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posted:2019.8.22 from:熊本県人吉市 genre:旅行
〈 コロカルニュース&この企画は… 〉
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writer profile
Yu Miyakoshi
宮越裕生
みやこし・ゆう●神奈川県出身。大学で絵を学んだ後、ギャラリーや事務の仕事をへて2011年よりライターに。アートや旅、食などについて書いています。音楽好きだけど音痴。リリカルに生きるべく精進するまいにちです。
2019年8月2日、熊本県・JR肥薩(ひさつ)線「矢岳駅」に
旧国鉄駅長宿舎をリノベーションしたホテル
〈星岳・月岳(ほしたけ・つきたけ)〉がオープンしました。
旧国鉄駅長宿舎は、国の登録有形文化財に登録されている建物。
いまでは稀少な、明治の鉄道建築のひとつです。
ユニークなのは、肥薩線が走る人吉球磨エリアを
ひとつのホテル、線路を廊下と見立て、各施設を列車でつなぐというコンセプト。
宿泊客は、まず旅の玄関、人吉駅へ。
駅でチェックインを済ませます。
その後は観光列車〈いさぶろう号〉で移動。
矢岳駅で降りたら、星岳・月岳の客室でひと休み。
夕食は大畑駅へ移動して、レストラン
〈囲炉裏キュイジーヌ LOOP〉でディナーを楽しみます。
その後は、専用車に乗って星岳・月岳へ。
真っ暗な山道は、まるでナイトサファリのよう。
シカや野生動物に出会うこともあるそう。
このプロジェクト仕掛け人は、〈クラシックレールウェイホテル〉代表の中島秀豊さん。
中島さんには、かつて賑わっていた無人駅に
人を呼び戻したいという思いがありました。
そんなときに目にとまったのが、大畑駅のそばに佇む「旧保線詰所」。
中島さんはこの建物をリノベーションして
レストランをつくりたいとJRに相談を持ちかけ、
2018年9月に囲炉裏キュイジーヌ LOOPをオープンさせました。
レストランが建つ以前、大畑駅の
利用客は月に7人しかいなかったのだそう。
明治時代に建てられた旧保線詰所は長いこと人の手が入っておらず、
中島さんが初めて訪れたときは、イタチが住んでいたという話も。
現在レストランを訪れるお客さんの数は、
1か月に約700〜800人。連日満席の大賑わいです。
計画当初は「無人駅にレストランをつくって
どうするんだ」と言われたこともあったそうですが、
中島さんには「だからこそつくる意味がある。
そこにしかない環境で、そこでしか食べられない料理をつくろう」
という強い意志があったのだとか。
現在囲炉裏キュイジーヌ LOOPは、昼は一般のお客さんに向けて営業、
夜は宿泊客のためのプライベートレストランに変わります。
これはうれしいですね!
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レストランに続いて中島さんが手がけたのが、
矢岳駅にある古民家ホテル、月岳・星岳でした。
矢岳駅は肥薩線の山線で、最も標高が高い場所にあり、
駅舎のそばにはSL展示館もあります。
建物のなかは、明治の木造建築の良さを生かした、暖かみのあるつくり。
このプロジェクトでは、地元のクリエイターと一緒に宿をつくり、
地域に仕事を生み出し、魅力を発信していくことも目指しています。
メインエントランスの看板を手がけたのは、
熊本県球磨郡あさぎり町で〈リブラ工房〉を主宰する
ロートアイアン作家、樺山明さん。
星岳の家具を手がけたのは、「凄腕の曲げわっぱ職人」と、地元の方から紹介された淋正司さん。
熊本県球磨郡球磨村で〈一勝地曲げ そそぎ工房〉を主宰しています。
人吉球磨には豊かな自然や歴史的建造物、遺跡などがあり、
司馬遼太郎がこの地を「日本でもっとも豊かな隠れ里」と
記したという逸話もあります。
最後に中島さんから、メッセージをいただきました。
「九州にはJRの駅が568駅あり、そのうち291駅が無人駅となっています。
これらの無人駅の駅前に人が集う施設をつくり、
観光視点でかつての賑わいを取り戻せたらよいなと考えています。
大畑駅や矢岳駅ならではの魅力をお客さまに感じていただければうれしいです」
現在中島さんは、九州地域の鉄道沿線に同じコンセプトの
ホテル・レストランを展開する計画を進めています。
2025年までには九州7県に展開し、
九州1周ツアーを行うことを目指しているそう。
計画は、まだまだ始まったばかりのようです。
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