全国で思わずその場で缶を空けたくなるほど魅力的な
「焼酎ハイボールのお供」を見つけるこの連載。
今回は、新潟県新潟市にUターン移住し〈上古町の百年長屋SAN〉の副館長を務める、
金澤李花子さんがアテンドします。

古くから北前船や開港五港の港まちとして、
日本の東と西を結ぶ物流の重要拠点の役割を果たしたこの場所。
外からの客人を迎える機会が多かったことから
飲食店が多く立ち並び、美食と美酒を武器にして
切磋琢磨しながら、今もなお食文化が昇華され続けるエリアがある。
それが今回案内する、新潟市古町だ。

信濃川の河口がある新潟市は、人口80万人が暮らす政令指定都市。中心市街地には商業ビルや高層マンションもありながらも、全国で水田面積が一番広い市町村として、米どころ・新潟を代表するエリアだ。
古町は、古町通を中心としたまちの呼び名である。
前述の物流拠点という地の利から
明治時代には人口が日本一だった古町は、
JR東京駅から上越新幹線に乗って2時間ほど
終点駅の新潟駅から、公共交通機関で10分ほどの場所にある。

左側が古町のある「新潟島」と呼ばれるエリア。中央の信濃川と右奥の日本海によって、上から見るとひとつの島のように見えることからそう呼ばれるようになった。さらに左奥にはうっすらと、世界文化遺産に登録された金山を有す佐渡島がある。撮影:飯山福子
その昔、船で新潟に行き来していた多くの商人たちは、
長い旅の道中、一定期間この古町に滞在して飲食を楽しんでいたそうだ。
そんな彼らを出迎えることから育まれたもてなしの文化が、
かつての日本三大花街をつくり
今でもこのまちに美食家がはるばる足を運ぶ理由でもある。
もてなすための料亭もさることながら、
そんな文化を支える地元民のための飲食店もまた
しのぎを削り合っている。
今回焼酎ハイボールのアテとしてご紹介する2店舗は、
どちらも地元民から愛されるローカルグルメの専門店。
ちょっと食には口うるさい市民の代表として(笑)、
大好きなアテを求めて、まずはあの暖簾を目指そう。
庶民の味方は、暖簾系居酒屋!

建物の半分が緑に覆われた〈鳥専門店 せきとり〉。

昭和34年創業、今年で65年目になる。
まずは、にいがた名物「半身揚げ」の元祖である〈鳥専門店 せきとり〉へ。
昭和34年の創業当時からこの場所で鳥専門店を営んでいるが、
新潟で鳥? という方も多いのではないだろうか。
「祖父が創業した鳥専門店ですが、元はこの場所に養鶏場があったんです。
当時、養鶏は親族が経営していて、
それだけでやっていくには難しい時代になってきたということで
祖父が試しに鶏一羽を半分にして油で揚げたのが、今でも続く半身揚げです」
そう話してくれたのは、3代目店主の関雅仁(せき・まさひと)さん。
もともと養鶏場だったからできる鳥の豪快な使い方に、納得だ。

この半身揚げは、いわゆる唐揚げとは異なり、味付けがカレー味で、
スパイシーで大きいのが特徴だ。だが、なぜカレー味なのか。


味付けはカレースパイスと塩のみ。揚げる直前にさっと味をつけて油で揚げるだけ。
「半身揚げをカレー味にしたのも創業当時からで、祖父のアイデアです。
カレーは学校給食で馴染みの味で、みんな好きだからだと聞いています」
実は、新潟市は総務省の家計調査で、
1世帯あたりのカレールウの年間支出金額と購入数量が全国1位の、
カレー大好きという県民性がある。
※家計調査(ふたり以上の世帯)品目別都道府県庁所在市及び政令指定都市ランキング(2020年~2022年の平均)による。
確かに、私も週に一度以上はカレーを食べるし、
カレーライスの翌日に、カレー蕎麦にいっちゃうな……
と、65年前の初代のマーケティング力に驚く。
今では市民の大好物になっている半身揚げのほかに、
全国的にはあまり知られていない、もうひとつの人気のメニューがある。
それが、この「蒸し鶏」。

秘伝のスープで半身を30分かけて煮る。煮詰まっていくスープが半身に染み込んで、ジューシーな仕上がりに。

半身揚げより蒸し鶏派という常連さんもいるほど、根強い人気を誇るメニューで、
店でいただくときには千切りキャベツを一緒に頼んで
鶏を煮ていたスープに浸して食べるのがツウな食べ方だ。


名物の半身揚げ・蒸しは、時価。
日本唐揚協会が主催する〈全国からあげグランプリ 半身揚げ部門〉では
13年連続で金賞を受賞し、ご当地グルメとして全国区の知名度となったせきとり。
3代目としてお店を続けているなかで、大切にしていることをうかがうと、
「やっぱり、この味を守りながら続けていくことですね。
遠方にこの味を送りたいと言ってくださるお客様もいらっしゃるので
通販でお届けができるようにもしています。
より多くの方が手軽にどこでもこの味を召しあがれるように。
冷凍だからおいしくないね、なんて言われないようにしたいなと(笑)」
控えめに実直に、おいしいものをおいしい状態で届けたいと語る姿は
地元民にとって頼もしく、ありがたく、かっこいい職人の背中だった。

関さんが着用しているTシャツなど、店内で販売している〈せきとり〉ロゴグッズも、ファン心をくすぐる。