頭に来たのだから、冬の厳しさと美しさを体感してみたい、
と思うのであった。
東京を離れて3年目、今年は初めて帰省せず、家族4人で、静かに新年を迎えた。
智頭で迎える初めてのお正月。
元旦は近所の氏神様に初詣に行き、あたりをのんびりと散歩した。
灰色の雲に覆われていることが多い山陰の冬、
元旦は珍しく1日晴れて、日差しがぽかぽかと暖かかった。
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神社は山を少し登ったところにあるのだが、4歳の娘はぴょんぴょんと軽い足どりで、
すれ違う人と挨拶を交わしつつ、後ろも振り返らず登っていった。
1歳8か月になる息子は、上手に歩けるようになったのがうれしくて
ズンズン歩き、川の流れを興味深げに見ていた。
ふたりとも、この半年あまりで随分成長したよなぁ、と思う。
冬休みのあいだは子どもと家にいる時間が長かったので、
ご近所さんとの交流の機会もなにかと多かった。
玄関を出て、家のまわりをぐるっと歩くだけで、誰かしらに会う。
子ども同士は遊び始め、大人同士はおしゃべりを始め、
何の予定のない日も、そんな感じでいつのまにか時間が過ぎていくことも多い。
娘が拗ねて外に出て行ったきり帰ってこないと思ったら、
家の前でいつのまにかお友だちと遊んでいたこともあった。
野菜がたくさんあるからもらいに来て〜、と呼ばれて
お家にうかがったついでにお茶をいただきながら、
のんびりおしゃべりをすることもあった。
都会に住んでいた頃は、人と会う=約束して会う、という感覚だったので、
こんな風に人との関わりが自然発生していくのが、とても新鮮でありがたい。
朝から玄関がガラガラ〜と開くことも多いので、
いつまでもパジャマでゴロゴロしていられないし、
「ずいぶん遅くまで電気がついているわねぇ」
なんて言われるとドキッとするけれど……。
尾道から智頭に移住した2015年は、思えばたくさんの出会いに恵まれた年だった。
いろんなことがありすぎて、余裕なくバタバタと過ごしてしまったけれど、
2016年は、出会った人々やこの土地と、
関わりを「深めて」いく年にできたらいいなと思う。
今年もどうぞよろしくお願いします。
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