連載
posted:2013.12.30 from:全国 genre:エンタメ・お楽しみ
〈 この連載・企画は… 〉
独自の視点で日本各地のユニークな文化を研究してきたみうらじゅんが、
読者にフィールドワークを課しながら集成していく新たなプロジェクト。
profile
Jun Miura
みうらじゅん
みうら・じゅん●1958年、京都府生まれ。イラストレーターなど。代表作に『アイデン&ティティ』など。“マイブーム”の生みの親であり、「とんまつり」や安斎肇とのユニット「勝手に観光協会」など、日本各地の知られざる魅力を独自の視点で広める活動も多い。『マイ仏教』(新潮新書)、リリー・フランキーとの対談本『どうやらオレたち、いずれ死ぬっつーじゃないですか』(扶桑社)、いとうせいこうとの共著『見仏記 ぶらり旅篇』(角川書店)、『キャラ立ち民俗学』(角川書店)など著書多数。
いままでみなさんのネタに頼ってきましたが、とうとう編集部から
「みうらさんからも出してください」と言われてしまい、
今回お見せするものは“コレ”です。
コレって、言われても困るでしょ。興味湧きませんよね?
というか、いらんでしょ。
コレは山形県天童市に古くから残る伝統文化ってヤツです。
昔は家の中に床の間がある部屋がありました。
応接という、客が来たときだけ通す部屋ですね。
子どもは入れるべからずの、要するに見栄部屋。
「立派なお家ですねぇー」とか言われ、
「いや、大したことはありません」と、決めゼリフを吐く部屋。
そんな床の間には大概、鯉が滝登りをしてる絵や、七福神が船に乗ってる絵など、
本当、どーでもいい掛け軸がブラ下がっていたもんです。
その前にね、ドーンとコレ、コレが意味不明に置いてあって、来客は誰ひとり
「コレ、何の意味があるんですか?」などとは聞かなかったもんです。
コレは“み”と、大きく将棋の駒に書かれて(彫られて)いますが、
本来は“馬”という文字が逆に書かれているものなのです。
“馬”という文字の反転ですね。
聞くところによると馬というものは左から乗るものらしいです。
深く考えたことなかったでしょ?
だから左馬はノリノリ、縁起がいいということでした。
説明を聞いてももうひとつ、よくわかりませんが、
とにかく左馬の駒(といっても、巨大すぎて、これで将棋をさす人はいません)が、
床の間に置いてあったもんです。
僕はコレを山形の高校でトークショーをしたあと、生徒から手渡しされました。
ズシーンと重く、しかも“み” “うらじゅん”ですから本当、うれし過ぎて困りました。
このように伝統文化と呼ばれているものの中には
「いやげ物」が多分に含まれています。気をつけてください。
編集部より
というわけで今回はみうら所長からの寄稿でした。
来年も「いやげ物」はじめ、「ヌー銅」「世界遺産の店」「フィギュ和」の投稿を
たくさんお待ちしています。
募集は終了しました。たくさんのご応募ありがとうございました。
Feature 特集記事&おすすめ記事
Tags この記事のタグ