移住、どこで暮らす? 一家で移住先を探す旅へ

暮らしを考える旅。
津留崎家の移住について

コロカルで『美味しいアルバム』
連載中のフォトグラファー津留崎徹花。
地域の暮らしや食、人に触れるうち、
移住したいという気持ちが高まり、夫・鎮生と移住を決意。
けれど、どこへ移住するかはまだ決まっていません。
5歳の娘を連れ、いろいろな土地を巡りながら考えたいという
津留崎家の旅がいよいよ始まります。

無計画な旅のはじまり

歳になる娘と42歳の妻、同じく42歳の僕と3人家族のわが家。
生まれ育った東京を離れ、移住することにしました。

行き先は未定。
「移住する」ということは決めたのですが、どこに移住するかはまだ決めていません。移住してからなにをして稼いでいくのか、それも決めていません。

なんとも無計画です。

でも、僕はこの夏、5年半勤めた会社を辞めました。

勤めていた会社ではリノベーションの仕事をしていました。
それ以前には、建築家の弟子、自らリノベーションを手がけたカフェバーの経営、地方の隅々まで車で巡る地図の調査員、などなど
さまざまな仕事を転々としておりました。
会社を辞めて移住を決めたとはいっても、
次の仕事が決まっているかというとそれもなく、
地方で食べていけるような特別なスキルや免許があるわけでもありません。

妻は一昨年出版社を退職し、フリーランスのフォトグラファーとして仕事をしています。たまに文章も書いてます(コロカルで『美味しいアルバム』という連載をしています)。
フリーランスですので、どこでも仕事をできるかもしれませんが、
いまのところ東京での仕事がほとんどで、
地方での仕事が確約されているわけでもありません。

5歳の娘は平日は保育園、休日は私たちと過ごす生活を楽しんでいます。
現在、妻の姉家族と同居していますので、
そこの子どもたちと遊ぶのが楽しくてしょうがないようです。
休みに家族3人で出かけていても、早く家に戻って
いとこたちと遊びたいと言い出す始末です。

そんな僕たちが、移住することを決めました。
そして、この夏の終わりに移住先を探す旅に出ようと思います。

移住先を決める旅? 
なにを悠長なことをと思われるかもしれません。
でも、実際にその場所で、日が昇るのを見て、日が沈むのを見なければ
どこに移住すべきかなんて決められる気がしないのです。

兵庫県 洲本市(淡路島)の山あいに沈む夕日。東京で忙しくしているといつの間にか日が昇り、いつの間にか日が沈む。もう少し自然に寄り添った生活がしたいのです。同じ日本にこんなにきれいに沈む夕日を望む場所があるのですから。

というのも、東京生まれ東京育ちの妻と僕には、
地方に深い縁のある土地はありません。
そうなると、全国のどこでもが候補地となりえるのです。

そこで、この辺かな? というところを旅して、
ここだ! と決めたらいいのではないか。
そして、決めた土地で暮らすことでその土地にふさわしい稼ぎ方が
見えてくるのではないか。そう考えたのです。

移住というとその先での仕事のことが引っ掛かり、
なかなか行動に移せないということをよく耳にします。
まずは土地ありき、そして、その土地はこれから決める。
こんな移住のかたちがあってもよいのではないでしょうか。

この先どうなるのか、自分たちにもまったく見えていないこの地点から、
どこに行きつくのか? 行きついた先でどのような生活をつくり上げるのか? 
この連載では、そんなことを
僕と妻が交互に書きながらお伝えしていきたいと思います。

僕たち夫婦は揃って移住しようというくらいですから、
比較的同じ方向を向いているふたりだとは思います。
といっても違う人間、男と女。考え方も人生観も違います。
そのふたりがお互いに納得できるような移住先を決めることができるのか?
お互いの立場から語っていくことで、
家族で移住を考えている方の参考になれば幸いです。

昨年、家族で旅行している際に知り合った家族が営む、古民家をリノベーションしたレストラン〈朔〉。彼らに出会い、その暮らしを垣間見て移住への決心が後押しされました。ここには自然とともに暮らしと仕事があります。

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丁寧な暮らしを求めて

さて、本題に戻ります。
移住する土地を決める旅に出るといっても、
移住先で目指す暮らしがなければ決めようがありません。

例えば、自分たちの食べるものは自給自足できるように、
そしていずれはエネルギーも自給できたら。
食べものから住まいまで、つくれるものはできるだけ手づくりで、
なるべくゴミを出さない生活に。
あくまで理想ですが、そんな暮らしをしたいのです。

ではなぜ、こんな生活をしたいと思うようになったのか?
東日本大震災、その3か月後の娘の誕生を機に自分たちの暮らしのあり方を見つめ直し、もっと自分たちの暮らしを自分たちで丁寧につくり上げたい、
そう思うようになったことがきっかけです。

もちろん東京にいてできることはたくさんあります。できる限りのことはやってみようと、会社員をしながらやってきたつもりです。
例えばこんな感じで。

家庭菜園で育てた野菜たち。初めて収穫できたときのうれしさは忘れられません。

娘と姪のためにつくったベンチとテーブル。娘のはいているズボンは妻のつくったもの。

わが家の吸引力の変わらない掃除機。

庭の片隅に生ゴミを埋めています。虫が食べ、微生物が分解して、あっという間に土に還ります。ゴミの量は減り、ゴミ箱は臭くならなず虫がわかない、堆肥もできると、いいことばかりです。

でも、東京で会社員をしながらのそんな暮らしには限界があります。
そして、東京からの移住を考え始めたのでした。

東日本大震災と娘の誕生から5年が過ぎました。
移住を決心するまでに随分と時間がかかってしまいましたが、
段々と大きくなっていった自分の中の変化を受け止めて行動に移そうと考えたのでした。そして、幸いなことに妻も同じように感じていたのです。

震災の前までは妻も僕も、当たり前に東京で一生を過ごすと思っていました。
ローンを組んでの住宅購入を考えていた時期もあったくらいです。
(頭金と決断力がなく購入はいたりませんでした。
僕たちのように考えが変わりやすいタイプは、
ローンを組んでの住宅購入なんてもってのほかですね)

妻は会社員として働いていくことと育児の両立の難しさを感じて、
一昨年、会社を辞めてフリーランスとして働き始めています。
会社員の頃に比べると収入は安定しないものの、
暮らしと丁寧に向きあっているようです。

そして、自分も会社を辞めました。
家族で、より暮らしと丁寧に向き合うため、
より丁寧に暮らしをつくり上げるために移住することを決めたからです。

ふたりとも会社員のときは収入の安定こそあれ、お互いに余裕がなく、
生活も育児もピリピリとしていた気がします。
気持ちの面では、ふたりともが会社員を辞めたいまのほうが
安定しているかもしれません。

もちろん、この先どうなるのか不安がないわけではありませんが、
どうにかなる! と思い込んで突き進むしかないのです。

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旅の準備、車をカスタマイズする

この旅では、移住先を探しながら、自分たちが目指すような暮らし方を
実践している先駆者を訪ねたいとも考えています。

では、具体的にどのように旅を進めるのか?
移住について調べていくと、自治体によっては
その地域への移住を考えている人が
借りられる移住体験住宅を用意していることを知りました。

「移住体験住宅」で検索するとさまざまな自治体の体験住宅の情報がヒットします。なかには無料の施設もあるようです。これを使わない手はない!

体験住宅のある地域では、そこを拠点に移住地探しをしようと考えています。
ただ、体験住宅を用意している自治体はどちらかというと少数派です。
体験住宅のない地域ではゲストハウスや民宿など、宿に泊まることも考えたのですが、長期間にわたる場合、費用がかさみすぎてしまいます。

ならば車中泊をしながら、
キャンプ場や道の駅を転々として移住候補地を巡るしかない! 
とはいえ、普通の車で家族で車中泊の長旅をするのはかなりつらい……。
ということで、家族での長旅といえば憧れのキャンピングカーだろ! と
随分と探しました。

でも、家族での長旅に適しているようなキャンピングカーはなかなかお高く、
残念ながら我が家のフトコロ事情とは相容れない。
また、そんなキャンピングカーは車体がかなり大きく、小回りがきかなそう。
実際、地方にはかなり細い道が多いです。そして、燃費も相当悪いようです。

ワクワクしてキャンピンカー専門店に見に行ったこともありました。10年以上も前の中古車でこの値段……。そして大きい……。確かに快適に車中泊はできそうですが。

そんなときに格安のワンボックス車を通りすがりの中古車屋で発見。
しかもなんと燃費のよいハイブリッド車!
格安なのにはわけがあって、ちょっとした事故車らしいのですが、
特に問題ない箇所とのこと。
これを家族での長旅、車中泊に適した車に自分でカスタムするしかない! と
意を決して購入しました。

いよいよ旅が始まるという感じで、妻も僕もテンションが上がってきました。
さっそく車中泊仕様へのカスタムを始めます。

まず考えなければいけないのは、家族3人が寝るスペース、
寝る際の換気と虫対策、荷物の置き場。
そして、せっかく地方を巡るのであれば、
その土地のおいしい食材を買って料理もしたい。
ではキッチンをどうするか?

車中泊仕様へカスタム中。

得意の妄想力を駆使して車中泊仕様へのカスタムを開始。
3列目シートを取り払ったスペースにベッドをつくりました。
ベッドの下はかなりの収納力です。
寝るときには2列目シートを前に倒してその上にベッドを伸ばします。
キッチンはスペースの都合で車内に設置することはあきらめて、
車の後方に設置するようにしました。
解放感ではキャンピングカーに負けません!

そして、娘が「歩く花号」と名づけたこの車で、その寝心地を確かめるべく、
長い旅の予行も兼ねてとりあえずの1週間ほどの旅に出ました。

旅の行き先は岡山県瀬戸内市牛窓。
そこには友人の陶芸家一家が住んでいて、
彼らは僕たちが目指すような暮らしをしています。

友人の陶芸家の工房〈寺園証太工房〉。ハーフビルドで建てた工房兼住居の様子。長女の奏でるピアノを聴きながら父は器をつくり、母は家事をこなす。とても丁寧に。次女の出産はこの空間で家族だけでしたそうです。

ちょうど新作の展示会をやっているとの知らせを受けていたので、
その展示会に顔を出して、岡山からの帰りには、漠然と移住先の候補として考えている四国や淡路島の知人を訪ねるという段取りです。
9月から予定している長い旅の駆け足バージョンといった感じです。

どこに泊まるのかも決めずに出るこの旅では、初めて家族で車中泊をします。
蒸し暑いこの時期、果たして熟睡できるのか? キッチンの使い心地は?
そして、移住候補地である四国と淡路島を駆け足で巡って何を感じるのか?

いよいよ旅が始まります。
移住に向けて本格的に動き出したわが家の行く末を、
あたたかくお見守りくださいませ!

information

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レストラン 朔

住所:三重県美杉町八知3541

Web:saku.jp.net

information

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寺園証太工房

住所:岡山県瀬戸内市牛窓町長浜5183-3

Web:terazonoshota.com

写真・文 津留崎鎮生

text & photograph

津留崎 鎮生 Shizuo Tsurusaki
つるさき・しずお●1974年 東京生まれ東京育ち。大学で建築を学び、卒業後は、建築家の事務所勤務、自営業でのカフェバー経営、リフォーム会社など職を転々とする。地方に住む人々の暮らしに触れるにつれ「移住しなければ!」と思うように。5年半ほど勤めたリノベーション会社を2016年6月末に退職し、新天地への移住に向けて本格的に動き出す。趣味は妄想。特技は妄想。

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